
■気持ちで負けないこと
――koroneko選手は今月、21時間40分という記録で「世界最速のレジェンダリー1位」を達成しました。「ぶっ続けでプレイして世界最速の1位を達成する」のは実際どのぐらい難しいのでしょうか。
koroneko: うーん、結構いけるんじゃないでしょうか。時間があり、心さえ折れなければ。
「気持ちで負けないこと」が大切です。途中で負けが続き、ランク1からランク3に落ちたことがありました。このときばかりは「もうやめたほうがいいかな」と思ったのですが、「レジェンダリーになる」と周りに宣言した以上はやめられない。ここでやめたら皆の期待を裏切ることになるし、今後の自分への信頼がなくなってしまう。それでやり抜きました。
達成後は生活リズムが狂って大変でしたが(笑)、海外で紹介されたことで、TwitchやTwitterのフォロワーが300人ぐらい増えました。結果的にはとてもよかったと思います。

「世界最速レジェンダリー1位」達成時のスクリーンショット
――普段はどのように練習していますか?
koroneko: 大半はランクドプレイで練習しています。気になったデッキを使い、「このデッキはどのデッキに強いのかな」などと考えながら試していくんです。長時間の試行錯誤を続けているといろいろなことが見えてきます。「このデッキはこのデッキに有利なのではないか」とか。ある程度考えが固まってきたらフレンド対戦でそれを確かめます。
たとえば、Mech Mageが出始めた時期がありましたよね。最初の頃は「Mech MageがDruidに有利」といった考え方は浸透していなかったと思います。でも自分で回しているうちに「これってDruidに強いんじゃないかな?」という感触を持ったりします。そこで友だちに「ちょっとDruid使ってくれない?」といって、実際どうなのかを確かめるんです。
なので僕の練習方法は「まず1人で試行錯誤する。考えが固まったら友だちに試す」という感じですね。
――フレンド対戦はどんなふうにプレイしていますか?
koroneko:「同じデッキでの2本先取(Best of 3)」をやることが多いです。2本先取が終わったら、今度は別の人に2本先取で対戦してもらいます。人によってプレイングが違ったり、「守りのカードは入れない」といった個性がありますから、いろんな人に通用するデッキとプレイングを研究しないといけません。
あとは、プレイングでわからない場面があったらスクリーンショットを取っておいて「ここどういうふうにプレイする?」というふうに後で友だちに聞いたりします。そのほかには「ここでコンボ持ってた?」「除去カード持ってた?」とか。
そんなふうに、「Team Speak 3」を通じていろいろ話しています。サーバーには毎日4~5人ぐらいいますね。半年に1回ぐらい雷で落ちますけど(笑)。
――強くなる上で環境は重要でしょうか。
koroneko: 基本的には1人で試行錯誤したほうが経験になると思いますが、「わからない点を聞ける」という環境は大事ですね。1人でやっているだけでは、カードゲームは強くなれないかな、という気がします。運の要素が強いので、「この考え方が合っているどうか」を確かめるのが1人だと難しいんです。
■今はプロのデッキを見ない
――デッキの情報はどんなふうにチェックしていますか?
koroneko: 最初の頃は「HearthStone Top Deck」というサイトで大会上位者のデッキを見ていました。大会もたくさん行われているのでいろいろなデッキがありますが、そこで同じタイプのデッキを見比べるんです。たとえばRamp Druidのデッキだったら「Zotac Cupで優勝したRamp Druid」「ESLで優勝したRamp Druid」などのデッキを1つひとつ照らし合わせていく。すると「この人のデッキには守りのカードが多いな」といった特徴が見えてきます。
そういった細かい違いを頭に入れてから、今度は「自分はこうしてみよう」と中身を少し変えて使ってみます。細かい違いを試すということですね。試していくうちに、「上位者のデッキになぜこのカードが入っていたのか」がわかるようになります。「速いデッキが流行っているから守りのミニオンを多めに入れているんだな」というふうに。
――デッキの細かい違いを比較して試すということですね。
koroneko: はい。「実際に結果を残しているデッキを見る」ことも大事です。やはり上位者のデッキでないと「本当に上で通用するか」がわからないので。

――デッキといえば、最近は新アドベンチャー『Blackrock Mountain』のカードが開放されました。流行のデッキも目まぐるしく変わっており、仮に大会で上位入賞したとしても、「本当に通用するのか」がわからなくなってきています。「新カードに周りが慣れていないからたまたま大会で上手くいっただけ」というふうにも考えられますから。
koroneko: その話とも重なるのですが、今はまず、「絶対にプロのデッキは見ない」ことにしています。プロの配信を見てもデッキのレシピは見ません。まず自分でデッキを作る。自分の考え方を構築する。それが大事だと思っています。気に入ったデッキがあれば、大会で先鋒に使って感覚を試したりします。
――大会の場でデッキを試していくのですか。
koroneko: はい。この間は「Hearthmind」という毎週土曜日午前9時(日本時間)にやっている大会に出場してデッキを試しました。大会フォーマットの対戦はランクドプレイと大きく違いますし、相手も本気です。勝ち進めば強い相手と戦える。デッキを試すにはとても良い環境です。ESL Legendary Seriesのような本命の大会には、そうやって小さな大会で試した中でベスト3のデッキを持っていきます。
――気軽に大会に出て行くんですね。
koroneko: そうですね。「ランクドプレイだけで大会に出たことがない」という人たちは、時間が合えばどんどん出てみるといいと思います。相手が強いし、ランクドプレイとはまったく違った気持ちで対戦できるので、いい練習になります。
――国内大会と海外大会で違いはありますか?
koroneko: よく参加するのは海外大会ですが、どちらかというと「賞金の有無」のほうが大きいかもしれません。僕自身は賞金がある大会に出たいと思っています。やり甲斐がないとモチベーションにつながらないので。優勝賞金3000円ぐらいでもいいからもらいたい(笑)。何かあれば自分の努力が報われた感じがします。優勝は自信にはなるのですが、何ももらえないと少し寂しいですね。
■自分のプレイングでトップを獲る
――別の質問ですが、Hearthstoneのトッププレイヤーはほかのプレイヤーと比べて何が違うのでしょうか。
koroneko: 「このデッキはこのデッキに対して有利」といった各マッチアップの理解度が違うと思います。トッププレイヤーは「どちらが有利なのか」だけではなく、「なぜ有利なのか」を正確に理解しています。
たとえば、Midrange Hunter対RogueではRogueが有利です。Midrange Hunterは序盤のミニオンが少ない。Rogueは序盤の盤面を取ることができ、したがってヘルスも削られません。Midrange Hunterには後半に6マナの強力なミニオン「Savannah Highmane」が出てくるのですが、Rogueにはどんなミニオンも2マナで手札に戻すカード「Sap」があります。これでSavannah Highmaneを無効化できる。序盤から後半まで、Rogueに隙はありません。だから「Midrange Hunter対Rogue」はRogueが有利です。
このように「なぜ有利なのか」を正確に理解しているのがトッププレイヤーです。「有利な理由」がわかれば「初期手札に何を選択するか」「3本先取などの大会にどんなデッキを用意するか」などに生かすことができます。

――目標にしている選手はいますか?
koroneko: 「尊敬する選手」や「目標にしている選手」はいません。よく「変わっている」と言われるのですが、プロをあまり参考にしたくないと思っています。デッキのレシピなどは参考にするけど、プレイングの内容は参考にしたくない。これはFPSをやっていた頃から同じです。
「目標にしている選手」を作ってしまうと、その選手は超えられない。もし強くなったとしても「その選手の劣化版」になってしまうんです。だから目標にしている選手は作らないようにしています。自分のプレイングでトップを獲りたい。昔からずっとそういう思いを持ってきました。だからプロの配信を見ても「そういう手もあるんだな」程度に捉えています。
――今後の目標については?
koroneko: Game*Sparkさんのようなメディアに掲載された以上、「小さなことはできないな」と思っています。応援していただいている皆さんの期待に応えられるように、これからも結果を出していきたい。大会では「ESL Legendary Series」でもう一度予選を勝ち抜いて、今度は優勝したいと思っています。将来は「koronekoさんのような選手になりたい」と言ってもらえる選手になりたいですね。

――本日はありがとうございました。
koroneko選手およびHearthlyticsの関連リンク
・koroneko選手のTwitter
・koroneko選手のTwitch配信チャンネル
・Hearthlytics公式サイト
・Hearthlytics Twitter