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1月4日に発表されたNvidiaのVR対応プログラム「GeForce GTX VR Ready」。CESが開催されていたラスベガス・コンベンションセンター近くのホテルで、Nvidia担当者から詳しい話を訊くことができました。
このプログラムは、PCメーカーやアドインカードプロバイダと提携し、VR対応タイトルが快適に動作するGeForce搭載システムおよびハードウェアに、「GeForce GTX VR Ready」を認定するというもの。これにより、消費者がVRゲームやアプリケーションを利用する際にどの機器を選べばいいのか分かりやすくなります。
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担当者の説明では、没入型のVR体験には、3024x1680(片目1512x1680)の解像度と秒間90フレームの描画速度が求められ、HMDにおけるモーションセンサーのレイテンシ(遅延)は20ミリ秒以下に抑える必要があるとのこと。映像を滑らかに感じさせるフレームレート、HMDのトラッキング遅延の解消は、いわゆる3D酔いともVR酔いとも呼ばれる症状を起こさせないために不可欠とされています。通常のPCゲーミングでの解像度やフレームレートは1920x1080/30fps(60MP/s)ですが、NvidiaはVRでは3024x1680/90fps(450MP/s)の環境を推奨しているため、必要処理能力が通常のゲーミングPCの7倍以上であるとしています(1920x1080/60fpsであれば124MP/sとなりますので、この場合は約3.7倍の処理能力)。
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また同社は、グラフィックカードなどハードだけではなくソフトウェア面でもサポートを行うことを明らかにしました。「GeForce Experience」がVRに対応し、ドライバアップデートも行う予定で、AndroidとLinuxもNvidiaのVRプラットフォームのサポートに含まれるとしています。
SDK(ソフトウェア開発キット)として、「GameWorks VR」と「DesignWorks VR」を提供。「GameWorks VR」を搭載したゲームエンジン「Unreal Engine 4」では、「Multi-Res Shading機能」によりレンダリングのパフォーマンスが50%向上するのだそうです。
「GeForce GTX VR Ready」プログラムにおけるPCの最低動作環境は以下のとおり。
- GeForce GTX 970(ノートはGeForce GTX 980)
Intel Core i5-4590相当
8GB RAM
HDMI 1.3 出力端子
USB 3.0 x 2
Windows 7 SP1
「GeForce GTX VR Ready」プログラムには、HPやAlienware(Dell)など世界のゲーミングPCメーカーやアドインカードプロバイダ50社以上がパートナーとなっており、その中には日本のG-Tune(マウスコンピューター)や玄人志向(シー・エフ・デー)、ガレリア(ドスパラ)、G-GEAR(ツクモ)も含まれています。
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初めてOculus Riftを装着した頭が大きい筆者
「GeForce GTX VR Ready」プログラム説明後は、VRゲームの『Bullet Train』『ADR1FT』『Everest VR』の3作品を会場でプレイすることができました。
最初は、Epic Gamesが開発したVRシューティングゲーム『Bullet Train』をOculus Rift DK2で体験。Touchコントローラを使い、立ち上がったままプレイしますが、歩き回ることはできないので主人公の能力でテレポート移動しながら進んでいきます。ゲーム中ではTouchコントローラはプレイヤーの手として表示され、トリガーで射撃、上部のボタンでものをつかみます。
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『Bullet Train』
近未来の駅を舞台に、次から次に襲い来る敵を銃で撃ちまくるこのゲーム。すぐに弾切れになってしまうので、テレポートして落ちている銃を拾ったり、敵のそばにテレポートして武器を奪ったりしながら進めていくのが基本的な流れとなります。バレットタイムを使えば、時間を遅くして映画『マトリックス』のようにえび反りで銃弾を回避したり、飛んでくるミサイルをつかんで投げ返したりというアクションも可能です。
今回、はじめてOculus Touchコントローラを使用しましたが、トリガーやボタンの位置も適度な配置となっており、軽くて持ちやすかった印象です。
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『ADR1FT』
続いて、threeonezeroが開発した映画『ゼロ・グラビティ』のような宇宙サバイバルゲーム『ADR1FT』。たった一人取り残されてしまった日系人女性、アレックス・オーシマとなり、宇宙ステーションを修復しながら生き延びていくという内容。こちらは、Oculus RiftとXbox 360コントローラを用いて椅子に座った状態でのプレイ。
昨年のE3でのハンズオンレポートがありますので細かい解説は省きますが、無重力空間を舞台にしているだけあり、もともと車酔いしやすい筆者にとってはやや酔いやすいゲームでした。コントローラの操作で行う視点移動は問題なかったのですが、強制的に画面がぐるっと回る左スティック押し込みの視点のリセットでは気持ち悪くなってしまいました。(これは体調や個人差もあると思います。)
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『Everest VR』
最後は、Solfor Studioが手がけた世界最高峰の山であるエベレストの登山が体験できる『Everest VR』。30万枚の高画質写真を組み合わせて作られたエベレストの風景が堪能できるという本作を、新型のVive Preで体験しました。
ヘリの上から壮大なヒマラヤ山脈を眺めたら、いざ登山開始。歩き回れるVive Preの機能を活かした内容となっており、まずは高い標高の場所にかけられた吊橋を渡るところから始まります。下を覗き込むと何百メートルも離れているであろう地表が見えます。高所恐怖症の筆者は、Nvidiaのスタッフに感づかれないように堂々かつ素早く橋を渡る必要がありました。両手に持ったViveコントローラのトリガーを押し込むことで左右のロープをつかむことができ、なるべく下が見えないよう斜め上を見ながら進んだので問題なく突破。続いて梯子を登りますが、ここでもコントローラで梯子をつかみ、交互に動かして登っていきます。下は見ません。見るのは上だけです。
登りきると壮大なエベレスト山頂付近の景色を望むことができ、ここでゲーム終了となりました。
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HTC Vive Pre
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別会場に設置されたViveのセンサー。2ヶ所設置することにより移動できる範囲が設定できる(制限あり)
今年3月に発売を控えるOculus Riftと4月発売予定のHTC Viveですが、それぞれ違ったVR体験を提供できることから良いライバルとなっていきそうです。そして、「GeForce GTX VR Ready」プログラムにより、国内のVR機器がどのように展開していくのか注目が集まります。