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2016年10月21日についに発売になった、人気ターン制4Xストラテジーシリーズ最新作『シヴィライゼーションVI』。発売から数週間が経過した本作を、実際にプレイしてどのようなフィーリングの変化があったのかを中心にしたプレイレポをお送りします。
今回のプレイレポでは『シヴィライゼーション VI』のチュートリアルと、最低難易度“開拓者”での214ターンに渡る一通りのプレイで気がついたことをお送りいたします。
■チュートリアルは大きな1種類のみに
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チュートリアルで選択可能な2勢力
まずは、本作で大きな変化を遂げたチュートリアルに触れていくことにしましょう。本作のチュートリアルは前作の様に細切れになったパートをプレイするのではなく、クレオパトラ率いるエジプトか、ギルガメシュ率いるシュメールの2種の文明のいずれかを選び、序盤や要所要所で解説を挟みながら実際に最後までプレイスルーを行うのが特徴です。それにより、今までに比べて遥かにゲームへの理解力が高まっているように感じられました。
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本作のチュートリアルの解説は日本語音声つきということもあって、比較的頭に残りやすい。
決して簡易なゲームではないだけに嬉しい所
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チュートリアルのAIは弱いので、滞りなく勝利しゲームを終わらせた後は通常プレイへ。個性豊かな各国の歴史的指導者が集う『シヴィライゼーション VI』ですが、今回はチュートリアルに引き続きギルガメシュ率いるシュメールを用いてプレイすることにしました。
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今回のプレイでの設定
■分かりやすく、大きく変わった都市設備、社会制度、そして都市国家
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そしてゲームスタートですが、本作でも最低限のユニットで開始するのはそのままです。しかしながら本作より新たに導入された都市設備区域の要素によって、最初の都市建設は旧作以上に戦略的な判断を迫られる物となっているようです。本作では、都市の中心部に設置可能な設備以外は、都市に含まれるタイル上にそれぞれの「区域」を建設、その上に追加で設置していくものになっており、全てを満たした都市を造るのはかなり困難になっています。
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設備建設はタイルを用いる
都市の区域は一定の人口に達することで拡張が可能となりますが、特定の設備が今すぐ欲しい、となってもそのタイミングで該当の設備を設置可能な区域があるかどうかはわかりませんので、予め何手も先の計画を見据えて行く必要があるのには留意するところでしょう。シリーズおなじみの「遺産」は、今作では区域の配置および特定の自然環境の存在などの多くの前提条件の上に成り立つものが多く、コスト的な部分も相まって以前のシリーズより重要度は低下しており、作れる余裕があるならば作る、といった形になることが多くなる印象を受けました。
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遺産、そして後半の区域用設備は影響範囲がその都市単位ではなく数タイルにまたがったりもする。
区域や遺産用用地の選定は本当に楽しく悩むことになるだろう
労働者の扱いも本作で違いを感じる方が多いでしょう。以前のシリーズと異なり、本作では労働者は初期は3回用いたら消滅してしまいます。これにより、後半労働者が余るということも無くなりましたが、必要なときにはすぐに生産できるようにゴールドや生産力に余裕を持たせておくことをおすすめします。
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右下“労働力”の項目に注意、これが0になれば労働者は消失してしまう。
時代をまたがって延々と労働させないのはある意味ホワイト国家になったとも言えなくもない
また、本作で大きな変化があったのは「社会制度」も同様です。社会制度は“社会制度ツリー”を通して「科学技術」のように取得する形に変わったほか、本作において社会制度はベースボーナスとスロットで構成された、いわば枠のみが存在している形に変化しています。
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ボーナスの付与は、社会制度ツリーで手に入る政策を各々のスロットに当てはめて任意の効果を得る、というものに変わっています。政策は社会制度ツリーの各政策の取得時や、微々たるゴールドの支払いによってノーペナルティでいつでも入れ替えが可能となっており、直感的に、そしてフレキシブルにゲーム状況に合わせボーナスを得ることができます。
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また、科学技術・社会制度ともに「研究ブースト」という新システムが登場。ゲーム内で特定の条件を満たすことで、研究進捗をある程度得ることが可能なこのシステムによって、初期のゲームスピードはかなりの向上を見たように思えました。基本的に初期の技術であればあるほど簡単な条件でブーストが行われるため、ターンごとに次から次へと様々な技術がブーストされることも多く、ある種爽快ですらあります。
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序盤は本当にどんどんブーストがかかっていく。
終盤のブーストは偉人やスパイ頼みのものが殆どになるのには注意
最初の都市を建設し、筆者はまず順当に科学力と軍事力を重視するために、筆記と青銅器技術の取得を目指して研究を開始したところ、すぐに近隣に複数の都市国家が存在しているのを発見。代表団を送る流れへ。
都市国家のシステムも変わった本作。増減の管理の必要があった影響力のシステムは非常にわかりやすい形に簡略化され、政治体制や政策によりターンごとに自動で増加する影響力ポイントが一定になった時に得られる「代表団」を都市国家に派遣することで、即その恩恵を得られる、という形になりました。代表団は基本的に増減することはなく、基本ボーナスは全ての国家が一様に得られるため、送り損となることもないのが嬉しい所です。煩わしいことを考えずに、今自分がどのボーナスを欲しいか、だけで判断できるのは本当に理解しやすいでしょう。
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表示されているボーナスは宗主国ボーナスを除けばすべての国家が恩恵に預かれる。
代表団を増やすには都市国家が提供する、特定のユニットの製作などを中心としたクエスト群も有効だ
都市国家を見つけるのと時期を同じくして、ギリシャ・スペインが同大陸、それも比較的近い位置に存在しているのを確認。これにより筆記がブーストされ、早々に「キャンパス」区域を設置することができました。その後、社会制度「軍の伝統」を入手した際に、太古・古典の騎乗ユニットの生産力を倍にする社会政策「大演習」の存在に気付き、さっそくセット。これが首都の位置近辺の馬資源と大きくマッチングし、序盤では恐らく最高峰のユニットの一つである騎乗兵があっさりと量産可能となってしまいました。
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「軍の伝統」。馬が確保できているならば「大演習」の効果が本当に高い
その後、3国間ではしばらく緊張状態が続いていましたが、中間にある都市国家がギリシャ・スペイン両国に滅ぼされたことを危ういと感じ宣戦布告。結果は、戦争を見越して短期間で量産した騎乗兵のラッシュによりあっさりと両国を壊滅。宗主国となったいくつかの都市国家を残し、晴れて大陸統一を果たしました。
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時は流れ、産業時代に移ったころには、成長した都市の区域配置と設備建設が理想的に機能し始め、特に6タイル内の都心の生産力を追加する「工場」等によるブーストが素晴らしい結果をもたらしてくれました。船舶の研究も進め、隣の大陸にアメリカ・ロシア・インドが存在しているのを発見、海を超えて侵攻するために、研究を更に推し進めて勢力を蓄えることに。
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『シヴィライゼーション』シリーズの色々な意味で愛されるガンジーはもちろん健在
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■ユニットを組み合わせて強力なユニット化が可能な軍団化
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技術開発や世界遺産を発見したときのフレーバーテキストも音声化されている。時々出てくる洒落た格言も良い
大陸統一後ゲームを進め、「ナショナリズム」の社会制度を獲得すると、今作の大きな追加要素である「軍団」の利用が可能となりました。これは同じユニット同士を組み合わせることで、その戦闘力を固定値上昇させることが可能な機能で、『シヴィライゼーションIV』以前のユニットのスタックを限定的に復活させたようなものです。
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軍団を作れるようになるとボタンが発生する
軍団の利用には軍団へのグレードアップ機能を有した偉人を消費するか、同じユニットが2体必要となりますが、戦闘力の上昇値そのものはそこまで多くありません。また、ユニットの耐久力を向上させるということもないため、本機能はユニットコストを2倍、3倍支払うことで更に少しの優位が得られる機能と言い換えても良いでしょう。
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選択するとこのように基礎戦闘力が増加した新ユニットになる。
戦闘力+10(3体合成の大軍団では+17)と同世代での戦闘では一気に有利に
軍団が作れる頃には最低難易度ということもあり技術的に完全に独走状態に。ロシアがアメリカとの戦争で滅びたのをチャンスと見て、政策を切り替え量産しておいた現代兵器を用い、騎士やカタパルトが闊歩するインドとアメリカをヘリコプターと現代歩兵で順次完全制圧。214ターン、8時間ほどで制覇勝利を手にしました。
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最後はワシントンを機械化歩兵軍団が蹂躙して終了
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■総評
まだ紹介しきれていない要素もありますが、一通りゲームをプレイした印象として、『シヴィライゼーション VI』では新要素が多く追加されるとともに、既存要素の再編が進み、かなり“スッキリとした”プレイフィールを与えてくれました。多くの要素は一通りのゲームプレイ内で直感的に理解可能で、特に政策スロットの存在は今まで少し敷居が高かった政策と戦略の調和を、直感的なものに押し上げています。
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今作では区域や遺産の存在で全体的にタイルが賑やかなのも嬉しい
しかしながら一度極めようとすれば一気に頭を使うことに。そして取った行動の結果を見たい、というシリーズおなじみの“あと1ターン”の魅力は健在です。今回のプレイスルーにおいて最も筆者が楽しかった点として挙げるのは、政策と綿密に練られた都市の設備建設が上手く合致したとき。序盤から強力な騎乗兵などが1ターン毎に次々と増えていったときはの楽しさは、まるで都市建設ゲームのようにも感じられました。この都市建設の楽しさは『シヴィライゼーション VI』の大きな魅力でしょう。
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ゲーム内百科事典「シヴィロペディア」ではゲームルールの他にも、様々な項目が閲覧できる。
事細かに書かれたトリビアも見ることが可能で、ちょっとした雑学博士になれそうだ
元々のシリーズの楽しさに加え、追加要素も完成度が高い本作。しかしながら、バランス調整については、蛮族のユニットが、時代やAI文明の技術力の平均に比してかなり強力なのを度々目撃したのを始めとして、細かい点では少々調整不足のきらいがあり、今後のパッチにも大きく期待したいところです。ですが、そこは多くのサポートが期待できる『シヴィライゼーション』シリーズ。ユーザーは安心して“あと1ターン”と時を過ごしながら待つことができるのではないでしょうか。
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『シヴィライゼーション VI』はSteamにてPC/Mac/Linux向けに7,000円で販売中です。25周年記念デジタルサウンドトラック、新たなマップやシナリオ、文明、指導者などを収録したDLC4点パックが付属した『シヴィライゼーションデジタルデラックスエディション』は9,300円となっています。
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ゲームの終了メニューで“ゲームに戻る”にカーソルを合わせると出るメッセージ。
この“あと1ターン”を求めてしまうのがシリーズの大きな魅力の現れだろう