4月25日から4月27日までの3日間、ネクソンの連結子会社であるNexon Korea Corporationが、ゲーム開発者の祭典「Nexon Developers Conference」(以下NDC)を開催しています。本イベントでの、Blizzard Entertainmentのテクニカルアーティスト、イ・ハクソン氏による「『オーバーウォッチ』のヒーロー制作過程及びテクニカルアート」のセッションのレポートをお届けします。
まず、本セッションは注目度がかなり高いタイトルというのもありましたが、『オーバーウォッチ』が韓国内では学生に特に人気で、学生の観覧者も多かったため、立ち見ができるほどの大盛況ぶり。後ろだけでなく横までも多くの人で埋め尽くされていました。イ氏は会場内の観覧者に向けて『オーバーウォッチ』の経験者に手を挙げさせると、多くのどよめきとともにほとんどの人が挙手。逆に未経験の人はたった数人しかいないほどプレイされているようでした。
■テクニカルアートとは何か
イ氏は『オーバーウォッチ』がリリースされる1年前に入社し、テクニカルアーティストとして従事。テクニカルアートは不慣れな言葉だと思っていて、アニメーターやモデラー、コンセプトアートとも異なり、会社によっても意味が異なってくるそうで、エフェクトアーティストやリガーのことをテクニカルアーティストと呼ぶことも。本セッションでは、Blizzard Entertaimentの『Overwatch』チームにおける「テクニカルアーティスト」であり、ゲーム業界の基準とは異なるとのこと。
テクニカルアートとは、「コラボ、ブリッジ、テック、アート、全体のプロセスの5つで表せると思います」とイ氏。テクニカルアートは、テクニカルな頭脳とアート的な頭脳が合わさってシナジー効果を出すもの。左脳は論理的な思考、右脳はアート的な思考を担当すると言われていますが、この2つがコラボをしているそう。ブリッジは、アーティストとアーティスト、アーティストとエンジニアの橋渡しをするもの。テックは、パイプラインやスクリプト、リグ、シミュレーション、グラフィックリソースマネジメントなど、多くの理解が必要です。アートはほどんとのテクニカルアーティストがコンセプトアーティストのように絵を上手く描くわけではないですが、ドローイングやモデリング、アニメーションのプロセスの理解が必要です。全体のプロセスは、ゲームの開発時に開発プロセス全体を理解する必要があり、ゲームデザインから販売までの各プロセスの理解が必要、と語りました。
テクニカルアーティストの仕事は、問題解決、パイプライン、マネジメント、アーティストサポート、リギング、ブレイカブル、セッティングの7点。問題解決はエンジンとアートツール間で発生する問題を解決すること。パイプラインは各段階におけるプロセスのこと。マネジメントはゲームの効率的な動作のために、アセットサイズなどの管理を行うこと。アーティストサポートはアーティストが求める機能を作成し提供すること。リギングは大事な仕事のうちの1つで、TポーズやAポーズのモデルにボーンを作成すること。ブレイカブルは破壊可能なオブジェクトを作成すること。セッティングはキャラクターの服やアクセサリーといったものを、モーションに応じて物理ベースで動くようにすること、と時折映像を交えながら紹介しました。
合間に他のスタッフの紹介を交えつつ、スウェーデンでは一般的だという名前のトールビョーンというテクニカルアーティストがいた、という話もしていました。
テクニカルアーティストに最も重要なものは、コミュニケーションを行うこと。自己鍛錬も必要で、エンジニアリング、スクリプト、プログラミングに対しての理解は非常に重要。妥協せず、繰り返し努力することが大切。
■オーバーウォッチの世界観
Blizzardの世界観は、Sci-Fi、宇宙、ウェスタンスタイルというのが主でしたが、『オーバーウォッチ』の世界観は、悩んだ末に出た結論が「我々が住みたいと思う近未来の地球」。守り抜きたい、そのために戦う世界というものが背景にあるそう。世界観には4つの特徴があり、まずダイバーシティ。ゲーム内にはシェイプやカラー、アニメーション、大きさなど多様性に富んでいて、誰でも『オーバーウォッチ』の中で、1人ぐらいはお気に入りのヒーローを持って欲しい願いがあったそうです。希望に満ちた未来は、暗い面よりは明るく希望の溢れる世界を求めようということ。ダイナミズムは、アニメーションだけでなく、Player of the Gameのアニメーションでわかるように、表情もモーションもダイナミックになっています。ハンドクラフトは、手作業で作った感じを出そう、アーティストが手作りした感触を意識したとのこと。トールビョーンの場合は、パッドの間にシミやムラ、傷などがあり、細かい部分にまで手をかけていることがわかるはずと語っています。
※次ページ: 人気ヒーロー「アナ」の制作秘話!
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