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2014年からサービスが開始された、『Warcraft』世界をモチーフとしたオンラインカードゲーム、『ハースストーン』。今年のBlizzCon 2017にて、例年通り新しい拡張セット「コボルトと秘宝の迷宮」が発表されました。
Game*Sparkは11月3日、そのインスピレーション、スタイル、そしてゲームプレイを解説していただくため、リードミッションデザイナーのDave Kosak氏とコンセプトアーティストのJomaro Kindred氏にインタビューを実施。「コボルトと秘宝の迷宮」の開発目的、特徴、新しいシステムについての詳しい説明をお届けします!
ーーまずは自己紹介からお願いします。
Kosak氏:リードミッションデザイナーのDave Kosakです。
Kindred氏:コンセプトアーティストのJomaro Kindredです。
ーー先程、新拡張の「コボルトと秘宝の迷宮」が発表されました。Ben Brode氏が少し話しましたが、ゲームプレイやスタイルも含めて、今回のセットの開発にあたってどういうテーマを意識しましたか。
Kosak氏:クラシックなダンジョン攻略のファンタジーを描きたかったですね。テーブルトップRPG、昔のソフト…ダンジョンに潜ってモンスターを倒したりするという。そのコアパターンが私たちゲーマーのDNAになっています。アートでも、ゲームプレイでも、それを伝えようとしています。
Kindred氏:子供のころにインスピレーションをもらったものですから、コンセプトアーティストとして夢みたいです。テーブルトップゲームの頃、私は幼すぎて兄と一緒にプレイすることができませんでした。でも兄の本をこっそり読んでみたら、ドラゴンとかトラップとか怪物とか、何もかもがすごい!と思っていました。それを今回のセットに取り入れることができて、非常にうれしいです。
Kosak氏:開発チームのメンバーはみんな同じく、すごく張り切っていました。私も兄に『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を紹介してもらったように、みんなでアイデアを出し合うことができてすごく楽しかったです。ダンジョンを攻略して、変な宝物や伝説の武器を見つけるという体験を味わえるようなゲームプレイを開発することができました。あ、“召集”について話しましょう!
Kindred氏:“召集”は、やはりそのコンセプトが気に入っています。ダンジョンをくぐり抜けるために助けてくれるミニオン。いいですよね。
Kosak氏:ゲームプレイ的にもかなり面白いですよ。"召集"されたカードはデッキから直接フィールドに召喚されるので、"雄叫び"が発生しません。そしてそのランダムエフェクトを意識しながらデッキを作らなければいけませんので、自分のデッキをよく理解しているからこそ利用できる、難しいエフェクトです。『ハースストーン』らしく、戦略的に面白くて強い。
ーー今回紹介された新しい要素ですが、先程の“召集”以外に、未鑑定のカード、レジェンド武器、そして呪文石というのもあります。それぞれのコンセプトについて、少しご説明いただけますか。
Kosak氏:開発チームが意識していた2つの大きなテーマが「期待」と「進行」でした。「どんな報酬が出るかな」という「期待」が「未鑑定のカード」で出ています。「未鑑定のエリクサー」というプリーストカードがあります。+2/+2を与える呪文ですが、引くまでわからないもう一つの効果を持っています。どんな効果で引かれるかによって、作戦を変える必要があるという「期待」が生まれます。
「進行」も大きいですね。ゲームでキャラクターがレベルアップして強くなるのと同じように、レベルアップするカードを作りました。それが呪文石です。小呪文石の効果がプレイしていく中で、あることをすればさらに強くなります。
Kindred氏:小さなクエストみたいな。
Kosak氏:そうですね。クラスによって違います。例えば、ドルイドの呪文石は装甲をつけることで強くなります。
ーー“ボルヴァー・フォードラゴン”と同じく、手札になければ効果は現れませんよね。
Kosak氏:そうですね。カードが進化していく様子が見られるから楽しいですよね。
Kindred氏:私も大好きです。その進化を作るのがとても楽しかったです。
ーーこのような要素を入れることで、テンポの速い『ハースストーン』においてもっと長い試合を促進しているということはありますか。
Kosak氏:長い試合に使えるカードは確かにありますが、『ハースストーン』の楽しみのひとつは、やはりアグレッシブなデッキもコントロールデッキもあって、どんな相手が出てくるかがわからないということですね。なのでプレイスタイルの豊かさを促進しつつ、良いバランスを狙っています。しかしこのセットには、コントロールプレイヤーがよく使えるカードがたくさんあります。プリーストのレジェンド武器がその一つですね。3枚の呪文を使うとドラゴンが召喚される。状況がそろえばかなり恐ろしいプリーストになれます。たくさんのスタイルが同時に存在できるように、バランスを調整しています。
ーーパネルで紹介された、メイジのレジェンド武器もすごかったですね。毎ターン3枚のカードが引けるだなんて…
Kindred氏:「アルネス」ですね。お二人はプレイスタイルについて話していますが、私は『World of Warcraft(WoW)』が大好きで、なかでもメイジが好きでした。『WoW』でアルネスを手に入れたら、「武器に話しかけられた!なんだこれ!?」と。『ハースストーン』のアルネスも同じことをします。音声があって『WoW』と同じ感じで…そういうのが好きですね。
ーー装着している間に、アルネスがプレイヤーに話しかける?
Kindred氏: そうです。
Kosak氏:それが楽しかったですね。当時私は『WoW』のチームでしたが、『WoW』のアーティファクト武器「アルネス」のダイアログを書きました。それが『ハースストーン』に用いられて、『ハースストーン』らしくする作業がすごく楽しかったです。
――アルネスも、プリーストのレジェンド武器も攻撃力0。一度装着したら、外しにくいですね。
Kosak氏:まあ、攻撃力をアップする方法はあります。アルネスで敵を叩きたければ可能ですが、ほとんどの場合は外したくないですよね。
ーーデッキから引きすぎて負けたら?
Kosak氏:確かにそうですね!カードを引くのはいいですが、引いたカードを使えるプランがないと、ですね。
ーー今回の新しいカードがどのような形で各クラスのスタイル、らしさを反映しているのか、あるいはそれを少し変えようとしているのか、どのようにお考えですか。
Kosak氏:大きい質問ですね。まあ、いろんなプレイスタイルを常に意識していて、豊かさを促進していると思います。
Kindred氏:「実験」と「探検」ですね。
Kosak氏:どういう風に使われるのかよくわからないままでカードを入れている部分もあります。コミュニティの反応を見るのが結構面白い。呪文石が特に面白くなると思います。シャーマンのものをパネルで公開しました。ミニオンのコピーを一匹作るカードですが、それをレベルアップすれば2匹、3匹も作れます。
でも、どのミニオンをコピーしたほうがいいのか?コミュニティは何を発見するのか?シャーマンがあんな風にコピーできれば、次の拡張セットで何が起こるのか?盤面がめちゃくちゃになるじゃないですか。あれが非常に楽しいです。予想が付かない。躊躇はしない。でもまあ、やっていることがそのクラスらしいように作って、ファンに好きなようにやってもらいたいと思います。
ーー「コボルトと秘宝の迷宮」をデザインする中で意識した、「凍てつく王座の騎士団」から発生したゲームプレイのパターンなどはありましたか。
Kosak氏:最終デザインチームに聞いたほうがいいかもしれませんね。私たちは常にメタの中でプレイヤーのしていることを見ていて、調整をしています。今はいい例は思い浮かびませんが。“デスナイト”のヒーローカードの色々な使われ方を見るのが楽しかったですがね。ヒーローカードがうまくいったなと。
ーー「凍てつく王座の騎士団」について、今回のBlizzConでは特に発表などはありませんでした。“デスナイト”のヒーローカードをもう少し詳しく聞かせていただけますか。
Kosak氏:このキャラクターたちのファンタジーを作りあげるのがすごく楽しかったです。
Kindred氏:ヒーローたちのデスナイトとしてのコンセプトが描けて、『Warcraft』、ブリザードの1ファンとして最高でした。
Kosak氏:拡張セットを作るにあたって、一つのコアな体験、「凍てつく王座の騎士団」ならデスナイトに思いっきり力を入れます。9人のヒーローたちをデスナイトに変えるのは、『ハースストーン』だからこそできることです。『Warcraft』の“たられば話”を実現することができます。ゲームプレイ的にも、いろんなデッキが出てきてとても楽しく仕上がりました。今回の「コボルトと秘宝の迷宮」のコアな体験はダンジョン攻略とレベルアップ。だからシングルプレイヤーのコンテンツにも力を入れました。
ーー『ハースストーン』の最初の二年ぐらいは、拡張セット、アドベンチャー、拡張セット、アドベンチャーというパターンで新しいコンテンツが出ました。しかし最近は、少し違うやり方が見られます。「凍てつく王座の騎士団」の無料アドベンチャーもありましたし、今回の「ダンジョン攻略」モードが発表されました。その話に入る前に、「一人で『ハースストーン』を遊ぶ」というコンセプトを開発チームはどういう風にお考えになっていますか。
Kosak氏:チームの考え方を少し説明しますね。135枚のカードの拡張セットは、ゲームに大きなインパクトを与えて全クラスに新しいコンテンツを提供するものです。そしてアドベンチャーはストーリーやキャラクターを紹介することについて非常に有効でした。今は両方を同時にやろうとしています。フルな拡張セットに伴う興奮とアドベンチャーのストーリーを同時に提供できるように実験しています。
Kosak氏:シングルプレイヤーに関しては、ストーリー性ではアドベンチャーがよかったですが、非常にリニアでワンパターンですね。ボスを順番に倒して、最後にリッチキングが待っています。でもリッチキング戦の複数の難易度を作るのが楽しかった。
ーー実はまだ倒してないんです…
Kosak氏:私も自分のアカウントでは勝ってない。社内でも2勝しかしてないです。「コボルト」が出る前に急がないと。
そのストーリーを、ゲームプレイが濃くて何回もプレイしたくなるようなモードでやりたかったです。成功したなと思います!
Kindred氏:プレイヤー自身がストーリーを作っていくのもいいですね。デッキに加わる戦利品やレジェンド武器はプレイヤーの自由なので、その選択によって以後の攻略がどうなるのか?それをプレイヤーに与えるのが楽しい。やり直しが楽しくなって、自分としては気に入っています。プレイヤーたちも気に入っていただけるといいですね。
ーーでは、ダンジョン攻略という新しいシングルプレイヤーのモードの話をさせてください。無料プレイになりますか?
Kosak氏:そうです。
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ーー奥まで勝ち進むとプレイヤーは何がもらえるのでしょうか。
Kindred氏:快感がもらえます!しかしすべてのクラスでダンジョンを攻略するとカードパックももらえます。私が描いたパックなので個人的に好きです。
ーー何という名前ですか?
Kosak氏:ロウソク王です。
ーーもしかしてそれはラスボスの名前?
Kosak氏:5人のラスボスがいて、どれが出るかわかりません。しかし、ダンジョン攻略を始めるときは、どのボスが出るかはあるデッキから引かれています。そのデッキのカードバックがロウソク王です。だから己の力をダンジョンで見せると、そのパックが与えられます。
ーー無料なので、いつでもプレイできますが、「酒場の喧嘩」のように、週ごとにリセットする何かはありますか。
Kosak氏:デザイナーとして、難しいことですね。好きなことをしているプレイヤーに褒美を与えたい。その一方、好きじゃないことをさせたくもありません。ダンジョン攻略が好みじゃないプレイヤーに、「今週のダンジョンはやらなきゃ」と思わせたくないです。ダンジョンに関するクエストがたまには出てきます。いやならXボタンを押してもらっても構いません。
ーー普通のクエストは、ダンジョン攻略でクリアできますか?
Kosak氏:できますよ。
ーーモード自体の話に入ります。ダンジョン攻略はクラスの選択から始まって、数少ないカードとライフの状態から、ボスを倒せば倒すほど強くなって行くという流れですね。その流れの中で、どんな戦利品がもらえるのか、どんなボスに出会えるのかもう少し詳しくご説明していただけますか。
Kindred氏:多いですよ!でもKosakさんの子供だからそっちから!
ーーKosakさんのアイデアでしたか?
Kosak氏:まあ、『ハースストーン』のチームは常にみんなで協力しています。似たようなアイデアを持ったメンバーも何人かいました。リードミッションデザイナーの私の仕事は、そのアイデアをどう形にできるのかを考えることです。
ーーぜひ、詳しく聞かせてください。
Kosak氏:そうですね。私の子供だし、ようやく話せてとてもうれしいです。一年ぐらいかかっちゃったので。
48種類のデッキが存在します。ダンジョン攻略をスタートすると、これらのデッキから、難易度に伴う8つが引かれます。簡単に勝てるボスもいますよ。最初の相手は強大なネズミのような、王道的なダンジョンモンスター。バラエティ豊かで、レアな初期ボスもいます。スーパーレアなデッキもありますし、ダンジョンに驚いてほしいです。遭遇するのはボスだけではなく、トラップだらけの部屋もあります!内容は明かせませんが、一味違うものになります。
ーー「探検同盟」のアドベンチャーのようですね。
Kosak氏:そうですね。ダンジョンはいろんな体験ができるように作っています。でもボスは楽しいですね。バラエティー豊か。テストプレイをしているうちに気付いたのは、初期の段階では、プレイヤーもボスもライフが少なくてアグレッシブなデッキが有効です。だからついそれに注力してしまいます。デッキの全ミニオンに+1/+1を与える、“Captured Flag”という秘宝はあります。そういうのがあれば、最初のターンではものすごいダメージが出せるじゃないですか。で、途中まではすごく有効です。でも、後半に入ると通じなくなるかもしれません。バックアップの作戦がないと勝てない。
だから、戦利品のカードや秘宝を使ってデッキをチューンする必要があります。初期のボスが倒せても、後半に入ったら勝てるようなデッキをどう作ればいいか、あるいはエンドゲームに集中した、初期をぎりぎり潜り抜けるようなデッキを作ることもできます。こういった豊かさがあるので、何度プレイしても楽しいです。
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Kindred氏:その柔軟性がいいですね。とても面白い。
ーースタート時点のデッキはいつも同じですか。
Kosak氏:はい。各クラスのデッキはいつも同じです。
ーー試遊している中で、戦利品の追加カードがいつも3枚のパックで与えられました。その中身はランダムですか?ルールは?
Kosak氏:いろいろ試しましたが、同じテーマを共有している3枚のカードをリストからランダムに選び、プレイヤーに提供するということに決めました。何が出るのかわかりません。3枚の“パイロブラスト”が出てもおかしくない。デッキ作りのルールがない。3枚の“アヤ・ブラックポー”と断末魔が2回起こるという秘宝を持った、めちゃくちゃなデッキを作ったことがあります。それがダンジョン攻略の楽しさです。
何が出るのかわからなくて、それぞれのクラスは作り方がたくさんあり、個性的なデッキが作れます。戦利品の出方に工夫もあります。例えば、“クトゥーン”をピックしたら、いいデッキが作れるようにその後クトゥーンのカードがより多く出てきます。
ーー秘宝も選べます。ダンジョン攻略モードでしか出てこないとても強いカードですね。お二人の好きな秘宝はなんですか。
Kosak氏:“焙り焼きロッド”の大ファンです。「ヒーローがどちらか死ぬまで“パイロブラスト”をランダムに使い続ける」というカードです。この世界で最高のカードです。一度使ったら、ファイアボールが現れるアニメーションの間の緊張感がね…誰にあたるのかなー…バーン!バーン!バーン!Kindredさんは?
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Kindred氏:それがね…
Kosak氏:好きなの、言っちゃった?
Kindred氏:他のは…メガ疾風を与える“ヴォーパルダガー”がいいですね。ダンジョン外には出てこなくてよかった。絶対に存在してはいけないものです。
Kosak氏:でもおかげですごいデッキが作れます。
Kindred氏:必要なんですよ!
Kosak氏:ダンジョンは甘くないからね。
ーー社内テストでの全ボスのクリア率は?
Kindred氏:まだクリアしてない!
Kosak氏:ふさわしい難易度を探そうとしています。結構難しいですね。簡単すぎると、リプレイする価値はありません。何も感じないから。とんでもない強さを持つデッキを作る楽しさは、その必要性にあるんですね。だから、難易度が高いほうが楽しい。結構難しくしましたが、その分プレイヤーたちが向き合ってくれると思います。
ーー最後に、去年のBlizzConからの一年間が、『ハースストーン』というゲームにとって変化が多くて大きな一年でした。具体的には言えないかもしれませんが、『ハースストーン』は今後、アート的に、テーマ的に、そしてゲームプレイ的にも、どのように変わっていくとお考えですか。
Kindred氏:アートのほうは、拡張セットがいつも前と全く違うものだから、探検と楽しさがいっぱいです。アートチームが新たな拡張セットを作り始めるのがいつもすごくいい経験です。それが今後も続くと思います。
Kosak氏:そうですね、そのバラエティーの豊かさが全面的に楽しいです。前回の拡張セット、アイスクラウン城砦の天辺、『Warcraft』一番の悪人のフォーカスの続きが、まさかこの小さくてロウソクを持ったネズミ怪人たちになるだなんて…そういったことが大好きです。次はどうなるか常にわかりません。ダンジョン攻略のモードもすごく楽しみです。ファンのみなさんに気に入っていただけると思いますし、12月にプレイできる日を楽しみにしています。
ーーありがとうございました!