
ある程度まで塗り終えたら、いよいよ転輪と履帯の取り付けです。ティーガーの履帯は千鳥転輪であるため、交互に挟み込むように取り付けます。左右全てを取り付けたら、次は履帯の接着です。


この分割履帯取り付けが難しく大変な部分です。イタレリ 1/35 ティーガーの履帯は、分割して構成されている“分割履帯(連結式履帯)”と呼ばれるもので、文字通り一つ一つ転輪に巻きつけて取り付けます。ディテールが細かく、簡単に履帯のたわみ表現が出来ますが、その変わりに大きな手間が掛かることが難点です(戦車プラモの履帯には、他にもスナップフィットの可動履帯とゴム履帯もある)。
履帯取り付け方法は、イタレリが公開しているチュートリアル映像を参考にするか、取り付けた転輪に貼り付ける方法の2つがあります。イタレリの方法はまず、履帯を普通に接着剤で接続してから完全に硬化する前に転輪に巻きつける方法です。

もう一つは、転輪や軌道輪に接着しながら組み立てる方法です。この部分はイタレリ側も困難と感じているのか組み立てチュートリアル映像が公開されていますが、取り付けに対応出来ないと判断したため瞬間接着剤を用いて組み立てました。困難は予想していた通りで、ズレなく接着する事がとても難しく、全てを取り付けるのも苦労しました。一番簡単で楽な方法がないため、本キットに限らず時間と手間が掛かることから分割履帯は難問とされています。

履帯を取り付けたら、いよいよ車外アクセサリーの取り付けです。ワイヤーや履帯、スコップなどを塗装して接着します。

最後に、必要なデカールを貼り付けたら「イタレリ プラッツ 1/35 WORLD OF TANKS ドイツ 重戦車VI号戦車 ティーガー1型」は完成です。


■細かな傷や不完全な塗装が情景を引き立てる「イタレリ 1/35 VI号戦車 ティーガー」
今回は、ウェザリングなしの状態で完成まで組み立てました。スモークディスチャージャーなどを取り付けない、後期型であるものの車外アクセサリーを含めて取り付けると存在感を放ちます。










組み立て自体は問題なくとも、わかりにくい組説や困難な分割履帯の取り付けなど、キットに初めて触れる初心者にとっては難しさが残るプラモデルです。
しかしながら、プラモデルの成型色がジャーマングレーに近いことから、全面の塗装を行わず塗装を履帯と車外アクセサリーのみに抑え、最後に全体を仕上剤の「トップコート(水性スプレー) つや消し」(“光沢” から“つや消し”など、物体の質感を塗りつけることで変えられる透明なコート剤)を吹き付けることで、質感を上げる方法なら工程の手間を大きく減らす事が出来ます。
また戦車模型は、戦車そのものが不整地などの移動によって汚れて塗料が剥がれたり削れたりするため、多少の塗装がいき届いていない部分があっても質感を高める特徴として機能することです。今回は、缶スプレーで全体を塗るという効率化を図りましたが、全てを筆塗りで塗装しても、筆ムラから画一的ではない見た目を表現できるのではないでしょうか。

今回はウェザリングを行わないで、普通に塗装して組み立てた状態を紹介しました。ウェザリングに関しては、ドライブラシなどのテクニックを用いて行う方法もありますが、簡単に汚し表現を行えるタミヤの「ウェザリングマスター」などがあります。これは、模型の角やモールドをススで塗り込めば、塗装後でも簡単にシェーディングの黒立ちを表現し、質感を高められるのが大きいです(普通に砂や塗装の汚れ表現をしても良い)。
加えて戦車模型の塗装やウェザリングは奥深く、近年ではゲームなどの3DCGから発想を得たとされる“カラーモジュレーション”という塗装方法が登場しています。これは、塗装時にライティングの向きや環境光を考慮して、通常より暗くなるところや影を暗い塗料で塗り込み、明るくなる部分をハイライトとして表現するという方法です。イメージとしては、テクスチャの影表現の描き込みと、多数のゲームなどで導入されているグラフィック表現のAO(アンビエント・オクルージョン)に近いとも言えます。

いかがでしょうか?今回は、イタレリとWargaming.netコラボの「イタレリ プラッツ 1/35 WORLD OF TANKS ドイツ 重戦車VI号戦車 ティーガー1型」をご紹介しました。
簡潔な組み立て説明書から初心者向けのプラモデルとしては、多少の作りづらさがあるキットです。とはいえ、全て塗装することにこだわらなければ、ジャーマングレーな成型色を活かしつつ、一部の車外アクセサリー塗装と仕上げのつや消しトップコートを施せば、見栄えを保ったまま低カロリーで作れるプラモデルであるとも言えます。
プラモデルそのものとしては、古いキットがベースになっているものの『WoT』のエンブレムを表現出来るデカールが多数付属していることから、お気に入りの車両を表現できる事が強みの自由度が高いキットです。