■今回の大会を開発者はどう見た?『エースコンバット7』MP開発者インタビュー
「Red Bull Friday Night Streaks」終了後のギリギリのお時間の中、川瀬覚氏と廣田慎也氏、下元学氏、そしてE3 2019帰還直後に訪れたブランドディレクターの河野一聡氏の『エースコンバット7』開発スタッフにインタビューをする機会がありました。今回は大会直後ということで、マルチプレイモードのバランス調整を中心に今後の大会についてお話しを聞きました。
――今回の大会を経て、公式に予選を勝ち抜いて優勝を手に入れた“初のエース”が誕生したことについてのお気持ちを教えてください
下元: このような大会を開けたこと、ご参加いただいた皆さま、視聴者の皆さまに楽しんでいただけたことを嬉しく思っています。7をリリースして、若い世代の多くの方にもエースコンバットを楽しんでいただけています。”初のエース”が若い方だったことも、それをより一層実感することになりました。。
河野: 今回の大会に出場してくださったプレイヤーさんたち、会場に集まってくださったファンの方々、配信を観戦してくださったみなさんに感謝をしております。発売後にとりくみが行われるというのはエースコンバットにとって、実は非常に珍しくて、「初のエース誕生」まで皆さんがつないでくれたおかけだと感慨深いです。
――今回の大会は、QAAMによる一撃離脱戦法が少なくEMLやMGPなど、操縦テクニックが重要となる兵装を駆使した選手が目立っていたと思います。彼らの活躍を観ての感想をお願いします。
廣田: 大会ルールが4名で戦うバトルロイヤルでしたので、1vs1に強い兵装やパーツ構成が目立ったのではないかと考えています。4vs4で戦うチームデスマッチや8名で戦うバトルロイヤルだった場合、選択される兵装も変化するのではないかと思います。もちろんEMLで連続キルをしたり、MGPを的確にヒットさせたりする場面を見て、参加者の腕の高さに驚きも感じました。
川瀬: 予選を勝ち抜いてこられただけに、全員が強いプレイヤーで優勝の可能性があっただろうことは大前提なのですが、その上で非誘導の直射系兵装を得手にされていた面々は有利な位置関係にうまく持ち込んでいましたね。でもQAAMが要所で刺さっている光景が何度もありましたし、一撃離脱専用に構成した機体セットだって十分ポテンシャルありますよ!
――今回の大会はどのような経緯から決まったのでしょうか?また、オンライン予選から始まる公式大会やチームデスマッチ公式大会など新たに開催される予定はあるのでしょうか?
下元: エースコンバットの魅力はエースパイロット体験ですので、1人プレイとなるキャンペーンがゲームの主軸となります。そこはこれからも変わりません。ただ、7をリリースして以降、共闘や対戦に対する要望は非常に多く頂いています。ネットワークで繋がることが当たり前となった今、シリーズの別のあり方も考えるべきで、そのためにも対人戦の大会を実施し、自分の目で見てみたいと思っていました。そんな中、タイミングよくRED BULLさんからお声がけけいただき実施となりました。課題も分かり、当初の私の目的は果たせましたが、それとは別で、また今回同様に実施の機会をいただければ、前向きに取り組みたいと考えています。
――今回の試合を見て機体や兵器・パーツを「こう調整したい」と思った部分はありますか?
川瀬氏: EMLが大会を制したわけですが、マルチプレイ環境でのEMLの強さは開発側でも認識していて、最近の『7』アップデート(Ver.1.10)でカウンターとなるバランス調整を提供したつもりでした。露骨な告知を行ってこちらから「EML対策してよ」と言う訳にもいかないというジレンマを抱えていますね。
廣田氏: ただ兵装を調整するという部分では、基本的に下方修正という弱体化ではなくて、その兵装の特徴や良さを出せるような形にしたいですね。兵装を選んでいる人が楽しんで貰える部分ではあるので、今回の大会を含め色々な物を見ながら調整のさじ加減を検討していきたいと思っています。
――なるほど。先のEMLもそうなのですが、QAAMも再誘導/威力が強すぎるという意見をTwitterを含め様々なところで挙げられているのをよく見ました。またTLSの性能についても、シングル/マルチを含め更に強化した方が良いという意見も出ていますが、それらの兵装の威力調整はどうでしょうか?
川瀬: QAAMはマルチプレイのバランス調整を行うための一つの指標にしています。特殊兵装はそれぞれ異なる特徴がありますが、強さはどの兵装も同じくらいになることが理想形です。
先日のDLC配信時(ADF-11F レーベン)には長射程ミサイル兵装やマルチロックミサイル兵装の上方調整を行いました。各兵装の強みがより発揮できるようになっていますので是非試していただけたらと思います。また今後控えていますDLCミッション配信と同時に、一部兵装のバランス再調整を予定していますので、そちらもご期待ください。
――機体そのものの性能調整(旋回やロール速度、加速など)についてはどうですか?特に初期機体のF-16CやF-14Dの性能については、各種パーツを装着してもマルチ/シングル共に動作が重く操作が難しい機体に仕がっている印象があります
川瀬: 実在する機体を扱ったシリーズですので、流石に世代間の性能差という事実をある程度は考慮する必要があります。しかし対戦ツールとしても楽しめるものにするために、機体性能には色々とデフォルメを効かしている部分も当然ありまして、実は今作のF-16Cはシリーズ歴代でも屈指の良く動く初期機体になっています。
また同じ機体コスト帯では往々にして速度性能と旋回性能がトレードオフになっていたりもしますので、兵装を含めて、その機体に最も適した戦い方を模索して、強さを引き出してくれたら最高ですね。付け加えるならば、お客様の趣味嗜好は多岐に渡っているもので、挙動に重さがある機体の方を好む意見も少なくありません。……本当に難しいです。
――機銃のレティクルについても「狙いにくい」と意見をよく見ました。今後は『6』や『5』など過去作のような挙動に戻る、もしくは狙いやすいように改良される可能性はありますか?
川瀬: ガンレティクルは自機と目標の動きから逐一正確な射撃点を算出して表示しています。ガンレティクルを目標に合わせて発射すれば機関砲が高確率で命中するとても信頼性の高いものになっています。反面、動きがセンシティブになっており、自機の動きをしっかり制御しないとふらふらしてしまうことがあるかもしれません。振り返ればエースコンバットは敵をミサイルで追い込み機関砲でトドメを刺す楽しさから始まったシリーズですので、お客様からの意見を取り入れながら機関砲との付き合い方をもっと掘り下げていく必要があると考えています
――開発陣チームがなかなかの強さを発揮したのに驚きました。バランス確認も彼らが行っているのですか?
下元: もちろん開発陣チームとして出場したメンバーも行っています。ただ、彼らは上手すぎるので、調整する難易度に見合った技量の開発メンバーだったり、他のプロジェクトのスタッフにも協力してもらいつつバランスは見ています。
――『エースコンバット インフィニティ』や『アサルトホライゾン』などの過去作と、そして本作『7』のマルチプレイにおいてユーザーからバランス等の意見に違いはありました?
廣田: そうですね、各タイトルでモードやルール、パラメータが違うので、いただく意見も違います。7は直接対決の対人戦がメインであることから、やはり空対空のバランスについて過去作よりもシビアな傾向が強かったように感じます。
河野: バランスなどについては、どのタイトルからも意見をたくさんいただいています。6も含めて様々な意見を頂戴しています。マルチプレイのバランスは、兵装だけでなく、パラメータ、ルールの設計など。それぞれのタイトルのシステム根幹と結びついている場合が多いです。要素がひとつ増えるだけでも再構築になります。
F2Pでは、フリープレイもあるため、またまったく思想が異なったりします。表面上同じに見えて、プレイフィールが酷似していても、そこにもってくるまでに開発者がそれぞれのシステム上で苦労しながら積み上げていて、でも、非情ですが(苦笑)、それはお客様に関係ないと考えています。エースコンバットのマルチが楽しくなるよう「俺ならこう作るのに!」というのを変わらずいただければ、あとは開発者が糧にして苦労してくれれば僕としては嬉しいです。(笑)
――最後にマルチプレイを楽しみ、今後の大会開催を待ち望んでいるユーザーに向けてのメッセージをお願いします
川瀬: 今回、遠方よりお越しいただいたプレイヤーさんも見受けられました。今後は全国各地で大会を開催して、更に多くのプレイヤーさんと交流したり対戦したりすることを期待しています!
廣田: また機会があれば、コスト無制限やチームデスマッチなど、別のレギュレーションで大会ができればと思います。
下元: 今回エキシビションマッチが番組として成立しないことを恐れて、事前に開発チームにあれダメ、これダメと縛りを設けましたが、予想外に決勝に残った4名が強くて、、、縛りは不要でした。またチャンスあれば、今度はフルパワーの開発チームでリベンジマッチさせてください(笑)
河野: そうですね。エースコンバットで大会というのは、7が世に出てくれて、そこに変わらない応援とご支援と、縁があってのことでした。これもエースコンバットの新しい1つの可能性というふうに考えています。マルチが盛り上がっていくのであれば、それはまた新しいエースコンバットの進む道が1つ増えたと単純に楽しく感じています。ブランドディレクターの立場上、「エースコンバット」はブランドあり、皆様が必要とした「超本格的飛行機ごっこ」を根っこにして、その枝葉を時代とお客様のニーズに合わせて多方向に伸ばしていければいいな。と夢が拡がっています。まあ、その拡がった夢を実現するのは下元を含めた優秀なプロデューサー陣ですので、ありがたい話です。(笑)
――ありがとうございました。今後のDLC配信にも期待しています。
以上が今回のインタビューです。今まで情報が少なかった、マルチプレイモードについて言及した内容になりました。なお6月26日には、人気オリジナル機体である「ADF-01 FALKEN」の機体DLCが配信されました。今後のイベント展開も含め、新コンテンツを楽しみに待っていましょう。