元号は令和に改められ、恋愛シミュレーションの歴史にも日々新たなページが刻まれています。しかし、そんな今だからこそ平成の恋愛SLG史を彩り、今なお多くの“ピュア紳士”に愛された名店『ドリクラ』の歴史を振り返ろうではありませんか。
『ドリームクラブ』(2009年)
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記念すべき第1作、原点にして頂点と言える作品です。主人公はある日突然「ピュアな心の持ち主」限定の会員制クラブに招待され、そこで働く10人のホストガールとコミュニケーションを深めていくというストーリー。
「女の子はシフト制」「教えてもらえる名前は源氏名」「平日はバイトで資金集め」など、かつてないリアリティを持った数々の設定が話題に。セーブ&ロードが不可能というシビアなシステムも、リアリティとやりがいに一役買いました。
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中でも、スティックを傾ける直感操作でお酒が飲める「インタラクティブ飲酒システム(IIS)」は斬新。IISを駆使することで、酔ってプライベートな話題を誘う「エモーショナルトークシステム(ETS)」に発展させるのが攻略の重要なポイントでした。
何度も何度もクラブに通い続けた結果「この娘はどのドリンクを何杯飲めば酔う」という謎の計算力が身についた紳士諸兄も多かったのではないでしょうか。
『ドリームクラブ ZERO』(2011年)
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「ゼロ」という名前の通り、初代の5ヵ月前が描かれた作品。2作目にして過去編というのも少し珍しい展開です。基本的なシステムは変わりませんが、クラブの内装は初代と少し異なり、シナリオもホストガールたちが前作の環境に至る経緯などが明かされるものでした。
遙華、あすか、ノノノの3人の新規ホストガールが登場した他、「入店面接に向かう娘と出会う」なんてイベントも。
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個人単位でもコンプリートは至難の業でしたが、13人全員にマルチエンディングが用意されており、かなりのボリュームに。「グッドエンドを目指していたはずが、気づいたらベストエンドを迎えていた」というのも日常茶飯事でした。
カラオケモードでホストガール達が歌ってくれる曲も少しアレンジが違っているなど、前作ユーザーも更に楽しめるよう、細やかな作り込みが光る作品に仕上がっていました。
『ドリームクラブクラブ ぴゅあクロック』(2012年)
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スマートフォンに『ドリクラ』初登場となった時計アプリです。初代で主人公が最初に出会う看板的ホストガールである亜麻音が時刻を読み上げてくれたり、モーニングコールをしてくれるというもの。数百種類の撮りおろしボイスが楽しめました。
当然のように着せ替えもタッチでのイタズラも可能で、酔わせることさえも可能。時計アプリと言えど『ドリクラ』らしさが詰まったこだわりが光ります。
『マージャン★ドリームクラブ』(2012年)
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続いてリリースされた作品は、なんと麻雀ゲーム。3作目にしてこの冒険っぷりも、流石『ドリクラ』と言わざるを得ません。
雀荘でホストガール(このゲームでは女性会員と呼ばれました)と麻雀を楽しむシンプルな内容でしたが、これまで孤高の存在とされていた「受付さん」が対戦キャラに入り、しかも主題歌を担当したことでファンは大騒ぎ。
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麻雀ゲームとしても堅実な内容で、女の子の様々なコスチュームやアガリのカットイン演出によってビジュアル面も楽しめます。もちろん麻雀ゲームですから、イカサマ要素とちょっとしたセクシー要素もバッチリ収録のピュアっぷりでした。
『ドリームクラブ ホストガールコレクション!』(2013年)
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2013年には時流に乗り、スマートフォン向けアプリゲームもリリースされました。本作では、プレイヤーはお客さんではなく「ドリームクラブのオーナーとしてホストガールを集めてクラブを運営する」という立ち位置に。
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作中では歴代のホストガールに加えて多数のオリジナルキャラクターも登場。カードを強化しながらコレクションしていくというベーシックなシステムのアプリでしたが、もはやお馴染みとなった制服だったり、しれっとアイテムにカクテルがあったりと、『ドリクラ』テイストは健在。2014年にサービス終了を迎えました。
劇団ドリームクラブ(2013年)
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2013年、公式2.5次元ユニットとして始動したのが「劇ドリ」こと「劇団ドリームクラブ」です。
声質や体格までこだわって選び抜かれたキャストによる熱演で、ビジュアル面はもちろん、キャラクターの持つ雰囲気まで再現してしまうクオリティの高さが人気に。オリジナルストーリーとカラオケシーンを再現したライブを組み合わせた舞台を上演しました。
休止期間とメンバーチェンジを経ながら3期に渡って活動し、2017年3月に築地で惜しまれつつ卒業公演を実施。本劇団オリジナルの設定も取り入れられ、卒業公演で披露された名曲『See You Again!』は、原作の楽曲を手掛けるmomo氏によって劇団のために書き下ろされました。
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公演以外では東京ゲームショウでもステージに登壇し、『地球防衛軍』シリーズのPR活動に参加。カラオケシーンを再現したダンスと歌も披露され、賑やかな会場内でも抜群の存在感でした。
『ドリームクラブ ホストガールオンステージ』(2014年)
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シリーズ初のPS4向けソフトとして、ダウンロード専用の基本無料版として登場したタイトル。これまでに作中で登場した楽曲のカラオケステージを鑑賞できる作品になっています。
見どころは何と言ってもPS4の性能とグラフィックを活かした全ホストガール13人+受付さんによるダンスで、DLCで衣装チェンジやソロ曲にも対応。フルで楽しむためには結構な数のコンテンツ購入が必要でした。
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PS4本体の発売から間もないリリースということもあり、「PS4→4PS→Forピュアな紳士だ!」という謎の売り文句はともかく、多くのピュア紳士はこのタイトルでPS4のマシンパワーを実感したのでした。
『ドリームクラブGogo.』(2014年)
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今のところシリーズ最後の作品で、家庭用ハードではスピンオフ作品を含めて5作目にあたります。お店も5号店なので「Gogo.(ごーごーてん)」というネーミングに。制服やお店のシステムなどは基本的にこれまでと変わりませんが、登場人物が一新されました。
登場人物の刷新によって雰囲気はガラリと変わりましたが、魅力は変わらず健在。特に本作は前述の劇団でも楽曲が使用されるなど音楽面の人気が高く、各キャラごとで持ち歌のテイストがあまりに幅広過ぎることで知られています。
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登場キャラクターはそれぞれ関西人、ハーフ、国際スパイ(自称)、宇宙警察(自称)……とかなりの個性を誇り、「それぞれの事情を抱えたホストガールとドリームクラブで交流し、仲を深める」という『ドリクラ』の基本に立ち返った作品と言えるでしょう。
まとめ:ピュアが溢れる名作揃い
一見するとエッチな雰囲気が先行しがちな『ドリクラ』ですが、実は「ピュアなココロの持ち主だけが入店を許される」という設定通り、シナリオでは「誠実さ・真面目な努力の結実」が描かれます。
特にプレイヤーの分身たる主人公は愚直とも言えるほど心優しい真っすぐな人間で、シビアなシステムによる達成感と合わせると、青春系恋愛シミュレーションゲームのような後味が残る作品でもあるのです。
TGSをはじめ事あるごとにイベントに出現しては便利すぎる言葉「ピュア」にこじつけた宣伝活動を展開する謎のマスク男「ドリームエックスクリエイト代表」など、遊び心溢れるPR戦略も大勢のピュア紳士に支持され続ける根強い人気と無関係ではないでしょう。発売日の延期が多かったのは、ご愛嬌。
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『初代』と『ZERO』は何度も移植を経ており、現在は『Gogo.』とあわせてPSnowの配信によってプレイすることも可能です。忙しない現代社会、日々の苦労によって荒んだ心を、少しのセクシーさとたっぷりの充実感に溢れた「とっておきの素敵な週末」で癒してみるのも良いものではないでしょうか。
ちなみに、ゲーム内では「カラオケ応援」のリズムゲームで通信対戦も可能でしたが、筆者は一度しかマッチングしたことがないのも、今となっては良い思い出です。