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スクウェア・エニックスから2020年3月2日『ファイナルファンタジーVII リメイク』の体験版が配信されました。『FF7』の体験版といえば、ひとつのゲームソフトを思い出す方も多いのではないでしょうか。
そのタイトルは『トバル No.1』。当時のスクウェアから発売されたこの格闘ゲームには、『FF7』の体験版が封入されているということで非常に話題となりました。ただし、その話題性が強すぎて『トバル No.1』のゲーム内容自体はあまり大きく評価されなかった印象です。
そこで今回の『FF7 リメイク』体験版配信に合わせ、あえて今だからこそ『トバル No.1』をレビューするためにプレイしてみました。当時としては珍しい自由な移動システムや、格闘ゲームのシステムを生かしたダンジョン探索「クエストモード」など、今プレイしても輝く部分が感じられる作品でした。
スクウェアのPS参入作品! 『トバル No.1』とは
本作は、スクウェア・エニックス(当時スクウェア)から1996年8月2日発売された3D対戦格闘ゲーム。セガの『バーチャファイター』、ナムコの『鉄拳』シリーズに関わったスタッフを集めて作られた「ドリームファクトリー」が開発し、キャラクターデザインに鳥山明氏を起用しています。
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キャラモデルが表示されないところが少し残念ですね。
音楽には光田康典氏、伊藤賢治氏、川上泰弘氏、下村陽子氏が参加。スーパーバイザーに坂口博信氏を迎えるなど、超豪華な開発陣も特徴的です。ちなみに当時のスクウェアのプレイステーション初参戦作品でもあります。そしてこのゲームにはオマケとして「SQUARE'S PREVIEW」と呼ばれる体験版ディスクが封入されており、『ファイナルファンタジーVII』の序盤のシーンが遊べました。
物語の舞台は2048年。究極のエネルギー「モルモラン鉱石」を産出する惑星トバルで、200日に一度行われる格闘大会「トバルナンバーワン」のチャンピオンを目指す戦士たちの戦いを描く……というお話です。地球人の「チュージ」キッタイク星人の「エポン」作業用ロボ「ホム」などさまざまな種族が参加して争います。果たして栄誉は誰の手に輝くのでしょうか……。
3D格闘ゲームのハイブリッドが生み出す基本と斬新さの融合システム!
本作は『バーチャファイター』『鉄拳』両方の遺伝子を持つ作品だけあり、格闘ゲーム部分の作りは非常にしっかりしています。3D格闘ゲームとしての操作感は滑らかで初心者にも馴染みやすく、それでいて独自のシステムが奥深さを生んでいるのです。
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まず攻撃ですが、パンチやキックなどに細かく分かれたボタン対応ではありません。コントローラーの「△□×」が「上段/中段/下段」に対応しており、相手の状態に合わせて直感的に技の撃ち分けが可能。R1ではガードができるほか、強攻撃に使ったりしゃがみに使用したりと非常に重要な操作になっています。そして、R1と□ボタンを押すことで発生する「つかみ」がこのゲームのキモになっているのです。
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「つかみ」はその名前のとおり相手をつかんで技を派生させる動作です。つかんだ後には双方にお互いのアクションが生まれ、つかんだ側は「攻撃orガード」「相手を移動させる」「崩し」、つかまれた側も「攻撃orガード」「こらえる(移動させない)」「ふりほどく」のアクションを選択可能。掴み後の攻撃にも「上中下段攻撃」と「投げ」が選択でき、ガードはそれに対応可能です。
ちなみに相手の投げを無効化する「投げ抜け」要素もあります。この「つかみ」アクションがこの作品最大の駆け引きを生んでいて、相手を素早い攻撃でガードさせてからつかむ、あるいは「つかみ」を狙いに来るキャラにフェイントで打撃を与える、逃げる、などの選択肢が常に発生するのです。
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また、この時代では珍しく「フィールド全体を利用したプレイ」が可能なゲームでもありました。方向キーの上で画面奥へ、下で画面手前に移動する奥行きの概念が存在していました。これにより打撃の強いキャラやリーチの長いキャラは得意な距離をキープすることを狙い、投げが強いキャラは軸をずらして攻撃を避けながら相手に近づくことを狙う、といった駆け引きが生まれます。
この操作方法によりジャンプキーがL1ボタンに独立しているのも特徴です。ジャンプも横だけでなく奥行きの移動に使えるため「ジャンプキックで牽制しつつ軸をずらす」なんてやり方にも利用できますね。ただ、ジャンプは操作性が独特すぎて後述の「クエストモード」では少々使いづらくなります……。
奥行きのある戦闘フィールドと「つかみ」の駆け引きがあるため、本作の戦闘には常に緊張感が生まれます。打撃コンボ技でも相手がガードに徹することでコンボが止められてしまい、ピンチになったりするため攻撃を連発で狙うのはおすすめできません。一応スピードの早い「エポン」や「グリン」だとそれなりには通用するのですが、思想なき攻めは基本的にこちらのピンチを招くゲームだと思ってください。比較的一撃の威力が高いゲームなので、相手の行動を読む差し合いが魅力のゲームですね。
トーナメントモードで腕を磨け! クリアまでがゲームのチュートリアルだ!
トーナメントモードは闘技大会「トバルナンバーワン」の優勝者である「スーパートバルマン」を目指す他の格闘家との対戦モードです。いわゆる普通のシングル用モードですね(ストーリー部分はありませんが)。自分の2Pカラーを含めた8人を倒すことでボスとの戦闘が3連続で始まりますが、この3人がどいつもこいつも強いのです。
最初のボス「ムーフー」は手足が非常に長く、相手のペースに合わせると一切攻撃を当てることができずに完封されます。軸移動やガードをしっかりと合わせ、近づいて強烈な一撃をお見舞いするかカウンターに徹するかがポイントです。
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続いての「ノーク」は見た目からして超でかく、今まで頼りにしてきた「つかみ」が無効という強敵。しかも一撃の威力は当然高く、しかもガンガン攻めてくるため、少しでも守勢に回ったら画面端に追い詰められてリングアウトさせられます。ガードを固めて画面端にいると意識的にこちらを押してくる凶悪なAIです。幸いダウンはするので、転ばせる技で安全に戦うか一気に攻めきるしかありません。
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追い詰められれれば即落とされます
ラスボス「ウダン皇帝」はこちらの攻撃を避けまくり、異常なくらい「つかみ」が上手いというこの作品の特性を活かしきったキャラクター。慣れるまでは何度もつかみ+投げの洗礼を受けることになると思います。適度に相手の攻撃をガードしなくては勝ち目はありませんが、ガードは即「つかみ」に繋がるので要注意です。こちらが先につかんで技を決めることは可能なので、今まで学んできたすべてを発揮しましょう。
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とにかくこの投げが強すぎる!
このボス3人の強烈な個性を乗り越え「スーパートバルマン」となったことで、ようやくこのゲームのスタートラインに立ったと言えます。気がつけば戦闘フィールド上を自由自在に操作できるようになっているでしょう。そうなってからがこのゲームの本番です。いよいよ本作のやりこみモードである「クエストモード」の紹介です。
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潜れ!謎を解け!強くなれ!クエストモード!
本作の「クエストモード」は、城の地下に眠ると言われる「モルモラン鉱石」の巨大な塊を手に入れるため、今まで何人もの行方不明者を出してきた巨大なダンジョンを探索するアクションRPGモードです。
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使用できるキャラクターはトーナメントモードで使用できるキャラクターから自由に選択可能(隠しキャラ含む)。まずはチュートリアルとなるプラクティスダンジョンからスタートになるのですが、ここで「トーナメントモードでは使用しない独特な操作」がたくさん登場するので、体に叩き込む必要があります。具体的には「ダッシュ」「物を拾う&置く」「拾ったものを食べるor投げる」「カニ歩き」「180度ターン」などで、それぞれが非常に重要な動作になります。ダンジョン内では体力ゲージがなくなることでゲームオーバーとなるため、回復する手段を発見することも重要になります。
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逆に言えば覚えないと死ぬんです。
ダンジョン内には肉やポーションなどのアイテムが落ちています。回復アイテムになる食べ物だけでなく、攻撃力や防御力を上げてくれるものや、体力の上限を上げてくれるものなど効果はさまざま。ポーションは色によって効果が異なり、回復以外に毒などのマイナス効果を持つものも存在します。そのダンジョン攻略中に効果は固定され、一度効果が判明したものは拾った時点で中身がわかるため、ダンジョン攻略中に余裕ができたら「ポーションの効果を判明させておく」のも大切です。
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ステータスアップ効果もあります。
ダンジョン内を探索中に現れる怪物とは、格闘ゲームのシステムで戦闘することになります。敵はネズミやグールなどこのモードオリジナルのキャラクターで、敵によっては専用モーションで知らない攻撃をしかけてくることもあって非常に危険。倒せば高確率でアイテムやお金を拾うことができるため、なるべく無傷で相手を倒していくことが探索の重要ポイントになります。
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プラクティスダンジョンをクリアしたあとは「エピソード1-3」の3つのダンジョンが解放され、扉を開けるための「鍵」や新たなる脅威である「罠」が登場します。「鍵」をゲットするためにダンジョン内のスイッチなどを探し求め、転がる岩や落とし穴などの「罠」を攻略していく探索アクションは、癖のある操作にかなり苦戦すると思います。しかし、地道にダンジョンを攻略していくゲームプレイはとても楽しいのです。
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各エピソードをクリアすることで、「ムーフー」「ノーク」「ウダン皇帝」の3人のボスをすべてのモードで使用できます。「ノーク」は「Sノーク」という小型キャラになりますが、こいつはリーチも「つかみ」も強力。最後のダンジョンで使用するにもおすすめです。
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こいつの「つかみ」からの投げはとても使いやすい。
目指せ最奥!ウダンズダンジョン
エピソードダンジョンとは別に、もうひとつのダンジョンが存在します。これが本作のメインコンテンツとも言える「ウダンズダンジョン」です。張り紙を見ると、なんと「レベル∞」となっています。このダンジョンは今までの4つのダンジョンとは大きく特性が異なり、全30Fの自動生成ダンジョンなのです。
しかも、ここで突然今まで登場しなかった「天秤(拾った後に特定のアイテムの効果が倍になる)」などのアイテムが登場したり、知らない敵が続々登場するなど、ほぼ新しいゲームとして楽しむことができます。ダンジョン中に現れる敵を倒し、アイテムを集めながら次のフロアまでの出口を見つけて突き進む、非常に無骨なダンジョン探索モードです。
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他のダンジョンに比べて非常に長丁場になるため、早い段階でポーションの効果を見極めることが重要な攻略ポイントになります。階層が浅いうちは敵が弱いため、ポーションを見つけたら早いうちに飲むか、もしくは相手にぶつけて効果を確認しておきましょう。中盤以降になると、知らないポーションを飲むような博打は確実にプレイヤーの破滅を招きます。
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早い段階で回復系ポーションが見極められれば、生存に繋がります。
30Fのダンジョンをクリアすることで、最後の隠しキャラクターを解放することができますが、正直ここまでたどり着くのは非常に困難です。どれだけ操作に慣れてもアイテム運が悪ければ消耗する一方ですし、ダンジョンの構成が悪ければ敵と戦い続けなければなりません。どんどん敵が強くなっていく「ウダンズダンジョン」では、いかに戦闘回数を減らして進むかも重要なポイントです。
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序盤のザコはなるべく瞬殺できるようにしておきたい。
本作の特徴である「戦闘場を自由に移動できるシステム」を上手に生かした印象のある「クエストモード」は、今プレイしてみてもやりごたえがあります。自分の得意なキャラを見つけ敵を倒し、ランダム効果のアイテムを鑑定しながらダンジョン探索を進めるか、今のローグライクやハックアンドスラッシュゲームに通ずる部分もあるのではないかと思います。この作品で生まれた格ゲー&ダンジョン探索のシステムは『トバル2』やPS版『エアガイツ(ブランニュークエスト名義)』など、後の同メーカーの格闘ゲームにも引き継がれてます。
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やはり操作性と反応速度にはどうしても不満が……
久しぶりにプレイして気になったのは、いくら1996年に生まれたゲームとは言っても「操作性が悪い」という点です。格闘ゲーム部分はまあまあ滑らかで、技の出づらさもしっかりと入力を求められるということなので特に問題はないのですが、「クエストモード」の操作性の悪さには非常に苦労させられました。ダッシュの癖の強さ、方向転換のしづらさ、アイテムを拾う際の判定など、細かい部分でストレスを感じさせられます。
特に多くの場面で求められるダッシュ&ジャンプの操作が非常に難しく、穴の縁ギリギリでなるべく最大距離で飛ばなければすぐに穴に落ちてしまいます(穴に落ちれば当然ダメージを受けます)。また、ジャンプを着地してもダッシュは継続しており、急いでストップしなければ次の穴に落ちてしまうシーンも連発。ゲームデータの読み込み自体は速いのですが、どうしても入力レスポンスの悪さが原因となる事故が回避しづらいのが大きな問題に感じられます。また、「岩に連続で踏まれる」「敵が壁側の視界の影に入って攻撃してくる」など、システム的な問題点も多数見られました。
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この先に目的地もあります。
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ここまで評価してきた『トバル No.1』ですが、2020年に遊んでもメインのゲーム部分が色褪せていないことに驚きました。当時はかなり珍しかった操作システムは、今触ってみてもすんなり遊べますし、素直に完成度の高さを感じます(ダッシュジャンプ以外は)。特にゲームの駆け引きを生み出す「つかみ」は今でも十分通用するシステムではないでしょうか。
「クエストモード」も相変わらずダンジョン探索としては面白く、「ウダンズダンジョン」のランダム要素はやりごたえ抜群。このモードだけ単体で今の操作感で出しても評価されるのではないかと感じます。
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今回のプレイで最終階まではたどり着けませんでした。
時代やハード性能的な操作/反応については、どうしても今プレイするにはハードルの高さを感じてしまうのですが、1996年~1997年は、アーケードで『バーチャファイター3』『鉄拳3』が出ていた「3D格闘ゲームが華々しく輝いていた時代」でもあるのです。この時代に他とは一線を画すユニークな格闘ゲームが生まれていることは、非常に評価したい部分です。
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グラフィックは流石に劣るけど今聞いても音楽の良さが抜群ですね。
総合評価: ★★☆
良い点
・3D格闘の基本と独自性を備えた格闘システムが面白い
・「つかみ」と自由な移動の駆け引きが優秀
・アクションRPGモードの「クエストモード」がやりごたえ抜群
悪い点
・当時としても粗めのグラフィック
・「クエストモード」に特化しすぎたシステムが格ゲーとしての完成度を下げている
・初代PS時代とは言え操作性や反応の悪さに不満
《Mr.Katoh》
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