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今回は2020年3月10日にStrange JourneyよりPC(Steam)向けに早期アクセスでリリースされた『Victory Road』について生の内容をお届けしたいと思います。
『Victory Road』とは
本作は、コーチの視点から一人のボクサーを育成するシミュレーションゲーム。『BOXER’S ROAD』や『Punch Club』などからインスピレーションを受けたという作品で、食事やトレーニングなどを設定し、非常に細かいスキルやファイトスタイルの設定が可能です。
ある秘められたエピソードのある本作。本作は当時、インディーデベロッパーのMatt Gersak氏とくるこぶ氏の2名によって作られ、2017年に、当時まだけして容易くはなかったSteam Greenlightを通過。しかし、2019年にプログラマーのMatt Gersak氏は、本作の完成を見ずして病により若くしてこの世を去ってしまいました。
今回リリースされた『Victory Road』は、その後遺されたくるこぶ氏が彼のプログラムと遺志を継いで完成させた作品です。こちらの記事には、「2人で作り上げた作品」に対する同氏のコメントが載せられています。
なお、ゲーム内のテキストは全編英語ですが、日本語も堪能であるくるこぶ氏による日本語の取扱説明書も用意されているので遊ぶ際にはご参照ください。
説明書出来たぞー!今日はここら辺で休もう.....https://t.co/X2Fne8ZmnP#ドット絵
— Yui Jegnan/くるこぶ軍曹 (@yuijegnan) March 6, 2020
『Victory Road』の実内容に迫る!
ゲームが始まり、まずは自分が育てるボクサーの選択から始まります。経歴をパラパラと選んでいると「39歳!?」となるようなボクサーもいましたが、とりあえずは28歳のニックを選択しました。ニックもステータスがオールレベル1からはじまったので年齢によるボーナスは無さそうです。
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まずはチュートリアルとして、ボクサーへの食事のパラメータの説明が始まります。栄養素にはそれぞれ「エネルギー」「水分」「タンパク質」が存在し、食べる食事の内容で獲得できる数値が異なります。栄養素はトレーニングを選択するために必要な数値で、足りない場合はトレーニングが失敗する可能性があります(もちろん警告はしてくれます)。
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これが『Victory Road』の基本中の基本。
このトレーニングと食事のバランスをいかに取るかがとても重要なポイントとなります。
美味い食事は体の資本!でも食べ飽きるのは誰だって嫌!
食事メニューには最初から用意されている6種類のほか、自分でメニューをカスタマイズできるスロットが存在します。カスタマイズ画面では「前菜・メイン×2・デザート・ドリンク×2」にそれぞれの食材を割り当てることが可能です。食事はボクサーの体を作る大切な要素ですが、このゲームに置いてはトレーニングを安全に実行するためのポイントでもあるため、数値が不足しないようなチョイスが求められます。
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ただし、ボクサーも人の子。同じメニューを連続して食べることで「ムード」が減少し、トレーニング結果に影響を及ぼすことがあります。そのため、毎日の食事を飽きさせないように選択しながら食べさせる必要もあります。また、ボクサーが「今日はミネストローネスープが食べたいなー」などと要求してくることもあります。リクエストに応えると「ムード」が大きく上昇するためなるべく食べさせてあげるのがおすすめです。
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もちろん食べ飽きさせないローテーションも必要です。
また、一日の摂取カロリーが消費カロリーを大幅に超えた場合はボクサーが太ってしまうため注意が必要です。アイスクリームなどの嗜好品はムードを数値分上昇させる効果もありますが、カロリーも高いため他の食事とのバランスに気を使うこともあります。まあ美味しくて楽しいものは太りやすいものです。ちなみに「水2杯だけ」というのがカスタマイズの初期にあるのですが、これはカロリー0で水だけ200補充できるため、休憩などを選ぶときにとても便利です。
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これがかなり便利なのです。
飯を食ったらトレーニング!計画的な育成を!
トレーニングはボクサーの各種パラメーターにを伸ばす練習とランダムトレーニングの9種類が存在。上記の通り安全にトレーニングを実行するためには食事で適切な栄養素を補充する必要があります。各トレーニングをあまり実行しないとその経験値にロックがかかり、解除するためのペナルティが必要となるため注意が必要です。また、トレーニングをすると疲労がたまるため、定期的にボクサーを休息させる必要もあります。
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この経験値ロックシステムがとても良くできていて、この手の育成ゲームにありがちな「特定の能力だけを伸ばした怪物」のようなキャラクターを生み出しづらくする工夫を感じます。もちろんこのロックを気にしないで特定の能力を育てることも可能ですし、バランスよくロックを回避しても個性を伸ばした育成は可能です。
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トレーニングの際もボクサーが「今日はジョギングがしたい」などとリクエストする場合があるので、「ムード」が低いときは積極的に狙っていくといいでしょう。ムードが高く疲労が溜まってないときは経験値を大幅に獲得できる大成功するチャンスなので一石二鳥です。
白熱の試合!選手がピンチなら「投げて」救え!
さて、しっかりとトレーニングを積んだボクサーにはふさわしいボクシングの試合が待ち受けています。試合はランク上の相手に挑む「チャレンジマッチ」とランク下の相手が挑んでくる「ディフェンディングマッチ」が存在します。防衛戦はボクサーの持つ勝利ポイント「BP」を消費して受けないこともできるため、大マッチの前の挑戦は無視しても構いません。もちろん勝利することでファンやファイトマネーを得られるため、余裕があるときは受けるのがおすすめです。
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プレイヤーはあくまでコーチのため、試合ではボクサーを操作することはできません。ただし、コーチの仕事がないというわけではありません。「あしたのジョー」の丹下段平は試合中どうしていたでしょうか。そう、アドバイスです。プレイヤーは6つのボタンに「攻撃」「防御」などの指示を振り分け、試合中のボクサーに指示を出すことが可能です。
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たとえばこちらのスタミナが切れそうなときは「後退」「休憩」を出すことでスタミナの回復を指示できますし、ここで決めるんだ!となったときは「マグナム」など必殺技を選択することも可能です。ただし、これはあくまで指示のため必ず成功するわけでもなく、下手な指示でボクサーをピンチにする可能性もあるので要注意です。自分のボクサーの個性と相手の状態や特技を見抜き、適切なアドバイスを出すのがコーチの役割です。
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また、コーチは試合前に持ち込んだ3つのアイテムをリングに投げることもできます。体力を回復させる「寿司」やスタミナを奪う「ヘビ」など種類はさまざま。ただし、投げ入れたアイテムはどちらのボクサーにも判定があるため、相手に回復アイテムを取られたり攻撃アイテムを取られたりしたらこちらのピンチが広がるだけです。コーチはリングサイドを自由に動くことができるので、なるべく自分のボクサーが有利になる場所を狙いましょう。ベアトラップで相手を足止めし、石を投げて相手にダメージを与えたりも可能です。
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試合に勝利することでBPを大きく獲得し、ランクを上げるチャンスです。また、試合中にケガをした場合には専用のコマンドで治療をする必要があります。
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治療費も日数もかかるので要注意。
ジム運営も楽じゃない!コーチはつらいよ!?
序盤のゲームでバランスのいい食事を考え、トレーニングを繰り返しているとあっという間にお金がなくなってしまいます。お金は試合で獲得できるファイトマネーのほか、ジムの生徒が収める月謝(実際は2週間に1度)がありますが、最初の弱小ジムでは微々たるもの。そこでコーチ自ら「ホットドック屋」となってお金を稼ぐ必要があります。このホットドック屋は完全なミニゲームで、お客さんのリクエストを素早く作り提供する必要があります。「ホットドッグでケチャップ多めでマスタード抜き」などの注文から「たくさんのケチャップとマスタードだけ」というただの液体の注文もあるため、ちょっと笑ってしまいます。
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稼いだお金はボクサーの食費に充てるほか、試合中に投げ入れるアイテムの購入、パワーアップアイテムの購入、ジムの設備強化などさまざまに利用します。とにかく最初はお金が厳しいためホットドッグ販売を選びたいところですが、トレーニングのターンを消費するため連発は悩ましいところです。それでも序盤のファイトマネーより稼げるので多少無理はするのがおすすめですが。また、ボクサーを働かせる「鉱山」もありますが、ボクサーのためにこれは選ばないのがおすすめです。
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また、重要なコーチの仕事として「STRATEGY」画面があります。これはボクサーの個性そのものを設定する場所で、ボクシングスタイル、スキルの設定、試合中ひらめいたコンボの登録や装備の設定までさまざま。設定は実に細かく、ストーリーを進めることで手に入る「スキル」はボクサーの生き方そのものを変える可能性すらあります。
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スキルには「防御」「攻撃」「ユーティリティ」がそれぞれのツリーで存在するのですが、攻撃ツリーの「ダメージ10%アップ」を取得した途端にしばらくボクサーがKOを連発する無双状態になりました。もちろんこれは他のファイトスタイルとの兼ね合いで作り出されたものです。コーチとはボクサーのことを何よりも理解し、勝利に導くための最適の道を作り出す戦術家なのです。
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運が悪いと選手が入院することも。
ここまで紹介してきた『Victory Road』ですが、とにかくやれるべきことが多く、覚えることも多いゲームです。しかし、全体的に視覚で理解できるカジュアルなデザインや、トレーニングのために不足してる栄養素を表示できる親切な設計、爽快な演出の試合展開など、とにかく飽きさせずにプレイを続けさせる工夫が散りばめられています。
「得意なスタイル」「得意なパンチ」などを最初から自由に変えられ、プレイが進むほど育成の自由度が広がっていくのはとても好印象。経験を重ねることでスキルで得たパッシブや「HYPER」と呼ばれる発動技などの組み合わせを考えるのも楽しく、時間をかけてのびのびと理想のボクサーを作り上げることができます。また、試合中のアイテム使用などで比較的無茶な格上との試合でも勝利を狙えるのも嬉しいポイントですね。
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スポンサードされたグラブを付けて試合してくれなど条件はさまざま。
製作者がひとり亡くなるという悲しい出来事を乗り越えて完成した『Victory Road』。苦労に苦労を重ねて最終的にとても強いボクサーを作り出す、まさしく製作者の方々の「魂の一作」であると感じます。じっくりと自分の理想のキャラを育て、栄冠への地道な一歩一歩を楽しく遊べるように考え抜いて設計されている、おすすめしたい作品です。
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寿司が飛び人も飛び猿も飛ぶ。なんだこれ。
タイトル:Victory Road
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2020年3月10日
記事執筆時の著者プレイ時間:6時間
価格:2,000円