こんにちは。生物ライターの平坂です。このところは新型コロナウィルス禍による外出自粛により、趣味の魚釣りにも行けず『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』内での釣りにばかり興じています。
『あつ森』での釣りでおもしろいのはなんやかんやで魚類以外の生き物(※ゲーム内での分類はあくまで「サカナ」ですが)も釣れてしまうところだと思います。カエルとかザリガニとか。
その中でも特に、アッと驚く存在がこの「カミツキガメ」でしょう。
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えっ、なにカミツキって!?かみつくの?はい、かみつきます。なんせカミツキガメですから。そもそも釣れるの!?カメが!?はい、釣れます。日本の川でも。
というわけで、本日の「あつ森博物誌」ではこの物騒な名前のカメについて解説していきます。
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アメリカ大陸原産の大型淡水カメ
そもそもカミツキガメという名に耳馴染みのない方もいることでしょう。それもそのはず、このカメはもともと北アメリカ~中央アメリカの河川や湖沼に生息する種なのです。
淡水に暮らすカメとしてはかなり大型になり、体重が20キログラムを超える個体も見つかっています。
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食性は肉食だと思われがちですが、実際には水草など植物質のものも食べる雑食性です。なので生息地では魚釣りをしていてエサにカミツキガメが食いついてしまうこともしばしば。
『あつ森』さながらの光景ですが、そうなるとハリをはずすのがなかなか大変です。
というのも普通のカメは敵に襲われると甲羅に首や脚を引っ込めてやり過ごそうとしますが、カミツキガメはバシバシかみついて撃退しようとするのです。うーん、アグレッシブ!
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当然、うかつに口に手を近づけるとかまれてしまいます。咬合力もすさまじく、成体にかまれればケガもします。
……しかしせっかく立派な甲羅を背負っているのにそんなに攻めの姿勢を見せるのか?それはカミツキガメのお腹を観察するとわかります。
イシガメやアカミミガメなど普通のカメはお腹側の甲羅(腹甲といいます)がお腹全面、ひいては首、前後脚、尻尾の付け根までを完全に覆っています。
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しかし一方のカミツキガメの場合、腹甲はとても小さく腹部の中央付近しかガードできていません。うーん、ハイレグ!露出が多めでセクシー!
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もうお分かりかもしれませんが、これでは首も脚も尻尾も引っ込めることはできません。なら戦うしかねえよ!というわけなのでしょう。
とはいえ彼らが暮らす原産地の川には甲羅ごと噛み砕く超強力なアゴを持つワニがいるわけですから、それくらい強気なスタンスの方がいいのかもしれません。
なお、こう書くとおっかない印象ばかり受けるかもしれませんが、性格は意外に臆病で水の中から姿をあらわすことはほぼありません。もちろん、わざわざ人間を追いかけてかみつきにくる!なんて妖怪みたいなこともしないのでご安心を。
日本にもいる!
ちなみにこのカミツキガメ、出身地こそ中北米ですが近年では日本でも見つかるようになってきています。
かつてペットとして持ち込まれたものが逃げ出したのか、はたまた放流されたのか、千葉県などで繁殖してしまっているのです。
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ワニなどの天敵がいないためかもはやその密度はかなりのもで、フナやコイを狙って釣りをしているとカミツキガメが……!ということも多々あるそうです。まさにリアル『あつ森』な状況ですが、もともとそこに暮らしている生物の居場所が奪われる可能性もあるわけで、喜ばしい状況とは言えません。
また、基本的には臆病で水から出てこないカメですが、5,6月の産卵期に限ってはメスが卵を産むために土手や田んぼの畦などに上陸することがあります。この時期は気が立っているので、もし見かけても触ったりイタズラしたりしないようにしましょう。
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あ。そういえばこのカミツキガメ、食べるとおいしいです。
味が良い上にたくさんのお肉をとれるので、原産地では食用にしている地域もあります。
オススメは現地流にスパイスを効かせたケイジャンカミツキガメやフライドカミツキガメ!あー、『あつ森』のカミツキガメってイキがよくてウマそうだよな……。見てたらお腹すいてきたな……。
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リアルでは売ったり飼ったりしちゃダメ!!
それから最後に注意点!
あつ森では高値(5000ベル)で販売したり自宅で飼ったりできるカミツキガメですが、現在の日本では「外来生物法」という法律によって生きたままの移動や販売、飼育は禁止されています。飼いたい人はあつ森内で我慢しましょう!
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あと、カミツキガメはずっと水上に出していると自重で内臓にダメージを負ってしまうので施設などで管理する際は全身が浸る深さの水を張った容器で飼ってあげるべし。床に直置きはやめようね!部屋に入ったときビビっちゃいますしね。
■著者紹介:平坂寛
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Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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