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2Kは、クライムアクション『マフィア』シリーズ3作をまとめた『マフィア トリロジー・パック』をリリースしました。2002年に発売された第1作から徹底的にマフィア世界に関わる男たちを描いてきた本シリーズは、文化に対するこだわりや重厚なストーリーで高い評価を受けています。
Game*Spark編集部は、発表前に2Kより『マフィアII コンプリート・エディション』のアーリーレビューコードの提供を受けたので、本稿ではそのインプレッションをお届け。美しく生まれ変わった同作の姿を紹介していきます。
『マフィアII コンプリート・エディション』とは
本作は、2010年に発売されたクライムアクション『Mafia II』のグラフィックを向上させたHDリマスター版。1900年代中盤のアメリカの架空都市「エンパイア・ベイ」を舞台に、主人公の「ヴィト・スカレッタ」がマフィアとしての道を歩んでいくストーリーが描かれます。また、ダウンロードコンテンツとして別売りされていたサイドストーリーも収録されています。
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ストーリーは章ごとに目的を達成する形式で、ミッション以外の場面では自由に世界を探索することも可能。「指名手配書」「プレイボーイ」などを集めるコレクション要素、車を盗んで売却する金稼ぎ、銃や服の買い物などさまざまな遊び要素が用意されています。また、盗んだ車のナンバープレートの文字も自由に変更できたりと、幅広いカスタマイズ要素を楽しめます。
本作の舞台となるのは、オープンワールドで作られた広大な都市「エンパイア・ベイ」。ラジオからはジャズや当時の流行歌が流れますし、車の型式や建物のディテールも細かく再現。主人公のヴィト一家を含む移民の扱いや暮らしなど、文化的側面までこだわって作られています。
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■主人公「ヴィト」を取り巻く重厚なストーリー!
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ストーリーは主人公ヴィトの回想から始まり、彼がイタリアからの移民であることが語られます。当時のイタリア移民は立場が悪く、貧しい生活の中で父親が酒浸りに……。ヴィト自身も成長とともに親友「ジョー」と悪事を繰り返す問題児として成長。最終的に逮捕され、当時のイタリア侵攻のための軍隊へと参加することになります。
戦場で負傷したヴィトは、1945年に帰国。再会したジョーのはからいで自由を得ることになります。死んだ父の残した借金に苦しむ母と妹の現状を知り、新たな稼ぎを得るためジョーと共に「仕事」として車の窃盗や殺人を犯すことになったヴィトは、気がつけば深い裏の世界へと足を踏み入れるのでした……。
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序盤のストーリーはチュートリアルになっており、プレイヤーは移動や攻撃のアクションや、警察からの逃げ方などの基本的な行動を学ぶことになります。本作の警察はかなり厳しく、車の運転時のちょっとした違反行為でも追いかけてくるため注意が必要です。ミッションはミニマップに表示されますし、ヒントも細かいため、悩むことは少ない親切なゲームデザインです。
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■当時の文化や流行を取り入れた世界観の再現!
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前述の通り本作は、時代に合わせた雰囲気作りに徹底的にこだわっています。例えば、ヴィトが戦争から帰国して最初に家で食べる「チキンスープ」は、安価で作れて栄養が豊富な一品。ヨーロッパ系移民が健康のためによく食べていたメニューとして知られています。死んでしまった父親の借金で苦しんでいたヴィトの家でも、きっと定番のメニューだったのでしょう。
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酒場や車で流れるラジオからは、その時代の流行歌や古いジャズが流れています。ヴィトが帰国した時期である1945年に流れる曲として、ルイ・ジョーダンによる兵士の生活を歌ったヒットソング「G.I. Jive(1944年)」や、戦場の慰問で活躍したアンドリューズ・シスターズによる「Rum and Coca-Cola(1945年)」など、戦争に絡んだ作品が登場。当時はまだ戦時下だったため、こういった曲がラジオで流れることが多かったのでしょう。
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そのほかにも映画「マルタの鷹(1941)」を模した名前の酒場が作中に登場し、その中には「カサブランカ(1942年)」や「三つ数えろ(1946年)」など当時の人気作品のポスターが飾られていたりもします。こういうちょっとした小物や文化が、世界観に説得力をもたせるスパイスとして活かされているのです。
■10年の歳月が作り出したグラフィックの徹底比較!
旧作『マフィア II』は、当時としても決して他のゲームに劣るグラフィックスではありませんでした。それでもやはりリマスターされた本作を見ると、十年の歳月でいかに進化したのかがよく理解できます。ここからは、キャラクターやエンパイア・ベイの街のグラフィックスを新旧で比較してみたいと思います。画像や動画はすべて旧作→新作の順に掲載しています。<ヴィト>
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<ジョー>
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<母親>
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<車>
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<格闘シーン>
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<鏡に写った自身の姿>
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<トイレ>
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<動画で違いをチェック!>
また、リマスターされた本作のPC版では画面設定で「ボーダーレスウィンドウ」に対応するなど、一部UI周りの改善も見られます。
ここまで紹介してきた『マフィアII コンプリート・エディション』ですが、グラフィックスの向上が作品の深みと説得力を大幅に強化している……という印象です。映画のような演出のカットシーンは更に美しくなり、画面が見やすくなったことで情報量が増え、ゲームプレイ部分も遊びやすくなっています。世界観とゲームプレイの両方がより魅力的になったリマスターだと言えるでしょう。
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お互い仲もよくなかったそうです。
筆者が本作で特に好きなのは、章の開始と終わりの行動です。ほとんどの場合ヴィトがベッドから起きるシーンから始まり、クローゼットで服を選ぶシーンが挟まります。ミッションをこなして章を終わらせたら、どんな激しい戦闘を終えたあとでもきっちり家に帰り、ベッドで寝る必要があるのです。
ときには冷蔵庫を開け、ビールやサンドイッチを口に運ぶこともあるでしょう。こういった細かなアクションと、散らばった雑誌やピンナップなどの小物が、プレイヤーに「生活」を感じさせ、ゲームに深みを与えているのです。
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朝晩食べるロールプレイ用アイテムとしても使いたい。
『マフィア トリロジー・パック』からシリーズに触れるプレイヤーはもちろん、旧作を遊んでいた人が進化したグラフィックで描かれる世界の魅力を再発見できるでしょう。世界観にどっぷり浸りたい方は、予習として「ゴッドファーザー」などの映画作品を観ておくのもアリですね!
硬派な世界観のディテールまで堪能できる『マフィアII コンプリート・エディション』は、5月20日より発売中。価格は3,300円(税抜)で、PC(Steam)/PS4/Xbox Oneを対象としています。