シリーズ10周年を迎え、第1作『NieR Replicant』のバージョンアップ版製作が発表されるなど、今年に入り大きく動き出した『ニーア』シリーズ。今回は2作目にして最高傑作の呼び声高い『NieR:Automata』を取り上げます。コンサートや舞台劇、『ファイナルファンタジーXIV』とのコラボ、さらに9月24日のTGSでは新情報も用意されているとのことで、まだまだ熱い展開が続く注目作です。
練習問題の解答
回答例:宇宙への好奇心が我々をここまで導いたが、それでもなお未知は無数に残されているのだ。
「and」には順接だけでなく、時に「対立」の内容を繋いでいることがあります。「and」でも常に「そして」「だから」とは限らず、「だが」「それでも」と訳すべき場合もあるのです。
今回の場合、後の文に「still so much」があるので、前文の「導いた」先がまだ道半ばで、まだ先が長いがあるというニュアンスを出すため、「それでも」と訳しました。
Let’s Play in English:無機質から童話風まで様々な文体、どう訳す?
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今作はSFの世界観ですが、基本的に司令部からのミッション受諾によって進むので、難しい専門的な用語はあまり出てきません。むしろ言葉少なく語られる「愛」や「憎しみ」に対して2B達が抱く思いを丁寧に読み解くことが大事です。読解難易度はあまり高くない方でしょう。英語版では2Bが連れているポッドのトーンがHAL-9000に近く、バンカーと併せて映画「2001年宇宙の旅」の雰囲気が出ています。
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『ニーア』といえば、『ドラッグオンドラグーン』から継承した武器にまつわる物語。本編とは違って「Once upon a time」で始まるおとぎ話風や、何者かの独白など様々な文体で綴られています。日本語からどう英訳されたかを見るのもいいですし、逆に、英文を自分だったらどう訳すかを考えてみましょう。
「To be, or not to be,」それが問題だ
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劇中でシェイクスピアに言及していることから、2Bと9Sの名前の意味に気づいた人もいるでしょう。2Bを“To be”、9Sをドイツ語の「Nein」と読めば、有名なフレーズ“To be, or not to be”となるのです。
シェイクスピアの戯曲「ハムレット」の一節で、一般的には「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」という訳で知られています。この文には続きがあり、「問題」が何かを知るには全体を見る必要があります。
To be, or not to be: that is the question:
Whether 'tis nobler in the mind to suffer
The slings and arrows of outrageous fortune,
Or to take arms against a sea of troubles,
And by opposing end them?
父を殺した叔父に王位を簒奪されたハムレット。屈辱を受けたままでも甘んじて生き存えるか、あるいは死の覚悟を以て復讐を遂げるか。どちらが気高いのだろうか?それが問題だ、というわけです。この後に続く部分では、死を恐れることについて述べています。
For in that sleep of death what dreams may come
When we have shuffled off this mortal coil,
Must give us pause: there's the respect
That makes calamity of so long life;
死とは本当に安らかな眠りなのだろうか?死の眠りの先に何があるのか分からないから、人は死を恐れて長く苦しい生を選ぶしかないのだ。その恐れ故に、ハムレットは復讐を迷っているのです。
『NieR:Automata』では、死を知らないはずの機械達が死を恐れ、自分が何のために生きていくのか、自分の存在が消えても遂げたいことは何か、アンドロイド達は己に問い続けます。究極の二者択一を迫るハムレットの台詞は、本作のテーマを象徴するに相応しいでしょう。
覚えておきたい英単語集:機械の無機質もまた個性
- Affirmative:了解
- Positive:肯定
- Negative:否定
- Proposal:提案
- Hypothesis:仮定
- Annihilation:殲滅
- Self destruct:自爆
- Virtuous:高潔な
- Parenticide:親殺し
- Traffic violation:交通違反
今週のキーフレーズ:O Romeo,Romeo,wherefore art thou Romeo?
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ああ、ロミオ、ロミオ、あなたはどうしてロミオなの?
「ロミオ達とジュリエット達」では何故か3対3に増えてますが、こちらも言わずと知れた名文句です。一目惚れの恋が許されるものだと知って、バルコニーでジュリエットが一人呟くあの場面ですね。「モンタギュー」や「キャピュレット」という名前が運命を縛るなら、いっそ名前など棄ててしまいたい。許されぬ生き方を願ってしまった二人には残酷な運命が待っています.シェイクスピアが活躍したのは1600年前後で、約400年前に遡ります。当時の原文を見ると当然ながら現代の英語とは綴りや用法などが大きく異なります。日本での時代劇における武家言葉の様な物ですね。一般的に「古英語風」というと、現代でもなんとか通じるこの頃までの「近代英語」がベースになっています。古英語を日本で調べるにはかなり大変ですが、エンターテインメントでは雰囲気作りで時々出てくるから困りものです。
今回のキーフレーズで出てくる古英語は「Thou」「Art」の2単語で、現代英語の「You」「Are」に相当します。『ペルソナ』シリーズでも“I art Thou, Thou art I...”として出てきますね。
「Thou」は現在では廃れた二人称単数形、つまり「You」で複数ではなく一人の時に使われていました。主格、所有格、目的格、所有目的格はそれぞれ「Thou」「Thy」「Thee」「Thine」となります。日本語では「汝」「そなた」と訳され、結婚の誓いの言葉など、教会での行事では今でも使われています。古英語では最も使用頻度が高いので、英米作品を読むなら真っ先に押さえたい言葉です。
練習問題 :次の文を訳しなさい。
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How long can I fight amidst this bloody voltex of battlefield?
How long, I wonder?
2Bの初期装備「Virtuous Contract」から第1節です。任務のために感情を殺しながらも、内に秘めた迷いは念となって刀に残されました。その深い苦悩を表すように訳してみましょう。
※UPDATE(2020/9/14 00:00):誤字を修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございました。