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海外では9月23日から始まったマイクロソフトの次世代家庭用ゲーム機「Xbox Series X」と「Xbox Series S」の予約が、いよいよ9月25日より日本でも開始となります。
次世代Xboxは、ディスクドライブを搭載する「Xbox Series X」と、ディスクドライブを搭載せずXに比べてコンパクトな「Xbox Series S」に分けられます。特筆すべきはライバルハードであるPS5と異なり、ドライブの有無だけでなく性能も変わるという点です。
ディスクドライブの有無だけを考えればよかったPS5に比べ考慮すべき要素が増えていますので、どちらのモデルを選ぶべきかは、より難しくなっています。そこで本稿では、両バージョンのメリットとデメリットを考え、ゲーマーのタイプに応じてどちらの次世代Xboxを選べばよいかを考えていきます。
ディスクドライブは必要?ドライブが無くてもプレイできる「Smart Delivery」とは
まず初めにディスクドライブの有無について考えていきましょう。Xbox Series XとXbox Series Sの最も分かりやすい差はディスクドライブの有無、つまり物理ディスク版のソフトが使えるか否かという点です。
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もっとも、次世代機の登場を契機に導入される「Smart Delivery」機能によって、PS5に比べればディスクドライブの有無は小さな要素と言えます「Smart Delivery」の対象となるのはダウンロード販売のデジタル版だけでなく、物理ディスク版も含まれるからです。
「Smart Delivery」とは対応タイトルを1度(1本)購入するだけでXbox OneとXbox Series Xの、どちらのバージョンもプレイ可能となる仕組みで、上述した通りダウンロード販売のデジタル版だけでなく、物理ディスク版も含まれます。
分かりにくいので具体例を用いて説明していきます。
「Smart Delivery」対応具体例
- Xbox One版の『Gears 5』を既に所有している、あるいは「Xbox Game Pass」で利用できる状態の場合、今年のホリデーシーズンにXbox Series Xを入手し次第、ボタンを押すだけでXbox Series X版がダウンロード可能となります。
- 今年のホリデーシーズンに発売されるXbox OneとXbox Series Xに対応する『Halo Infinite』は、1度購入するだけで最適なバージョンを入手できます。リビングでXbox Series Xで遊ぶときも、寝室のXbox Oneで遊ぶときも、どちらにも適したバージョンを配信します。
- Xbox Oneの新規あるいは既存のタイトルの一部は、Xbox Series Xが発売された後にXbox Series Xに最適化される予定。一例として『サイバーパンク2077』は、発売時点ではXbox OneのみでXbox Series Xに対応していないものの、互換モードではプレイ可能。その後、開発元のCD Projekt REDがXbox Series Xに最適化されたバージョン(Optimized for Xbox Series X)をリリースした時点で、追加の支払い無しに無料で自動アップグレードが実施されます。
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「Smart Delivery」の対象は、マイクロソフト擁するXbox Game Studios作品への対応が明言されていますが、それ以外はパブリッシャーまたはデベロッパーの判断により対応されるため、ディスクドライブの無い場合はデジタル版を買いなおさなければならないソフトもあると考えられます。以下は9月24日時点で発表されている「Smart Delivery」対応予定タイトルです。
「Smart Delivery」対応予定タイトル
- 『Halo Infinite』
- 『サイバーパンク2077』
- 『アサシン クリード ヴァルハラ』
- 『Destiny 2』
- 『DiRT 5』
- 『SCARLET NEXUS』
- 『Chorus』
- 『Vampire: The Masquerade - Bloodlines 2』
- 『龍が如く7 光と闇の行方』
- 『The Ascent』
- 『Call of the Sea』
- 『Gears 5』
- 『Second Extinction』
- 『バランワンダーワールド』
- 『CrossfireX』
- 『Echo Generation』
- 『EXOMECHA』
- 『ファークライ6』
- 『Forza Motorsport』
- 『Grounded』
- 『Hello Neighbor 2』
- 『Marvel’s Avengers』
- 『Ori and the Will of the Wisps』
- 『ファンタシースターオンライン2 ニュージェネシス』
- 『Psychonauts 2』
- 『テトリス エフェクト・コネクテッド』
- 『The Gunk』
- 『ウォッチドッグス レギオン』
- 『WRC 9 FIA World Rally Championship』
上記タイトル以外の物理ディスク版を多く所持および購入予定があり、これからもプレイする方や、ブルーレイディスクを使用した映像コンテンツをXbox等の家庭用ゲーム機で楽しんでいる方は、ディスクドライブのあるXbox Series Xがオススメ。一方Xbox Oneですでにデジタル版へと移行している方や、「Smart Delivery」対応予定タイトルで遊び、次世代ではデジタル版ソフトへ移行するという方は、ディスクドライブの無いXbox Series Sでも使用目的に合っていると言えます。
「Xbox Series X」と「Xbox Series S」の性能は?
ディスクドライブの有無以上に気になるのがXbox Series XとXbox Series Sの性能の差です。
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Xbox Series X スペック
- CPU:8x Cores @ 3.8 GHz (3.6 GHz w/ SMT) Custom Zen 2 CPU
- GPU:12 TFLOPS, 52 CUs @ 1.825 GHz Custom RDNA 2 GPU
- CPUプロセス:7nm Enhanced
- メモリ:16 GB GDDR6 (10GB @ 560GB/s 6GB @ 336GB/s)
- 内部ストレージ:1 TB Custom NVME SSD
- 拡張可能ストレージ:1 TB Expansion Card (内部ストレージと同じ)
- 光学ドライブ:4K UHD Blu-Ray Drive
- パフォーマンス目標:4K @ 60 FPS、最大120FPSまで
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Xbox Series S スペック
- CPU:8x Cores @ 3.6 GHz (3.4 GHz w/ SMT) Custom Zen 2 CPU
- GPU:4 TFLOPS, 20 CUs @ 1.565 GHz Custom RDNA 2 GPU
- CPUプロセス:7nm Enhanced
- メモリ:10 GB GDDR6(8GB @ 224GB/s 2GB @ 56GB/s)
- 内部ストレージ:512GB Custom NVME SSD
- 拡張可能ストレージ:1 TB Expansion Card (内部ストレージと同じ)
- 光学ドライブ:無し
- パフォーマンス目標:1440p @ 60 FPS、最大120FPSまで
両者のスペックを比べるとSeries SはSeries Xに比べてCPU、GPU、メモリ等、情報処理を行う根本的な部分で差があることが分かります。映像出力を行うGPUに関しては、画面の解像度を下げていけばある程度は対応が可能であると考えられますが、全体的な処理性能を決定づけるCPUのクロック数と、CPUが処理を行う際に一時的にデータを記憶するメモリの性能に開きがあるという点は少々気になります。
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実際、Xbox Series SではXbox Series Xよりもゲームのインストールサイズが約30%ほど小さくなることがIGNのインタビューで明らかになっています。DirectXレイトレーシング、可変レートシェーディング、サンプラー・フィードバック・ストリーミングなどの機能はどちらも使えるといいますが、Series Sではスペックの問題から高度なシェーダー機能や光源処理のオミット、フレームレートの低下の可能性があるという点を念頭に置かねばならないでしょう。
マイクロソフトもGPUはXbox Series X|Sで特に主要な違いであり、ネイティブ4K解像度上での60fpsを実現しているSeries Xに対し、Series Sでは1440p解像度をターゲットにし、120fpsを上限とした性能になると発表。もちろん、ソフトによってはさらに解像度やフレームレートが落とされることが予想されます。
もっとも、Series Xに比べて劣るSeries Sでも、前世代のXbox Oneとの比較では約3倍のGPUパフォーマンスを発揮。データの入出力の帯域幅はXbox Oneとの比較で約40倍。これらの技術発展によりロード時間の短縮やフレームレートの安定化、複数ゲームの同時起動を実現するクイックレジュームにも対応しています。
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動作の具体例として『アウターワールド』のロード時間の比較では、前世代のXbox One Sで53秒かかる場面をXbox Series Sでは12秒にまで抑え、フレームレートでは『Gears 5』において120fpsを確保している例が挙げられています。いくらSeries Xに比べて劣るといっても、名実ともに次世代機であるといえるでしょう。
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また、Series SはSeries Xに比べて小さいというのも嬉しいポイントです。幅はそれほど変わらないものの、厚みはSeries Xに比べ3分の1ほどという薄さ。他機種との比較ではPS4 Proより少し小さいサイズで、これは大型化が進む次世代機としては驚異的。日本の住環境に適した大きさと言えるでしょう。
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対してSeries XはGPU性能の大幅な向上、ハードウェア実装によるレイトレーシングなど映像面だけでなく、正確な応答性といったゲームプレイの質の向上も追及。『Gears 5』の技術デモにおいてはテクスチャやボリュームフォグ、パーティクルでPCのウルトラ設定を上回る映像表現を実現し、ゲーム冒頭のカットシーンにおいてXbox One Xでは4Kで30fpsだったのに対し、Series Xでは60fpsで動作しています。
今後さらなる性能を要求するゲームが登場することを考えると、Xbox Series Sに比べて20,000円高かったとしても、選ぶ価値は十分あると言えます。
結局どちらを選べばいいの?
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最後にディスクドライブの有無、性能、プレイスタイルの3つの観点からまとめます。
1.ディスクドライブの有無
ディスクドライブの有無は重要な要素ですが、Xbox Oneを持っている場合は「Smart Delivery」機能により、ディスク版ソフトであってもデジタル版を買いなおすことなくXbox Series Sでプレイできます。これにより、PS5に比べてディスクドライブの有無はそれほど大きな要素ではなくなっています。また、日本では流通しているXbox One用ソフトの本数が少ないため、中古市場でソフトが値崩れしにくい傾向にあることも念頭に置く必要がありそうです。
2.性能の差
性能面のみから見ると、Xbox Series XはXbox史上最も強力な性能を有しており、今後登場するであろう高い性能を要するソフトを快適に遊べるという意味で、その将来性は確実であると言えます。Xbox Series SはSeries Xに比べると性能に不安が残りますが、Xbox Oneのゲームをさらに快適にプレイできるという点では魅力的です。3.プレイスタイル
あなたはどのようなゲーマーでしょうか?例えばPS5を所有している、または所有する予定があり、一部の独占タイトルのみをXboxでプレイする場合はXbox Series Sで十分かもしれません。どのようなソフトを主にプレイするかによっても変わってきます。次世代XboxにはXbox、Xbox 360、Xbox Oneでプレイできる数千にのぼるゲームと互換性があり、これら過去のソフトを遊ぶ場合もXbox Series Sで十分楽しめるでしょう。
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また、Xboxにはサブスクリプションのゲームサービス「Xbox Game Pass」があり、これを使えば過去の作品やインディータイトルにお得にアクセスできます。こういった場合でもXbox Series Sで事足りるでしょう。一方で、最新のゲームにアクセスしたいというユーザーは、性能の良いXbox Series Xをオススメします。
以上「Xbox Series X」と「Xbox Series S」の比較でした。様々な差がある両者ですが、本稿が少しでもモデル選びの参考になれば幸いです。
「Xbox Series X|S」は、「Xbox Series X」が49,980円(税抜参考価格)、「Xbox Series S」が29,980円(税抜参考価格)で、いずれも2020年11月10日発売予定。日本では9月25日午前0時から予約受付を開始します。