最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。
今回は2020年9月26日にPC(Steam/GOG.com)版がリリースされた『Panzer Dragoon: Remake』について生の内容をお届けしたいと思います。
『Panzer Dragoon: Remake』とは
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本作は、セガのチームアンドロメダが開発を手掛けた名作ドラマチックシューティング『パンツァードラグーン』(1995年 セガサターン)の最新リメイク作品。開発はポーランドのMegaPixel Studioが担当し、16:9比率や4K60FPS動作のほか、照準とドラゴンをそれぞれ独立して動かせる操作方式「モダン」や、オリジナル・アレンジBGMの切り替えなどの要素が追加されており、2020年現在でも遊びやすいように再構成されています。
ストーリー
栄華を誇った文明が滅んで数千年……。かつての力を失った人類は、自らが生み出した遺伝子改造による生物兵器に脅かされながら、黄昏の時代を過ごしていた。
生物兵器のなれの果て「攻性生物」を仲間と共に狩っていたハンター、カイル・フリューゲは、攻性生物を追って迷い込んだ旧世紀の遺跡の奥で2体の空飛ぶドラゴンに出会う。2匹のドラゴンの間では激しい戦いが繰り広げられていたが、最後には黒いドラゴンの一撃が青いドラゴンに乗る者の命を奪い、戦いは終わった。
ドラゴンライダーが息絶えようとするそのとき、彼はカイルへ最期のメッセージを残す。「奴を行かせてはいけない」と。カイルは彼が残した銃を手に、主を失い悲しげに咆哮するドラゴンの背に乗った。あの黒いドラゴンを追うために。
世界を救う旅が今始まった。
―『SEGA AGES 2500 シリーズ Vol.27 パンツァードラグーン』公式サイトより
プレイヤーは上のカイル・フリューゲとして謎の青いドラゴンを駆り、これまた謎の黒いドラゴンを追って、多様なロケーションの敵やボスを倒していく―というのが本作の大まかな流れとなります。
「Q」「E」キーで視点を左右前後に切り替えられる機能が特徴で、360度の全方位から迫る敵と戦いやすくするため、画面右上には敵の位置を表示するレーダーUIが表示されています。また正面を向いている時には、照準を動かすことでドラゴンをある程度操作できるようになっており、障害物や敵の攻撃を避けるのに活用できます。
連射の効く低威力の「ショット」と、ショットボタン長押しで敵を複数ロックオンし、ボタンリリース時に一斉放射する高威力の「ホーミングレーザー」の2種類の攻撃を活用して敵を撃破していきます。
美麗なアレンジBGM
『パンツァードラグーン』シリーズと言えば、その世界観を彩るサウンドトラックが魅力。古今東西のサウンドが入り混じった独特のサウンドスケープ無しには『パンツァードラグーン』とは呼べないでしょう。
本作では『AZEL パンツァードラグーンRPG』(1998年、セガサターン)『パンツァードラグーン オルタ』(2002年、Xbox)の楽曲を担当した小林早織氏がBGMのアレンジを担当。東祥高氏による原曲のエッセンスを押さえつつ、『ツヴァイ』以降のシリーズ作品が持つ雰囲気との一貫性が強化されています。筆者的には、このアレンジBGM単体でも十分に「リメイク」と呼べるのではないか、とも思える満足度です。
原作をプレイしたことのあるプレイヤーはオリジナル版楽曲で一周したあと、アレンジ版BGMをONにしてもう一周してみるのを強くオススメします。原作未プレイで今作が初めて、という方は最初からアレンジ版BGMでプレイしてみるのが良いでしょう。
快適な操作性
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筆者がプレイしてまず感じたのは、マウス・キーボードによる操作の快適さです。もともと「敵を狙って撃破する」というゲーム性のため、マウスによる照準操作と非常に相性が良いです。ただ、レティクル表示が原作準拠のため、遠くの敵に当てづらく感じる場面もありました。
また、ショットがボタンを1回押すごとに1発発射となっているので、クリックで指が疲れやすいです。原作通りと言えばそうなのですが、カスタムキーマッピング機能がないので、マウス・キーボード操作の場合は最初から最後までクリックし続けることになります。一周するとちょっとしたクリッカーゲームのような疲れを味わうことになるので、ある程度の覚悟が必要です。
原作の雰囲気を損なったビジュアル
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本作ではプリレンダムービー・ゲーム本編のグラフィックが新たなものに差し替えられていますが、それらはいずれも疑問符のつく出来だと感じました。
プリレンダムービー
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カット割りなどは原作のプリレンダムービーにある程度忠実な一方、キャラクターのアニメーションやカメラワーク、画面内の配色はむしろチープなものに。原作のプリレンダムービーは、当時としては非常に優れた出来のもので、表現に技術的限界があるゲーム本編の世界観を補完する役割を果たしていましたが、リメイク版のプリレンダムービーはその役割を果たせていません。
続編の『ツヴァイ』でもプリレンダムービーを通したストーリーテリングが大きな役割を果たしているので、MegaPixel Studioが現在制作中というリメイク版『ツヴァイ』の出来にも不安が残ります。
ゲーム本編
こちらはクオリティが低いわけではないのですが、原作世界観の解釈の仕方が非常に独特です。一面に広がる水面から水没都市の柱が所々突き出た「EPISODE 1」、砂漠で巨大ワームの脇を飛ぶ「EPISODE 2」、深夜の遺跡発掘所での戦いを描く「EPISODE 3」、青々とした森の遥か上空で帝国の軍艦と空中戦を繰り広げる「EPISODE 4」、殺人的な攻性生物の蔓延る遺跡を駆け抜ける「EPISODE 5」、攻性生物による襲撃を受けた帝国で黒いドラゴンを追いつめる「EPISODE 6」―いずれもセガサターン版と大きく印象・配色が異なっています。以下、リメイク版のスクリーンショットと『SEGA AGES 2500 シリーズ Vol.27 パンツァードラグーン』(2006年、PS2)の紹介画像を比較したものです。原作になかったディテールを付け加えて世界観を強化するのは良いとして、全体的な雰囲気までまるっと変えてしまうのは如何なものでしょうか。
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ゲームクリア後に閲覧できるアートギャラリーを見ると、コンセプトアートの段階からセガサターン版のビジュアルと大きく乖離しているのが分かります。
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またグラフィックに関する設定についても、フレームレート上限が60fpsにロックされていたり、垂直同期のオプションがなくテアリングが多発したり、「ボーダーレスウィンドウ」が用意されておらず「フルスクリーン」「ウィンドウ」の2択だったりと、痒いところに手が届いていない印象です。
25年前の名作シューティングを音楽・操作性の面で現代に蘇らせた『Panzer Dragoon: Remake』。ビジュアル面で原作のエッセンスを捉えられていない部分が筆者的なマイナス点でした。特に新プリレンダムービーのクオリティの低さは、本作の足を大きく引っ張っています。
しかし、シリーズの正当な続編も見込めない、まさに「栄華を誇った文明が滅んで数千年」状態だった『パンツァードラグーン』シリーズに新たな息吹を吹き込んでくれたMegaPixel Studioには、これ以上ない感謝の気持ちでいっぱいです。原作をプレイしていた方、セガサターンを所持しておらずプレイできなかった方、『パンツァードラグーン』発売よりも後に生まれたという方。その全ての方にぜひ一度触れていただきたい作品です。
2020年4月2日の国内向けニンテンドースイッチ版に続き、今回発売となったPC版でもSteam、GOG共に日本語に対応。それぞれ期間限定で、発売記念割引価格の2,313円/22.49ドルで販売中です。公式サイト上ではPS4/Xbox Oneのロゴも記載されており、続編の『パンツァードラグーン ツヴァイ』(1996年 セガサターン)リメイク版の発売も今後予定されています。
タイトル:『Panzer Dragoon: Remake』
対応機種:PC(Steam/GOG.com)/ニンテンドースイッチ
発売日:2020年9月26日
記事執筆時の著者プレイ時間:2時間
価格:2,570円