本日12月6日は日本技術史に大きな足跡を残すであろう、探査機「はやぶさ2」のカプセルが地球に届けられる日です。大きなトラブルに見舞われなければ、本記事掲載時には偉業達成に日本中が沸き立っていることでしょう。先代「はやぶさ」は波瀾万丈の旅路になりましたが、はやぶさ2は至って順調に戻ってきました。トラブルなく計画が完遂されることこそ、技術者にとっては成功といえるもの。今度こそ名実ともに大成功といえる結果が期待できます。
今回の【ゲーム英語漬け】では、『Kerbal Space Program』をはじめとする宇宙を題材にした作品を見ながら、これからあちこちで耳にするであろう宇宙探査に関する言葉を解説します。宇宙の壮大なロマンが手軽に体験できるのはゲームならでは。皆さんも最後のフロンティアへ旅立ってみませんか
(はやぶさ2およびリュウグウ軌道は「Mitaka」を使用して撮影しました)
練習問題の解答
2、豚:約1600万頭
3、鶏:約7億羽
農林水産省の畜産物流通調査より。皆さんが毎日おいしい唐揚げを食べられるのも、毎日200万羽のニワトリさんが捧げられているからなのです。大皿に残った最後の一個も遠慮せず、感謝の意を込めてかっさらいましょう。
Sample-Return Mission(サンプルリターン)
「はやぶさ」および「はやぶさ2」の使命は「サンプルリターン」という宇宙探査の中でも特殊なものです。文字通り「Sample(採取)」して「Return(帰還)」という実に分かりやすい目標ですが、宇宙空間中の微粒子採取を除いて、米ソのムーンレース以来40年近く途絶えていたものです。その理由はハイコストハイリスクで、まず帰還するための余力が必要であること。その燃料を積むくらいなら科学機器をもう一つ載せて送り込んだ方がいい、と考えるのが普通です。
そして何より、重大なトラブルが起こりやすい宇宙探査で「無事に戻ってくる」ことがそもそも奇跡に近いのです。現に初代「はやぶさ」では肝心の採取アクションが起動せず、期間中行方不明になるなど、計画遂行という点では芳しいものではありませんでした。それを考えれば、今回のはやぶさ2は文句の付け所がない素晴らしい成果といえます。
『Kerbal Space Program』では、目的は少々違いますが、小惑星への着地ミッションが体験できます。いざ実際にやってみるとスピードコントロールがかなり難しく、少しでもずれるとあさっての方向に飛んでいったり、小惑星に衝突したり、到着するだけでも困難な行程だと分かるでしょう。現在世界で実行されているサンプルリターン計画は4つあり、中国の「嫦娥5号」は月での採取を完了しており、12月17日に地球帰還を予定しています。こちらもお見逃しなく。
Habitable Zone(ハビタブルゾーン)
はやぶさ2が採取したサンプルは解析にかけられますが、特に注目されているのは「水分子」の存在です。観測によって水分子があることは確認されていますが、実際に持ち帰ってみないとどんな情報を引き出せるか分かりません。
この水分子を調べることは、高度な有機物、ひいては生命が発生するために必要な水がどこから来たのかに繋がります。この宇宙における生命の誕生でキーワードとなるのが「ハビタブルゾーン」です。
ハビタブルゾーンとは、大まかに言えば「地球に近い環境の惑星が形成しうる範囲」で、恒星のエネルギーを受けて液体の水が存在できるエリアのことです。熱量の高い恒星系なら範囲は広くなり、逆に低い恒星なら狭くなります。
『Universe Sandbox』では太陽系や宇宙の天体をいじってシミュレーションを行えますが、太陽の大きさを2倍に変えてみるとハビタブルゾーンは外側に移動し、地球は摂氏70度を超える死の星へ一変します。同時に火星や木星の温度も上昇し、今度はそちらがハビタブルゾーンへ入るのです。
太陽系以外でもハビタブルゾーンの研究は進み、現在では60個の系外惑星がリストアップされ、将来の人類移住候補と目されています。『Sid Meier's Civilization Beyond Earth』はこの系外惑星への移住がテーマであり、発見されている系外惑星をモデルにしたマップで遊ぶこともできます。ただし、最近の研究では木星の衛星エウロパや月など、液体の水が存在する天体が次々に発見され、水の存在できる場所は想定よりももっと幅広いことが分かってきました。今後は生命探査はますます盛んになっていくでしょう。
Extraterrestrial life(地球外生命体)
少々長いですが「Extra(~以外の)」「Terrestrial(地球)」「Life(生命)」で地球外生命体。「トモダチ…」でおなじみの「E.T.」もこの略ですね。これはいわゆる宇宙人に限らず、微生物1体でも立派な地球外生命体です。一昔前は、この広い宇宙で生命に溢れる星は地球だけ、というような極端な考えもありましたが、現在では広い宇宙ならたくさんいるに違いないとポジティブな見方が主流になりました。『Stellaris』ではまさに母星以外の生命を探すところからゲームがスタートします。探査機を他の恒星系に送り込むのは、ゲームが進んでもやっぱり心躍るものですね。
SETI(Search for extraterrestrial intelligence)
こちらは正真正銘の「宇宙人」、地球外知的生命体を探索するミッションです。宇宙の仕組みは、当たり前ですが全宇宙で共通です。人類と同等以上の技術を持った知的生命体なら電波を使った通信手段を使用するだろうという前提で、宇宙人が放った電波をキャッチしようと試みています。同時に宇宙へ向けたメッセージも送信され、その発信元は先日惜しくも崩壊した「アレシボ天文台」でした。
SFアドベンチャー『Outer Wilds』では、かつて存在した宇宙人のメッセージを辿って恒星系を飛び回ります。宇宙人と聞いてロマンを感じるなら迷わずプレイしましょう。
練習問題:次の英文を訳しなさい。
The cosmic object you are looking for has disappeared beyond the event horizon.
こちらの文章はNASA公式ページで404エラーの際に表示される文章です。宇宙関係者は結構ジョーク好きが多いので、隙あらば小ネタを仕込む習性があるようです。