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今から遡ることちょうど15年前、2006年7月13日にPS2ソフト『ペルソナ3』が発売されました。
本作は、今も展開が続く人気シリーズに名を連ねる作品で、多くのゲームファンから関心を集め続けています。個性的で惹かれるキャラクター陣、プレイヤーの心を動かす物語、テンポと手応えを両立したバトル、ペルソナを鍛え上げる育成要素など、その魅力を上げればキリがないほどです。
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発売からこれだけの月日を経てもなお愛され続ける本作が、シリーズの中でどのような役割を果たしたのか、そして未だにリメイクを待望されている理由について迫り、この記念すべき15周年をお祝いしたいと思います。
■シリーズに大きな転換を与えた『ペルソナ3』
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現在、ナンバリングだけでも5作品を数え、追加要素を含めた新バージョンやリメイク、派生作を含めれば、20を超えるタイトルが展開している『ペルソナ』シリーズ。1作目こそ『真・女神転生』シリーズの外伝的作品として登場しましたが、今やアトラスを支える人気シリーズのひとつになるほど成長しました。
近年だけでも、リズムゲームにダンジョンRPG、新キャラや3学期などを加えた『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』や、初のアクションRPG『ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ』と、その活躍は多岐にわたっています。
ですが、『ペルソナ』シリーズは常に安定してリリースされていたわけではありません。1作目の『女神異聞録ペルソナ』が1996年に登場し、続いて『ペルソナ2 罪』『ペルソナ2 罰』が1999年、2000年にそれぞれ発売されました。が、リリースという視点から見ると、ここからなんと6年間の沈黙を挟みます。
ゲーム機の世代としては、この空白期間はちょうどPS2が躍進を果たした時期。さらに、PS3(2006年11月11日発売)の足音も聞こえており、ゲーム業界が目まぐるしい勢いを見せていた頃でもありました。
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新世代の荒波が襲いかかろうとした直前、ようやくシリーズファンの耳に飛び込んだ朗報が、この『ペルソナ3』でした。まず本作はここで、シリーズを継続させる、という大役を果たしたのです。
また、“もうひとりの自分”というペルソナの行使や、学生を中心とした少年少女のジュブナイルといった要素を受け継ぐ一方で、世界観のビジュアルイメージを一新。これまでのダークで妖しげな、それでいて色気のあった作風から、クールでスタイリッシュなデザインと明暗がはっきりしたカラーリングへと大きく舵を切りました。キャラクターデザインが副島成記氏に変わったことも、印象が変わった一因と言えます。
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こうした大きな変化は、シリーズファンを驚かせ、同時に一抹の不安も与えました。ですが、現在まで続く『ペルソナ』シリーズの勢いを見れば、このときの不安が杞憂に終わったことは説明するまでもありません。
もちろん、『ペルソナ』~『ペルソナ 罰』までの雰囲気やゲーム性を好む方もいますし、それは決して悪いことではありません。同時に、『ペルソナ3』が挑んだ転換が、後のシリーズ作に受け継がれ、ナンバリング最新作『ペルソナ5』が大きなヒットを遂げたのも事実。『ペルソナ3』の挑戦が、シリーズにおける今の成功に寄与している点も間違いないでしょう。
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そしてゲーム性においても、本作は数多くの新要素を取り入れました。あくまで一例ですが、代表的なものをいくつか挙げてみます。
・ペルソナの複数所持と付替えは主人公のみに
・敵の弱点を攻めるorクリティカルで発生する「ワンモアプレス」
・コミュニティシステム
・カットイン演出
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文字だけだとあっさり見えがちですが、いずれも『ペルソナ3』の魅力とヒットに貢献した要素ばかり。レベルアップすることで、お気に入りのペルソナへの愛着度も増しますし、ペルソナの付け替えを主人公に絞ることで“特別感”を出すと共に、育成の煩雑化を防いで間口を広げました。全キャラ分のペルソナを作成するとなると、ハードルが一気に跳ね上がるのは容易に想像がつきます。
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そして、『真・女神転生III』の「プレスターンバトル」を取り入れた「ワンモアプレス」は、バトルに戦略性を加え、爽快感と緊張感を両立させる良システムに。また、「コミュニティ」のおかげで、主人公の日常や人間関係を雄弁に表現できます。そしてカットインは、非常にキャッチーで印象に残る演出です。
こうしたゲーム性の改善や一新も好評を博し、『ペルソナ3』は人気作として一躍躍り出ました。さらに、本作の発売を機にシリーズ展開が活気づき、移植や派生作を含めれば、ほぼ毎年のように関連作が発売されています。
もし『ペルソナ3』が登場しなければ──という仮定は言葉遊びに過ぎませんが、本作が果たした役割の大きさを想像することはできます。また、その実績がシリーズに貢献した度合いの大きさは、疑う余地がないほど。だからこそ、この15周年を祝う声がSNSなどに溢れているのでしょう。
■“『ペルソナ3』のすべて”が味わえる、最高の1本が欲しい!
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かつての名作・良作を、「リメイクして欲しい」とユーザーが望むのは、ごく自然な話です。「現行機で遊びたい」「最新技術で作り直したらどうなるのか知りたい」「周りの友達に勧めたい」……理由は様々ながら、その声はいつの時代でも途絶えることはありません。ですが『ペルソナ3』の場合は、やや特殊な事情が含まれます。
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ネタバレなので詳しくは語りませんが、ED曲「キミの記憶」で彩られた『ペルソナ3』のエンディングは非常に印象的でした。そうした背景もあり、続編や新展開を要望するファンも多く、この声に応えて『ペルソナ3 フェス』(以下、P3F)が2007年4月に発売されました。
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『P3F』では、ハードモードや新ペルソナなど、数多くの要素が追加されましたが、その中でも特に大きいのが「Episode Aegis」の存在です。これは、『ペルソナ3』の後日談にあたる新シナリオで、ユーザーが待望した「物語のその後」が描かれています。
要望が叶う幸せな展開は、実は『P3F』に限った話ではありません。時間がもう少し流れた2009年11月に、PSPソフト『ペルソナ3 ポータブル』(以下、P3P)が発売されました。
場所を選ばずどこでも『ペルソナ3』が楽しめる『P3P』ですが、その最大の特徴は主人公の性別が選択可能になった点です。女性主人公という新たな視点で、『ペルソナ3』の物語を楽しめるようになりました。
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主人公が女性になると、キャラクターたちの反応にも変化が見られ、既にプレイ済みのユーザーでも新鮮な気持ちで物語を辿り直すことができます。この刺激的な体験は色濃く残り、派生作が出るたびに『P3P』の女性主人公の登場を願う声が出るほど。ちなみにその願いは『ペルソナQ2 ニュー シネマ ラビリンス』で叶えられました。
『ペルソナ3』の派生作が出るたびに、ファン心をくすぐる新要素を追加。そのため、リメイクが望まれる──という面もありますが、事情はもうひとつあります。実は、『P3P』はそれまでの要素すべては収録しておらず、例えば『P3F』の新シナリオ「Episode Aegis」は未収録。そのため「Episode Aegis」を味わうための手段は、未だに『P3F』のみなのです。
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そして『P3F』では、当然のことながら『P3P』の女性主人公を楽しむことはできません。「Episode Aegis」と女性主人公、この2点を同時に内包する作品は、15周年を迎えた今もまだ存在していないのが現状です。
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「この1本を持っていれば、『ペルソナ3』のすべてが楽しめる!」──そんな1本を、ファンは待ち付けているのかもしれません。もちろん筆者も、そのうちのひとりです。