元ベセスダ・ソフトワークス開発者のJoel Burgess氏が、古くから伝わる『スカイリム(The Elder Scrolls V: Skyrim)』の“キツネが宝物に導いてくれる噂”について語りました。
先日、『スカイリム』の有名なオープニングシーンにおける舞台裏を語ったゲーム開発者の投稿が話題になりましたが、これに触発されたJoel氏が『スカイリム』に伝わる都市伝説的なエピソードで特に好きなものとして、「宝キツネの神話(The myth of the treasure fox)」の裏話を自身のTwitterにて語っています。
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一時期『スカイリム』のプレイヤー達の間では、「野生のキツネを見かけたら、それについていくと宝の山にたどり着ける」という情報が広まっていました。ネットでこの噂を見かけたJoel氏は「誰がキツネにこんなことを?」と非公式に社内開発陣の調査をおこないましたが、誰もキツネに対してプレイヤーを宝物に導く機能は実装していなかったといいます。
調べてみた結果キツネがドヴァキンを宝物の山に導いてくれた原因は、『スカイリム』におけるAIのナビゲーションに用いられる「navmesh(ナビメッシュ)」によるものでした。
Joel氏の簡単な説明によると、ナビメッシュとは目に見えない3Dのポリゴンシートのことで、フィールド上の様々な箇所に配置され、AIにどこに行っていいのか、どこに行ってはいけないのかを決定させています。『スカイリム』のNPCに搭載されたAIは何をすべきか判断した後、配置されたナビメッシュに基づいて経路を決定し行動します。
キツネのAIはプレイヤーと遭遇した場合、基本的に逃げるようにプログラムされており、逃走する際の経路選択にナビメッシュが利用されます。ここがポイントになりますが、キツネのAIがプレイヤーとどれだけ離れられたのか判断する基準は、メートル基準ではなくナビメッシュ基準になるのだそうです。
『スカイリム』のナビメッシュの使い方として、広い荒野では大きなナビメッシュが少数配置され、キャンプや小屋のような場所では詳細に経路を選択させるため小さなナビメッシュが多数配置されています。そのため、キツネはより簡単に離れるためにナビメッシュが多く配置される場所、『スカイリム』の世界に散らばるキャンプや廃墟に向かって逃げていくのだそうです。この仕様が結果的に、キツネはプレイヤーをお宝の山へ導くのと同じことになったのだと語りました。
Joel氏は「少しオタクっぽい話ですが、私はこの話が大好きです。Emergent Gameplay(創発的ゲームプレイ:開発側の想定を超えた遊び方)はデザインされたランダム性という意味でよく使われますが、これは誰もデザインしていない実際のゲームプレイが、重なり合ったシステムの泡立つ釜の中から現れたケースです。それはとても美しいことだと思います。」とこの話を締めくくっています。