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バトルはもちろん、物語にも深く関わる「召喚術」を軸とした世界で、主人公がパートナーや仲間たち、そして召喚獣と共に力を合わせて戦い抜く『サモンナイト』シリーズ。そのナンバリング4作目に当たる『サモンナイト4』が、今からちょうど15年前となる2006年11月30日に発売されました。
初代プレイステーションから始まった本シリーズは、外伝や派生作が展開したGBAやDSにも広がり、最新作『サモンナイト6 失われた境界たち』ではPS4にも進出するなど、多彩な活躍を遂げてました。
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本シリーズのナンバリングは現在6作品まで出ていますが、『サモンナイト4』はちょうど折り返してからの作品。また、ナンバリングでは最後のPS2作品でもあります。(シリーズ全体では、『サモンナイト グランテーゼ』がPS2向け最後の作品)
シリーズのターニングポイントを飾った本作は、これまでの魅力をどのように受け継ぎながら、如何なる独自性を放ったのか。このたび迎えた15周年を記念し、本作の特徴などを振り返ってみたいと思います。
■ゲーム性は着実な進化を見せ、主人公とパートナーを通して「家族と成長の物語」を描いた『サモンナイト4』
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『サモンナイト』ナンバリングシリーズのジャンルは、複数のユニットを駆使して戦術的思考で戦うシミュレーションRPG。バトルでも「召喚術」が勝利の鍵を握っており、本シリーズならではの手応えを味わえます。
初代から『3』までの前3作で、本シリーズの基本的なゲーム性が確立されていきましたが、この『サモンナイト4』では更に正当進化を果たし、強敵との緊迫感のある戦いと勝利する達成感を絶妙なバランスで表現しています。
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バトルの基礎的な部分を受け継いでいるため、驚くほど変化した点などはありませんが、出撃して直接戦うユニットのほかに、特定のサポートで味方を援護する「サポート能力」や、気に入った召喚獣を設定すると使い勝手が上がる「お気に入り召喚獣」といった新要素を追加。より多くのユニットに役割や活躍の場を持たせたり、推したい召喚獣をより活躍させられたりするのが、シリーズファンとして嬉しいポイントでした。
ですが、ファンの心を特に揺さぶったのは、主人公たちの魅力や、彼らを通して描かれた物語の数々でしょう。まず主人公は『2』や『3』と同様に、男女の選択が可能。ですが、立ち位置や在り方は『4』独自の路線を見せています。
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過去作の主人公は、現代世界から召喚された初代『サモンナイト』、「蒼の派閥」の見習い召喚師としてスタートする『2』、元軍人で家庭教師の『3』と、いずれも特殊な立場。ですが本作の主人公は、ささやかな宿屋兼食堂を切り盛りする少年or少女に過ぎません。平凡とまでは言いませんが、これまでのシリーズ中で最も“日常”に近い立ち位置です。
そんな主人公が出会ったのは、なんと生まれたばかりの「竜の子」。懐かれてしまった主人公は、まだ若い身の上ながらも“親”として、この竜の子を守りながら成長を見届けることになります。
主人公が、パートナーや相棒的な立場のキャラクターと対になるのも、本シリーズ定番の展開。例えば『3』では、教え導く相手として「生徒」がおり、「ナップ」「ベルフラウ」「アリーゼ」「ウィル」の4人から選ぶ形でした。
その立ち位置に近いのが「竜の子」で、作中の選択肢によって「リューム」「コーラル」「ミルリーフ」のいずれかに変化。複数の中から特定の誰かを選ぶのではなく、プレイヤーの動きによって姿や性別が決定します。これも、親の影響を受けて子供が成長を遂げる──という表現の一環なのかもしれません。
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まだ少年少女に過ぎない主人公ですが、その生い立ちや既に独り立ちしてるも同然の暮らしのためか、年齢以上に大人びた面を持ち、竜の子の親代わりをしっかりと果たします。無論、“非の打ち所のない親”とはいきませんが、最初から完璧な親なんてそもそも存在しません。
子供が生まれた時に親も最初の1歩を踏み出し、子供が成長するにつれ、親も同じ歩みで成長する。これを普遍的な親子の関係と呼ぶならば、主人公と竜の子の関係もまさに親子そのもの。人によって見方は変わるかと思いますが、この『サモンナイト4』の物語は、家族を描く一面があるとも解釈できます。
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個人的にその象徴と感じたのが、いわゆる“悪堕ち”とも呼べる「カルマエンド」が存在しない点です。初代も含めた前3作は、プレイヤーの選択やバトルの結果などの積み重ねにより、「カルマエンド」へ分岐する可能性があります。世界を救う主人公であっても、道を踏み外せば魔王になり得る。そんなダークな一面も描写するのが、『サモンナイト』シリーズでした。
しかし本作に限っては、この「カルマエンド」がありません。「カルマエンド」自体は、ルートのひとつとしてファンからの評価も集めていた一要素だったので、「カルマエンド」がないのは残念な点とも言えます。ですが、家族の物語に「カルマエンド」はなくていい──そんなメッセージだったのではと、筆者個人は解釈しています。
ちなみに、シリーズ全般に深く関わり、本作のシナリオや設定も手がけた都月狩氏が、自身のTwitterアカウントにて『サモンナイト4』のカルマルートに関してコメントしています。ネタバレになるので直接の紹介は避けますが、要約すると「あまりにエグすぎるために断念」のこと。
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その発言から、筆者の解釈が的はずれなのは明白ですが、シリーズを通しても珍しい構成や切り口のおかげで想像が自然と膨らみ、そこを自由に埋められる素材がたっぷり用意されているのが、『サモンナイト4』が持つ魅力のひとつ。その証左の一例として、前述の戯れ言を受け止めていただければ幸いです。
この他にも、歴代の主人公が使えた「誓約の儀式」による召喚術の作成が出来なかったり、召喚ランクも極められなかったりと、本作の主人公は異色な面が目立ちます。そんな、日常に根ざす宿屋の主人が、竜の子を守り、世界を救う。そこに家族の在り方を描きながら。
そんな『サモンナイト4』の作品性に惹かれた方は多く、この日を祝う言葉がSNSなどに飛び交っています。もし時間に余裕がある方は、タイトル名で検索してみてはいかがでしょうか。