オーストリアとドイツに拠点を持ち、ゲームパブリッシャーとしても有名な「Koch Media」ですが、そちらの名前にピンとこなくても同社の一部門でもある「Deep Silver」を有している…というとわかる読者も多いのではないでしょうか?
パブリッシャーの顔も持つ同社ですが、2021年12月4日より開発部門「Deep Silver FISHLABS」からスペースコンバットADV『CHORUS』がPC向けに発売されました。
今回、Game*Sparkでは2月10日よりPS5/PS4(PS Store、Amazon)向けに発売された同作について、Deep Silver FISHLABSのスタジオ・クリエイティブ・ディレクターであるマレク・ベレカ氏にインタビューを行いました。
※Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Steam、Epic Gamesストア)版は3月中旬実施のアップデートにて日本語対応予定です。
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過去の系譜からどう差別化するのか、『CHORUS』
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ーー本作の制作が開始されたきっかけを教えて下さい。FISHLABはDeep Silverのグループに加わる前からオープンワールドのスペースコンバットタイトルで知られていた開発チームですが、そこも影響していたのでしょうか?
マレク・ベレカ(以下マレク)Deep SilverがハンブルグのFISHLABSのスタジオを引き継いだ大きな理由のひとつが『Galaxy on Fire』シリーズであることは確かで、以降のプロジェクトもこの系譜から生まれています。一方で、「GoF」シリーズに携わっていたスタッフの大半は数年の間に退職してしまっていたので、『CHORUS』に着手する際には、過去作で実績のある部分を利用すると同時に、どう差別化するかを模索するようになりました。
今回メジャーなコンソール機をターゲットとしたのはまた別の理由で、本格的な雰囲気や、短時間のゲームプレイでも興味を引けるものを当時必要としていたためです。
こうした背景によって、幸先のよいスタートを切り、安全に実験的な試みも行うことができたわけです。
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ーー本作の基本的なゲーム構成・進行についてわかりやすく教えて下さい。
マレク本作は、主人公であり戦闘パイロットのエースであるナラの物語です。ゲームの序盤では、彼女は残忍な罪を犯したために流浪の生活を送っており、過去と自分を結びつけるすべての物事を否定しながら、自分の行いを悔い改めようと努めています。このことがプレイヤーにとって意味するのは、序盤のゲームシステムはやや制限されており、ナラが影から一歩踏み出すとともに時間をかけて、徐々にできることが増えていくということです。
その後、ナラは人工知能を持つ戦闘機の相棒、フォーセイクンと再会し、最終的には自身の超能力も取り戻すことができます。この超能力は、従来的な武器と連携した戦闘機のアップグレードシステムとともに、彼女の戦闘手段の骨組みを形作っていきます。
終盤のナラは、戦場を飛び回り、時空をも歪め、弾丸、レーザー、ミサイルをあらゆる方向へ掃射して列車のように敵機の間を駆け抜けていく―フォーセイクンとシンクロした生ける兵器へと進化していきます。この体験の核となる活力は熱狂的なアクション&動きですので、これらをマスターしたプレイヤーは、どんな戦闘状況においても、渦中にある感覚や興奮を得ることができるでしょう。
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ーー女性主人公を採用した理由は?プレイした範囲でのナラのパーソナリティは過去の戦場のトラウマに苦しむ兵士であり、そこにはどちらの性別である理由も感じませんでしたが、そうしたのにはなにかの深い考えがあるのでしょうか。
マレクその理由は決して性別に起因するものではなく、いかにコントラストを描くかという問題にありました。これは実際、最適な形でゲーム内に表れています。ナラが持つトラウマの詳細を描き出し、『CHORUS』の世界観を形成する過程で、私たちは多くの要素を対比によって明確に区別しました。その中でも、女性を主人公としたのは、特に象徴的なことだったと思います。
彼女は、序盤では声に出すことはできずとも、心の中で己にささやき、共感をすることでトラウマに対処しています。つまり彼女が、自身の内なる強さを生かし、内面から問題を解決できる女性であることを表している。
その根底にあるのは、ゲーム全体に通底する、相反するものを統合して調和を図るという課題です。これはフォーセイクンを相棒として据えた理由でもあります。ナラとフォーセイクンは衝突したこともありましたが、最終的には非常にポジティブな形で調和し、落ち着いています。
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ーー一般的なオープンワールドのスペースコンバットタイトルと異なり、操縦する船についてただ一隻の「相棒」を主体としたのはそこにどのような魅力があると感じたからでしょうか。
マレクフォーセイクンとの関係性は、ゲーム全体の物語の核となるもので、広い視野でみればふたりともが主人公だと言えます。複数の「仲間(船)」を作ることもできましたが、それでは異なる物語となっていたでしょう。また、ゲームの納品や制作の重さの観点から言えば、チームの規模や開発期間を考慮した際に、越えられない壁がありました。
ーー一般的なオープンワールドのスペースコンバットタイトルでは採掘であったり、生産であったりと、行えるアクティビティの多さがそのまま魅力とされることが多いが、本作ではそのようなスタイルを取らず、各地で行えるサブクエストを中心とした構成にしたのはなぜでしょうか。
マレク私たちはサバイバルやクラフトを含めた、シミュレーションの類のものは決して作りたくありませんでした。これらも本質的には面白い要素ですが、私たちが最も重視したのは飛行とアクション。スピード感や素早い操作感を取り入れたかったので、減速させるような要素は私たちのゴールとは正反対だったのです。また、スポットライトが当たらない箇所すべてにインタラクティブなミニゲームを用意していたら、その唐突な存在によってゲームプレイが分断されてしまいます。
一方で、サブクエスト、特に完全に任意であるものについては、ゲームの世界観を豊かにし、自然な形でテンポを緩めることができる要素です。これは他の要素では得られないものだと思います。また、各プレイヤーはサブクエストにがっつり取り組むかどうかを自分で選ぶことができます。私たちの進むべき方向性はこれでした。
ーー本作の戦闘バランスはかなり「ソウルライク」チックなものです。こうした理由について教えて下さい。
マレク技術が重要視されるアーケードアクションを目指していたため、シンプルで親しみやすいということを戦闘面の核として考えていました。「学ぶのは簡単だがマスターするのは難しい」というのは非常に使い古された言葉ではありますが、この本当の意味を理解している人なら、きっと『CHORUS』を気に入ってくれるでしょう。
戦闘をしっかり楽しむためには、コアとなる仕組みをいくつか学ぶ必要があります。そうすれば、数々の動きやアビリティ、インタラクションを自然に身につけることができるはずです。完璧にマスターしようと思えば可能ですが、簡単ではありません。数々の操作をマスターすることはゲームをクリアするのに必須ではありませんが、できるようになれば、ほとんど不可侵の領域に達し、非常に満足感を得ることができるでしょうね。
プレイ中に急に難易度が上がったと感じるときには、必ず自分がマスターできていない要素や能力があるはずです。こうした難易度の上昇は、プレイヤーのスキルを試すために用意しています。その後には、熟練したスキルが必要となる局面が待ち受けていますから。
一方で、デフォルトの設定に難しさを感じるプレイヤーは、難易度を下げることも可能ですよ。
ーー本作で楽しめる最もエキサイティングなドッグファイトのシークエンスについて可能な範囲で教えて下さい。
マレクネタバレなしに回答するのは難しい質問ですね。なるべく最小限にとどめてお答えすると、大中小さまざまな戦闘機が互いに戦うような類の艦隊戦は、最も壮絶なシーンです。砲撃、混乱、爆発の中、ナラは宇宙における狩りの女神となって飛び回り、敵を一網打尽にするのです。
世界観や設定―超能力や黒魔術の舞台を宇宙に移したら?
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ーー本作のゲーム部分において特徴的なのは、乗っている宇宙船自体にすら影響を及ぼし、まるで有名ロボットアニメの主人公機のごとく短距離の量子ワープまで行える、恐るべきナラの超能力です。このアイデアは何処から出たのでしょうか?
マレクもちろん、アイデアというものの多くは、過去の作品と同じようなルーツを持つものです:)
私たちの場合、こうした超能力のアイデアは、非常に才能に恵まれた人物が、スペースコンバットでいかにその能力を活用することができるかという点に着目して生まれたものでした。
自分たちの知る著名な物語に登場する超能力や黒魔術の例をもとに、宇宙に舞台を移した場合、これらがどのように表現されるかを考えました。本作のようなシナリオにおいて、「半神」となった場合に、私たちはどう感じるだろうか?と。
操作方法としての超能力、ハイテクな機械ではなく感覚的なものに基づく意識、存在そのものに繋がるさまざまなエネルギーの流れ、そして説明するのは難しいが才能のひとつとして使うことができる時空を超えた宇宙。こういったものたちからアイデアが生まれてきました。
ーー本作のプレイヤーに、本作を通じて感じてほしい物語や感情の動き、楽しんで欲しいゲーム部分があれば教えて下さい。
マレクナラとフォーセイクンの関係性の発展については体験していただく価値がありますし、フォーセイクンがどのような存在なのかを理解することも、ゲームのストーリーそのものを理解する核となると思います。もちろん、ナラが力を得て己を解放していく姿も、序盤の彼女の姿とは対照的で、体験していただくに値する部分だと思います。
ーー最後に本記事を読む読者へのコメントをお願い致します。
マレク本作は私たちのためではなく、本記事を読んでくださっている皆様のためにあります。皆様がいてくださるからこそ、私たちはこのようなゲームを開発することができるのです。チーム全体が多くの時間と愛と汗を注いで、本作を作り上げました。あなたが私たちの開発したゲームで過ごしてくださる1分1秒を光栄に思っています。
ゲーマーの皆さん、コミュニティの皆さん、そしてDeep Silver Fishlabsの仲間たちへ、感謝申し上げます :)
――ありがとうございました!
『CHORUS』はPS5/PS4(PS Store、Amazon)/Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Steam、Epic Gamesストア)向けに配信中。価格はPC版が4,380円(税込)、コンシューマーダウンロード版が4,378円(税込)、PS5/PS4向けパッケージ版は3,980円です。また2月10日の配信に合わせてPS5/PS4版が日本語に対応します。
※Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Steam、Epic Gamesストア)版は3月中旬実施のアップデートにて日本語対応予定です。
コンシューマー版発売記念!プレゼントキャンペーンを実施
『CHORUS』コンシューマー版の発売を記念して、キャンペーン期間内に対象アカウントをフォローし、該当ツイートをリツイートした方から抽選で1名様に『CHORUS』PS4版コードをプレゼント!ぜひご応募ください!
キャンペーン期間:2022年2月17日(木)午後0時~2022年2月24日(木)午後0時まで
応募方法:Game*Sparkの公式Twitter(@gamespark)およびKoch Media 日本公式(@KochMediaJP)をフォローし、【Game*Spark×Koch Mediaプレゼントキャンペーン】と記載されたツイートを応募期限内にリツイートしてください。
当落確認方法:当選者の方にはTwitterダイレクトメールでご連絡します。
注意事項:ダイレクトメールが開放されてないフォロワー、非公開状態のTwitterアカウント、また当社が不正な応募と判断した場合は当選対象外となりますのでご注意ください。