11月8日には日本で皆既月食、つまり「Bloody Moon」が見られるという絶妙なタイミングで発売された『ベヨネッタ3』。ディザスター映画級の荒唐無稽は相変わらず健在で、召喚にフォーカスした本作では巨大召喚獣大決戦の様相を呈しています。
本シリーズの魅力で欠かせないのが戦闘の合間にある小粋な会話の数々で、田中敦子さんの日本語吹き替えももちろん素晴らしいのですが、英語の粋な台詞回しにも独特の楽しさがあります。日本で馴染みのない口語表現も多数盛り込まれているので、日本語版と比較しながら見ていきましょう。
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英語版
Damn it! I know it’s the same shit with her every time, but she still gets me by the short and curlies!
日本語版
まったく…あいつにかかわるとロクなことにならねえってのに
どうして俺はすぐ弱みを握られちまうんだ!
“Get ~ by the short and curlies”で「~を従わせる」「弱みを握られる」の慣用句。語源を調べると「下」の方が俗説で出てきますが、本来は首回りの襟足のことを指しているようです。
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英語版
You know, I really love New York.
But ill-behaved tourists can be quite a pain!
日本語訳
私ニューヨークが好きなのよね
でも行儀の悪い観光客にはムカつくのよ!
日本語版
私、結構この街気に入ってるのよ
下品なパーティーは他でやって頂戴!
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英語版
Playing the good Samaritan, Rodin?
How dreadfully noble.
日本語訳
「善きサマリア人」のフリかしら、ロダン?
ずいぶんと気高いこと
日本語版
あんたが私たちを助けてくれるなんて 気でも違ったの!?
こちらはキリスト教の聖書に由来する表現。見ず知らずの人を私利に関係なく助けた「ソマリア人」のたとえ話から、ボランティアや救護活動に関わる語として「The good Samaritan」が使われます。アメリカの法律用語にもなっており、重要表現の一つとして覚えておきましょう。
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英語版
Like runnin’ thinly sliced wagyu beef through a grinder to make a big ol’ juicy burger.
日本語訳
和牛のスライスをミキサーにかけて上等なハンバーガーを作るようなもんだ
日本語版
薄くスライスされたハムを細切れにして……
でかいミンチの塊にするようにな
食べ物の表現は違いがよく出ます。輸出されたブランド和牛肉は「Wagyu」でそのまま通じるほど認知されました。
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英語版
Well, since solitaire in a literal man cave isn’t exactly riveting―
I suppose I’ll be your chaperone. That will help restore some sanity, right?
日本語訳
こんな「男の洞窟」でカード遊びしても退屈だし―
あなたのお守りをしてあげても良いわ それでこのイカレ具合が元に戻るんでしょう?
日本語版
こんな辛気くさいところにいてもカードくらいしかやることないわけだし―
行ってあげてもいいわよ それでこのくだらないバカ騒ぎが終わるならね
「Man cave」はアメリカでよくある「男の趣味部屋」のことですね。家の内装全般は妻が仕切る代わりに、ガレージにバイクやスポーツなどの道具を揃えてくつろぐという、ドラマでよく見る光景です。
後半の「Chaperone」は、上流社交界において若い女性にお目付役として付き添う従者のこと。こういういかにも「レディ」な表現がベヨネッタらしいです。
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英語版
Carelessness will get your tail snipped, kitty.
日本語訳
油断すると尻尾を切られちゃうわよ キティ
日本語版
油断は大敵よ 覚えておきなさい キティ
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英語版
Glad Bayonetta wasn’t here to see that...
“You’ve only got nine lives, kitty!”
日本語訳
ベヨネッタに見られなくて良かった…
「あなた9つしか命がないのよ キティ!」とかな
日本語版
こんなところ…ベヨネッタに見られたら 何を言われるか…
英語ではネコにまつわることわざが数多くありますが、その中のいくつかは“A cat has nine lives”、「ネコに九生あり」という言い伝えを下敷きにしています。ネコは高所から飛び降りても平気で、なかなかしぶとい人、ピンチに強い人を指してこのことわざを使います。英文学に於いてもこのイメージはよく使われ、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」では“Good King of Cats, nothing but one of your nine lives”「猫王よ、その命の1つだけでも分けてくれないか」という台詞があります。
ここから派生したのが“Curiosity killed the cat”(好奇心はネコをも殺す)で、無闇に首を突っ込めばネコの9つの命も使い果たす、つまり命がいくらあっても足りない危険を表します。ただし、このことわざの元は“Care killed the cat”(心配はネコをも殺す)だったようで、心配しすぎは身体に毒だからやめましょう、ということでした。
ネコに関する表現でもう一つ、『ベヨネッタ』と関連があるものと言えば「チェシャ猫」。「不思議の国のアリス」に登場する象徴的なキャラクターですが、それ以前から“Grin like a Cheshire cat”という慣用句があり、ルイス・キャロルはここからあのチェシャ猫を創造しました。しかし、その前の「チェシャ猫」が何を指していたのかは分かっていません。
『ベヨネッタ』では最初にルカが「チェシャ」とあだ名を付けられていましたが、『3』では新キャラクター、ヴィオラに付いている召喚獣として登場します。果たしてどのような繋がりがあるのでしょうか…?
おまけ
田中敦子さんの歌唱あり! パチスロ版ベヨネッタサウンドトラック