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海外では1974年の登場以来、50年近くにわたりTRPGのトップとして走り続けてきた『ダンジョンズ&ドラゴンズ』。日本でもついにウィザーズ・オブ・ザ・コースト自身による展開が開始された同作のサードパーティ向け無料ライセンスをめぐり、大きな議論が巻き起こっています。
ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは、TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のオープン・ゲーム・ライセンス(OGL)改定について延期することを発表しました。
OGLは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のゲームシステムを広範に無料で利用するためのライセンスであり、これに基づいてRPG『Pathfinder』シリーズの原作であるTRPG『パスファインダーRPG』などが世に出ていました。ほかにもOGLをベースとしたコンピューター向けソフトも多くが作られており、『D&D』のコンパニオンアプリ的なものだけでなく、『Low Magic Age』などの単体のコンピューターRPGも知られています。
今回議論を巻き起こしたのは1月の初めにリークされた、このOGLの改定版となるOGL1.1のドラフトです。OGL1.0が2000年にリリースされて以来の大幅改定となったこのOGL1.1ドラフトでは大まかに下記のような内容が含まれ、それが多くのユーザーや開発者からの懸念を招きました。
ライセンスの適用がTRPGに限定されることが明言(それ以外は別途個別契約となる)
成果物の収益が750,000ドル(約9,500万円)を超えた場合ロイヤリティ支払いが発生
OGL1.0の認可を取り消す
この動きに対し、上記『パスファインダーRPG』を手掛け、OGL1.0の制定にも深く関わったPaizoが、特定の企業の動向にオープン性が依存しない、OGLの精神的後継者となる新たなライセンス「Open RPG Creative License(ORC)」と、将来的にORCをベースとしたルールへの移行をAzora Lawを通してアナウンスしたほか、他のOGL利用企業もOGL1.0同様のオープンな理念を掲げた独自ルールセットの製作に着手し始めるなど、リーク後の約1週間で反発は強まり続けていました。
こうした結果としてウィザーズ・オブ・ザ・コーストがとった対応は、この改定を延期するというものでした。発表ではそもそもの改定の目的は差別的な製品に利用されないようにすること、TRPGでの利用に限定してweb3・ブロックチェーン・NFTに対処すること、OGLがコミュニティのためのものであって大企業のためのものではないと示すため、の3つであったと説明しています。
同社はロイヤリティは大企業を対象としていることや、OGLはTRPGのコンテンツのみをカバーしていること、過去のライセンスでリリース済みのものは影響を受けないことを重ねて説明。その上で、新しいOGLのリリースを一旦取りやめたとし、この決定について「声を聞いて計画を変更したので、彼らが勝って私達が負けたという声を聞くかもしれませんが、それは半分正解です。彼らが勝って、私達もまた勝ったのです」との言葉を付け加えています。
最終的にこの一連の流れがどこに着陸するかはいまだ不透明です。
※UPDATE(2023/1/14 21:35):OGL1.1のドラフトがリークされた日付を修正し、あわせて文章の一部も修正しました。コメントでのご指摘ありがとうございました。