「オズの魔法使い」ライマン・フランク・ボーム
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イギリスが「アリス」であれば、「オズ」はアメリカで生まれた初めてのおとぎ話と言って良いでしょう。1939年のミュージカル映画版の「Over the Rainbow(虹の彼方に)」は名曲として今でもよく演奏されます。関連作「ウィキッド」がモデルのポスターが冒頭の看板にありますね。カンザス州に住んでいたドロシーは竜巻に見舞われ、家ごと未知の世界に飛ばされてしまいます。
そこは「オズ王国」の中にある小人のマンチキンの国で、支配していた悪い「東の魔女」は飛ばされた家の下敷きに。魔女退治をした英雄としてマンチキンに迎えられたドロシーは、そこにやってきた「北の魔女」から「エメラルドの都にいる魔法使いに頼めば願いが叶う」と教えられ、家に帰るために道中で出会うカカシ、ブリキの木こり、ライオンとともに都を目指します。
都で魔法使いに会えたものの、魔法使いからは「悪い西の魔女を倒せば叶えよう」と言われ、一行は2人目の魔女退治に向かう……というのが途中までのあらすじです。
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お分かりの通り『FORSPOKEN』の世界に大きな影響があり、アーシアを治める4人の魔女「タンタ」は、本作に登場する東西南北それぞれの魔女そのまま。英語版ではシパールの少女オリヴィアに「マンチキン」とはっきり言っています。
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この中で重要アイテムとして出てくる魔法の靴(原作は銀色、映画版はルビー色)はかかとを3回鳴らすと世界中のどこにでも行ける力を持っています。サイラを倒した後の会話でも言及がありましたね。「アリス」と同じく日常で使う引用も多く、“We're not in Kansas anymore.”(ここはカンザスじゃない)、”There's no place like home.”(やっぱりおうちがいちばん)は海外ドラマでも聞いたことがあるはずです。
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以上の3作品に共通するのは「家に帰る」という目的で物語が進んでいく点です。異世界に飛ばされた孤独感や故郷を思い返す場面など、これこそファンタジーの王道であり、『FORSPOKEN』の物語はそれを踏襲していると暗示しているのです。
魔法の靴という言葉にときめきを感じる人は、是非一度英語表示にトライしてみてください。「フェアリーゴッドマザー」など日本語にはない具体的な比喩が出てくるので、おとぎ話の雰囲気をさらに楽しめるでしょう。
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