冒頭や射的場で華麗なフラメンコを奏でているのは、日本でスパニッシュギターの第一人者である沖仁氏。玉置浩二やMISIA、葉加瀬太郎などと共演もしているので、どこかで聞いたことがあるのでは?
公式でネタにされてしまった以上、『バイオハザード RE:4』とは最早切り離せなくなってしまった、村人が発するスペイン語の「空耳」。先日惜しまれつつ終了した「タモリ倶楽部」の名物コーナー「空耳アワー」でも、スペイン語歌唱のジプシーキングス(実はフランスのバンド)が常連でしたね。
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スペイン語の発音は英語や中国語、他の欧州語と比較してもかなり日本語に近く、アルファベットの読み方の違いはいくつかあっても、ほぼ記述通りにカタカナ的に読んで普通に通じるくらいです。
スペイン語と同じ綴りであるフランス語の不定冠詞「Un」と比較すると、フランス語が「œⁿ」という日本語にはない「オ」と「ウ」の中間的な発音であるのに対し、スペイン語は「ũn」とはっきり「ウン」と発音します。また英語では「Know」「Debt」などスペルと読みが一致しないケースが多々あるのに比べ、スペイン語ではそういう例外は少ない方です。
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欧州圏の言語には男性名詞と女性名詞という概念があり、スペイン語の場合名詞と形容詞の大半で「オ」か「ア」が語尾に付きます。例えば「よそ者」を表す「Forastero」の場合だと、男性のレオンの場合はそのまま「Forastero」、女性のエイダの場合は「Forastera」に変化、それに形容詞を付けるときには「Bello」「Bella」のように名詞の性別に合わせた形を作ります。そうして語尾が母音で終わることが多いので、子音+母音の形が多い日本語と似た語感になりやすいのです。
寒い気候の北国だと息を使うと体温が下がるので、母音を減らし子音を増やす、逆に温暖湿潤な気候だと母音が強調されていく傾向があります。冬以外は日本とスペインの気温が近いのも影響しているかもしれません。第2外国語で特にこだわりが無く、発音の苦労を避けたいなら、比較的覚えやすくて通じる国も多いスペイン語をお勧めします。とはいえ、文法などは他のラテン言語と共通する部分も多く、そちらは侮らずにしっかり勉強しましょう。
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続いては、空耳でも頻出単語の「Está」「Ahí」に注目します。「どーですか?」と聞こえる“¿Dónde está?”(どこにいる?)は正しく読むと「ドンデスタ」で、語学講座では必ず習う場所を訪ねるための表現です。「Dónde」が場所を尋ねる疑問詞、「Está(原型はEstar)」が「いる、ある」を示す英語のBe動詞と同じようなものですね。前回では同じような「Hay」をやりましたが、人物や場所を尋ねる場合はほぼ“¿Dónde está ~?”を使うので、まずは細かく考えずに「どーですか?」をスペイン語的に「ドンデスタ?」と意識するところから始めましょう。
¿Dónde está la señorita?
そのセニョリータはどこにいますか?
¿Dónde está Krauser?
クラウザーはどこにいますか?
¿Qué tal está Shiro Suzuki?
鈴木史朗さんはお元気ですか?
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レオンが発見されたときに耳にする「あーりえんな!」も、正確には“¡Ahí está!”「アイエスタ!」で先の“¿Dónde está?”とセットにしても良いフレーズです。「Ahí」(アイ)は「あそこ」を表す場所の指示代名詞で、目視できる範囲やすぐに近づける距離の場合に使います。他にはすぐそばや手の届く範囲の「ここ」を指す「Aquí」(アキ)、かなり離れていて向かうのに少し時間がかかるくらいのところを指す「あそこ」の「Allí」(アジ)があり、この3つは何かと便利なので、積極的に使って覚えましょう。アクセントはどれも最後の「í」にあるので、語尾を上げるのがポイントです。
また、“Aquí está!”はお店などで何かを渡されるときに「どうぞ!」というタイミングでも使います。こちらは気軽に使えそうですね。
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Aquí está!(アキエスタ!)
ここにいる!(これをどうぞ!)
Ahí está!(アイエスタ!)
そこにいる!
Allí está!(アジエスタ!)
あそこにいる!
スペイン語字幕を付けても良かったところを、本作では異郷の言語としてホラー演出の一環として機能しています。「分からない」のが恐怖の根源であるならば、理解することがその恐怖を克服することに繋がります。襲ってくる敵も元々は普通の村人、その言葉に耳を傾ければ同情心も湧いてくるかも?