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『Apex Legends Mobile(エペモバ)』が、5月2日にサービスを終了します。この連載も、いよいよ筆を置く時が迫っているのです。筆者自身、楽しみながら記事を書くことができました。しかし、「家に帰るまでが遠足」という言葉もあります。この記事を執筆している時点で、『エペモバ』はまだサ終していません。
最後の最後までこのゲームを楽しむのが、今の筆者の義務。そしてサ終が近づいているからこそ、より気軽に楽しく遊ぶことができるようになりました。
ランク戦は一足早くサ終
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『エペモバ』のランク戦は、ここ数ヶ月の筆者にとってのライフワークでした。というわけで、今日もランク戦にインしよう……と思ったのですが、ここで違和感。あ、あれ? 「ランク戦」の項目がないぞ?
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そう、この時点で『エペモバ』のランク戦は一足早くサ終。あるのは「バトルロイヤル」だけです。う、うえぇ!? ランク戦はもうおしまいなの? こんなことなら、徹夜でもしてギリギリまでランクを上げておけばよかった……。
しかし、バトルロイヤルにはランク戦にはない醍醐味があります。それは「気軽に遊べる」という点です。
何しろ、ランクの左右がかかっているわけではないのですから、野球の練習試合のような感覚で臨むことができます。故に、VCで興奮しながらチームメイトを中傷したり、「何やってるんだよお前ぇ!」と怒鳴ったりする人もあまりいません(筆者はランク戦でそのようなプレイヤーに何度か出くわしました)。
そんなわけで、バトルロイヤルではたとえ失敗したとしても「まぁ、仕方ないか」で済ませることができます。これはゲーム下手クソライターの筆者には最適の環境です!
去り行く友
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それは逆に言えば、『エペモバ』のランク戦が初心者にとってはやや敷居が高かった……ということかもしれません。
『Apex Legends』はMOBAのような「1チーム1キャラ」のルールを採用しています。つまり同じチーム内で複数のプレイヤーが同じレジェンドを使うことはできないわけで、それが原因の誹謗中傷も発生してしまいます。これも筆者が身をもって経験しました。VCが実装されているオンラインゲームは、そうしたトラブルが常につきまといます。
しかし、もはや『エペモバ』は髪の毛を逆立てて競い合うような溶鉱炉ではありません。去り行く友との別れを惜しむパーティー会場のような雰囲気すら感じ取ることができます。
もしかしたら、このような形でサ終するゲームは後にも先にも『エペモバ』だけなのでは……?
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これまでの連載記事でも述べた通り、あるゲームがサ終する大抵の理由は「人気の低迷」です。何年か前までは誰しもがこのタイトルをプレイしているというほどだったのに、今や閑古鳥が鳴く状態。テコ入れも不発で、ついに運営が見放してサ終……という流れは決して珍しいものではありません。
しかし、『エペモバ』は決してそうではないことは誰しもが共有している事実。根強い人気を抱えたまま、人々の思い出の彼方に旅立っていくのです。
記録は史料になる
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筆者はスマホの限られたストレージをどうにか上手く活用し、『エペモバ』のプレイ動画を記録しています。「2020年代にはこんなゲームが存在した」ということを、後世の人々がこの動画と共に語り継いでくれるかもしれません。
これは決して大袈裟な話ではなく、今現在の何気ない光景が数百年後の第一級史料になることは十分に考えられます。たとえば、世界初の商業実写映画は1895年に公開された「工場の出口」という作品。これは仕事を終えた労働者が工場から出てくる場面を撮影した、たった50秒足らずの動画です。
しかしこの作品は、労働者の何人かが自転車に乗っている場面をちゃんと映してくれます。つまり、1890年代のフランスに「自転車通勤している工場労働者が存在した」というわけです。それと同じように、「2020年代の一般人はこういうゲームで遊んでいた」という記録を誰かが残す必要があるはず。
記録は史料になり、史料は遠い未来へ続く道を切り開く道具になります。
「時代の節目」としての『エペモバ』
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何だかんだでこの連載、それなりに長い旅路でもありました。
ライターという仕事は書いてばかりではなく、常にどこかから知識をインプットしなければなりません。かつて筆者が取材した上方落語の桂三輝さん(スロベニア系カナダ人で、文枝師匠のお弟子さんです)から、こんなことを聞きました。
「噺家が話すのは当たり前です。それ以上にあらゆるものを見て、あらゆる話を聞かないといけません」
筆者はサ終に向かう『エペモバ』と向き合うことにより、時代の節目にも触れたような気がします。具体的に書けば「パンデミック終焉の節目」です。もしも今がパンデミック真っ只中の2020年であれば、『エペモバ』のサ終はなかったのではないでしょうか?
巣ごもり需要は、前例のないゲーム需要を生み出しました。しかし、その流れはすでに過去のもの。2023年の今、ゲーム業界は新しい岐路に足を踏み入れました。それを自分の目と耳で確認できたことが、筆者にとっての最大の収穫だったと解釈しています。
ありがとう、我が愛しの『エペモバ』。