■この2023年に、3DSを持ち歩く理由
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会場内で3DSを持っていたのは、2人組の来場者。それぞれ白と赤の3DSを手にしており、しかも起動させて互いに画面を眺めています。
こうした光景は、3DSの絶頂期には決して珍しくはありませんでした。しかし、令和に入って早5年目を迎えた今現在となると、話は大きく変わります。筆者の経験談になりますが、ここ数年はまったく見かけることがなかった姿です。
お恥ずかしながら、筆者も3DSを持ち歩かなくなって数年。家以外で触る機会もめっきりなくなりました。ですがこの令和の時代に、都会の真ん中で、誰かが持っている3DSを見かける日が再び巡ってくるとは。不意をつかれ、驚きが隠せません。
とはいえ、筆者も3DSに長く触れてきましたし、ここが『真・女神転生』のリアルイベント会場と考えれば、3DSを持参した理由も思い当たります。少しお話よろしいでしょうか……と断りを入れ、許可をいただいた後に、早速話を切り出しました。「3DSを持ってきたのは、すれちがい通信のためですか?」と。
“すれちがい通信”とは、3DSに搭載されている機能のひとつで、対応しているゲームを登録したユーザー同士の3DSが一定範囲に入ることで、情報を自動的にやり取りする仕組みです。友人同士でももちろん可能ですが、名前も知らないユーザーと知らない間に交流できるこの機能は、その手軽さやメリットから好評を博しました。
当時、外出中に3DSを持ち歩いた理由のひとつは、この“すれちがい通信”が目当て。ゲームにもよりますが、お得なアイテムや強いモンスターなどをもらえたりと、コミュニケーションのみならず攻略面でも助けになる嬉しい機能です。
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ですが、“すれちがい通信”を活用するには、すれ違う相手の存在が不可欠。自分だけがいくら持ち歩いたところで、3DSを所持した人とすれ違わない限り、“すれちがい通信”の恩恵は受けられません。誰もいないオンラインサーバーに接続してもマルチプレイができない──そんな状況と似ているかもしれません。
今や、誰かとのすれ違いがかなり期待しにくくなった3DS。ですが筆者の質問に、来場者の2人は快く答えてくれました。「はい。すれちがい通信のために、3DSを持ってきました」