筆者はすごく怖がりです。夜、部屋の押し入れの陰とか洗面台の鏡とか天井の木目とか色々気になって、毎晩毎晩震えながら寝ています。寝台の下とか曲がり角とか、見通せない部分の恐怖というのでしょうか?ああいうのがとにかく苦手なのです。
それだけならいいのです。が、住んでいる場所の裏手が山という立地もあって夜中に謎の動物の鳴き声が聞こえるのですが、これがまた不気味で。
鳥なり鹿なり、とにかく正体さえ分かればいいのですが、如何せん相手は暗い闇夜の山の中。何かいるけどよくわからない。正直、あまりいい気はしないものです。
思うに光と闇と音、これはホラーゲームでも重要な要素なのではないかと、現実でもって痛感するところです。
本日ご紹介するのはそんな暗がりからの怪物の息遣いが恐怖をそそるFrictional Gamesの一人称視点ホラーゲーム『Amnesia: The Bunker』です。
ホラーアドベンチャーの『Amnesia』シリーズ最新作となる本作、舞台となるのは第一次世界大戦のとある掩体壕。
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主人公はフランス人兵士アンリ・クレモ。夜間偵察に出かけたまま帰らぬ戦友を訪ねて戦場を歩き回るアンリは、どうにか戦友を発見するものの敵に気づかれ猛攻撃を受けます。そして、砲撃により失神してしまいます。
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その後、一人寝台の上で意識を取り戻したアンリは謎の荒れ果てた掩体壕の中を探索し、そこで重傷を負った兵士を発見します。
彼から銃を託されたアンリは、銃弾を取りにその場を離れたのですが、その隙に兵士は謎の怪物に襲われます。
光を恐れる謎の怪物が闊歩する掩体壕から、果たしてアンリは脱出できるのでしょうか?
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ただでさえ暗くて狭い地下の掩体壕。時折聞こえる砲弾の炸裂音と舞う土埃は、それだけでもビクッとさせられます。
さらに暗闇から時折聞こえる怪物の叫び声に息遣いは、筆舌し難い怖さです。
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戦場の中の軍事施設と聞けば、持ちきれないほどの銃弾薬に手榴弾などの爆発物。「怪物、何ぞ恐るべし」と強気で行けそうですが、そうはいきません。
すっかり荒れ果てたここに残されているのは、ほんの僅かな物資のみ。銃弾1発すら貴重で、ギミックのために撃つのも躊躇するほどです。
それに、頼りの綱の発電機も気を抜けばすぐに燃料切れで止まってしまいます。辺り一面の闇にどこからか響く息遣い。目の前にいるのは自分のような生き残り?それとも…。
時は20世紀初頭のWW1、様々な不便さが怖さを引き立てる!
本作の舞台となるのは第一次世界大戦のとある掩体壕。20世紀初頭という時代設定は、現代からすると非常に不便さが際立ちます。
例えばフラッシュライト。現代なら広範囲を明るく照らすLEDで、電池で動く優れものですが、本作では違います。
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序盤でライトこそ手に入りますが、流石はこの時代設定。なんと糸を引いてフライホイールを回して電気を起こすダイナモライトなのです。
真っ暗闇の中を手探りでとはいきませんから、ジーコジーコと発電してどうにか明かりを確保。でも、あっという間に弱々しく消えてしまいますし、この音に釣られて怪物を呼び寄せる、そんな代物なのです。
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武器だって同様です。現代のようなサブマシンガンやアサルトライフル、みんな大好きRPGなんて便利なものは存在しません。最初の武器はリボルバー銃。一発一発、丁寧に薬莢を抜いては再装填、薬莢を抜いては再装填。気が遠くなる作業です。
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基本的に、本作には1ボタンで簡単にできるアクションなんてものはありません。インタラクティブボタンで扉の取っ手を掴んで、マウス操作で開ける。包帯缶のフタに手をかけて、使用待機状態にしてからアクション開始。銃器のリロードだって、1クリックじゃないのです。
こうした不便さをリアルと考えるか面倒臭さと考えるかはプレイヤー次第。ですが、突発的な状況に反射神経だけで対処できるような作品ではないことだけは断言できます。
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それに物資不足も深刻です。銃があっても弾がなく、弾があっても銃がないという状況はよくあることなのです。とにかく銃弾は貴重で、回復アイテムはもっと貴重。お手軽便利な手榴弾なんてもっともっと貴重で、おいそれとは使えません。ついでに言えば、インベントリも極小で取捨選択にも悩むこととなります。
包帯のための布にしようか、それとも破片手榴弾にしようか、でもこっちのガス手榴弾も捨てがたい…なんて悩んでいると、発電機のガス切れで辺り一面真っ暗闇。ああ。もう!
意外と謎解きはシンプル!でも、あちらこちらにトラップが…
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本作の謎解きは比較的シンプルです。鍵の暗証番号も意外と近くで発見できたりしますし、無造作に置いてある火薬樽で施錠された扉を吹き飛ばしたりなんてのも、結構直感的に解けたりします。
でも、油断は禁物。軍事施設だけあって、アチラコチラにトラップが仕掛けられていますから要注意です。油断していると足元のワイヤートラップに引っかかってエライことになります。それに、その音を聞きつけて怪物が集まってきては擦った揉んだの大騒ぎを始めますから、もうこうなると面倒なことこの上ありません。
オブジェクトは持ち上げて回転させたりもできます。裏側にメッセージが書いてあったりすることもありますから、無思慮にポイポイ投げ捨てていると後で泣きを見ることとなりますよ。
そして一番の罠がセーブシステム。実は本作はオートセーブではないのです。なのであまり遠出するとセーブポイントに帰還するのに苦労することになるので、慣れないうちは近場から探索を進めるのがおすすめです。
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比較的珍しい第一次世界大戦を時代設定とするホラーの本作。流石にシリーズ4作目ともなると恐怖のツボを的確に押さえてきています。
特に緩急の付け方が秀逸です。見知らぬ場所に放り出されるも、重傷を負っているとはいえ生身の人間と遭遇。武器も譲ってもらって一安心ときたところで怪物出現。そしてそのタイミングで点っていた電気が徐々に暗くなって…と、この流れが怖がりの繊細な神経にビシビシきます。
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それに慢性的な物資不足も相まって、怪物が確たる脅威として存在しているのはホラーとしてはGoodかと思います。豊富な火力で怪物相手に殲滅戦とはいきませんしね。
ホラー好きにはオススメの1作です。特に幽霊とか妖怪ではなく、しっかりとした実体をもつ怪物が登場する類のものが好きな人には、イチオシの作品ですね。
なお、現在『Amnesia: The Bunker』の発売を記念して、『Amnesia』シリーズの2作目『Amnesia: A Machine For Pigs』が72時間の期間限定でGOG.comにて無料配布されています。
スパくんのひとこと
ちょっと日中が暑くなってきたこの時期だからこそ、手軽に涼しくなれるホラーを紹介するスパ!WW1という時代設定の下、色々な不便さを噛みしめつつ進めるのが面白い1作スパ!スパ君の代わりにもっと頑張るスパ、アンリくん!弾がない?ならバヨネット掴んで白兵戦スパ!フランス人の大和魂(?)見せるスパ!!
タイトル:Amnesia: The Bunker
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2023年6月6日
記事執筆時の著者プレイ時間:3時間
価格:2,800円