Panicは、Terrifying Jellyfishの手がけるインタラクティブ・フード・アートゲーム『Nour: Play with Your Food』をPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5向けに配信開始しました。
本作は、プレイヤーの食欲をビジュアルやダイナミックなビート、そして遊び心で刺激するよう設計されたという、実験的な作品。「食べ物で遊んじゃダメ!」かつてそう怒られたすべての人へ向けたという本作は、スコアやタイムリミット、リアリズムなどの制約から開放された世界で自由気ままに食べ物で遊ぶことができます。
用意されたステージは20を超え、さまざまな料理やキッチンツール、自動販売機など多くの食事に関わるアイテムが登場。どこか奇妙で不思議な魅力でいっぱいの世界観は、プレイしていくごとにプレイヤーの感覚を刺激してくれます。
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本稿では、不思議な食べ物ゲーム『Nour: Play with Your Food』のプレイレポートをお届けします。
不安なゲーム序盤。すべてを変えたのは「宇宙」
まずはドキュメンタリー番組の冒頭のような雰囲気を出しつつゲームがスタート。Game*Sparkでは、2023年6月に【Steam Nextフェス】で配信された体験版のプレイレポートも掲載されており、筆者も当時それを読んで「変なゲームだなあ」と思っていました。最初のステージは体験版と同じくポップコーンステージから始まります。
今回のプレイで、筆者はDualSenseを使用しました。このステージではポップコーン用の豆が用意されており、対応するボタンを押せば弾けてポップコーンができるというもの。最初はガイドに従っているうちに、気が付けば次のシリアルステージへ。シリアルステージではさまざまなアイテムの出し方や特殊ツールの使い方を学びます。
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グラインダーステージでは、材料を入れてレバーを回すとなんでもミンチになるようです。グミを入れたり、ドーナッツを麺状にしたり、いろいろなミンチを試して「アナログスティックとレバーのシンクロが気持ちいいな」とぼんやりと思っていました。この時点では正直なところ、このゲーム(?)大丈夫なのかな?と考えています。
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フード・アートゲームという触れ込みだし、やはり人によって合う合わないはあるのかな……そう考えた筆者がたどり着いたのはハンバーガーステージ。ここではボタンで卵やお肉などが落ちてきて、好きなハンバーガーを作れます。ここでの新要素は「魔法」で、BGMに合わせてボタンを押すことで上がったテンションで、ステージにさまざまな効果をもたらします。
最初に選べるのは「ダンス」「グラビティ」「フリーズ」の3種類。試しにフリーズを選んだら食材がすべて凍りました。なるほど、こういう遊びもできるのか、と思いつつグラビティを試したのですが、その名の通り重力から逃れた食材が少しずつ空へ昇っていきます。そして、食材のひとつ、目玉焼きはぐんぐん高度を上げ、やがて宇宙へとたどり着いたのです。
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「浮いた……宇宙だ……」この瞬間、筆者の脳で何かが弾けました。このステージのBGMが好みなのもあるのですが、ここからはひたすら食材を呼び、ダンスさせ、ときに凍らせ、すべての食材を掴んで振り回す。ノリの良いすべての選択がビートを生み、一つの世界を作り出し始めたのです。このゲーム面白いぞ!!!
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ラーメン!おにぎり!電子レンジ!すべてはひとつ!
ただひとつの理解で世界の見方が大きく変わる。すでに筆者は宇宙を見たことで『Nour: Play with Your Food』の虜になっていました。そして運命の宇宙(ハンバーガー)の次は、自分で好きなラーメンを作れるステージでした。食材は麺やナルト、ネギ、生肉、餃子と至れり尽くせりですね。
ラーメンステージからは魔法の種類も大幅に増え、ゲーム内にさらなるエフェクトが増えていきます。あらためて説明しますが、本作ではステージごとのBGMがあり、そのリズムに合わせて食材の投与やツール使用をすることで、ゲージが少しずつ溜まっていきます。それがMAXになることで一回魔法を発動できるのです。
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さらにビートがノリまくるとステージ内に謎のクラゲが登場し、自由に踊りながら食材にランダムな魔法を与えます。自分以外の思わぬキャラクターの登場で、盤上はますます盛り上がります。気がつけばクラゲが凍らせたお肉が空に浮き、自分が呼んだ缶ジュースが踊り狂っているのです。
ステージを進めると、“重箱に寿司やおにぎりやカウレベル(『ディアブロ』シリーズおなじみのシークレット)を詰める”、“電子レンジを自由に使う”、“無数のトースターでパンを焼きながらリズムを刻む”など、さまざまな世界が広がっていきます。もちろん、どのステージもBGMや仕掛けが異なり、それを解いていく楽しみもあります。
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ここでふと、最初のポップコーンステージに戻ってみましょう。一度解放された魔法やツールは他のステージでも使用可能になり、遊び方も理解した今では最初はただポップコーンを弾けさせていた世界とは大きく変わっています。すべてはひとつの世界、そう世界はすべて自分だけのおもちゃ箱なのです。
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遊びの幅はどこまでも増えていく
『Nour: Play with Your Food』はスコアやタイムリミット、リアリズムがない作品。ステージは順番に開放されていくのですが、好きなタイミングでステージを離れると次のステージが遊べる、といったシンプルな仕様です。なので、遊んでいるうちにいつの間にかすべてのステージが遊べるようになっていく感じですね。
最後のステージでは、これまでプレイヤーが遊んだ結果が表示されます。このエンディングはオープニング同様になんとも不思議な雰囲気ですが、ゲームをある程度プレイしたことで何かしらの理解ができるようになっていると思います。エンディング後には新要素「くらげパレット」が解放されます。
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このパレットは各ステージに用意されていた一部の食材を、すべてのステージで呼び出せる力を持っています。このパレットをつかいこなすことによって、それぞれのステージに、さらに遊びの可能性が生まれていくのです。
もちろんアーティスティックなこのゲームにもカメラモードは搭載されています。好きに食べ物で遊んでカオスな空間を作るのも、リズムに乗ってどこまでも世界を感じても、最高にフォトリアルな一枚を写すのにこだわっても面白いと思います。はい。すべては自由です。
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ここまで紹介してきた『Nour: Play with Your Food』ですが、とにかく自由そのものというゲームです。筆者が宇宙を体験してからのプレイも、しっかり使いこなせていないツールや魔法があるので、あくまでゲームの一部分でしかないと思います。あるいは、考えすぎてプレイしていることはむしろダメなのかも知れません。
「食べ物で遊んじゃダメ!」かつてそう怒られたすべての人に向けて作られたというゲームではありますが、色々と突飛でシュールな部分もあり、そこまで極端に「食べ物で遊ぶ」という冒涜的・背徳的な雰囲気はあまりないかな、とは思います。もちろん現実世界で食べ物を投げたり燃やしたり、あまつさえ宇宙まで浮かせるのはダメなのですが。
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個人的に特筆したいのは、そのリズム感の良さとBGMが抜群な部分。ステージごとに異なるBGMがあるので、プレイヤーの好きなタイプのBGMが見つかるかもしれません。好きなBGMが見つかり、あとは自由に遊べば、きっとそこに自分なりの楽しさが見つかるでしょう。なるべくヘッドホンなどを使用してノルのがおすすめです。
とは言え、この作品が万人向けかと言われると決してそうではないでしょう。トレイラーなどを見て、音楽や雰囲気が気になった方なら楽しめるとは思いますが、それでも最初は何をして分からないことがあると思います。プレイした先に自分の世界を見つけ出せるかどうか、そこは大きく評価が分かれるポイントになるかも知れませんね。
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不思議すぎるフード・アートゲーム!楽しめるか?楽しめないか?おもちゃ箱にどんな楽しさ、理解、物語を見出すか次第スパ。
タイトル:Nour: Play with Your Food
対応機種:PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2023年9月12日
記事執筆時の著者プレイ時間:7時間
価格:Steam/PS5 1,980円・Epic Gamesストア 1,460円