卵を割ってフライパンに落とし、焼く。「目玉焼き」はそんなシンプルな工程で作れる料理ですが、味付けから焼き方、食べ方までその派閥もさまざま。「美味しんぼ」のネタになったり、漫画のタイトルにもなったりと、シンプルであるからこそ、奥が深い料理なのです。
5月16日にSteam版が発売された『Arctic Eggs』は、そんな「目玉焼き」がテーマのアドベンチャーゲームです。本記事では、いろんな焼き方で目玉焼きを味わいながら、同作に登場する目玉焼きの味を考察し、作れそうなものは実際に作って食べてみます。
目玉焼きが違法になった世界で
本作の舞台は、“鳥”が違法になった2091年の南極。主人公は外の世界に脱出すべく、行商人として違法な目玉焼きを作り歩きます。マップを探索すると、どこか奇妙なキャラクターがたくさん住んでいて、彼らの望み通りに目玉焼きを焼いてあげる必要があります。
操作方法はマウスでフライパンを動かし、くるりと目玉焼きをひっくり返すというもの。物理演算がかかっているため、うまくスナップを効かせるコツが重要です。普通の目玉焼きだけでなく、タバコなどの変なものを入れてくる客もいるため、うまく焼かなければなりません。
やや荒廃し、人々の価値観もユニークなこの世界では、NPCのセリフも見どころ。「セックスなんざ いらねえのよ 政府に毎日 犯されてっからな」「昼間っから飲むのがいいんだ 暗くなる前に泣き終えられる」など、ビビビッと痺れる言葉をさまざまなNPCが発するため、スクショ必至です。
ここからは、実際にいろいろな目玉焼きを焼きながら、ゲーム内に登場する目玉焼きの味を考えてみます。
日本で「目玉焼き」といえば、やはり片面焼き(サニーサイドアップ)を想像する人が多いのではないでしょうか。真っ白な白身にお月さまのような鮮やかな黄身が美しいですね。
シンプルながら、うまく白身を固めるのが難しいところ。しかし弱火でじっくり5分~7分ほど熱を入れれば、黄身はとろっと半熟に、裏面は焦げずにパリッとした焼き上がりになります。一方で、『Arctic Eggs』で作る目玉焼きはほとんどが両面焼き。じっくり火を通してから提供しています。
本作に登場する珍目玉焼きで多くの人の記憶にのこったであろうものは、このゴキ……G入りの目玉焼き。ビジュアルだけで顔をしかめてしまいそうなのでモザイクをかけていますが、かなりリアルです。
食べるなんてとんでもない!とつい思ってしまいますが、公益社団法人JATAFFのサイト(※リンク先に害虫の写真が掲載されているため、閲覧注意)によれば、ゴキブリ食の例は歴史上でそれなりに見られるとのこと。実際に食べてみたというネット上での記事もあり、エビ系統の味がするそう。エビ風味の目玉焼きと想像したら美味しい……のかも……? うーん……。
気を取り直して、ゲームでよく見られる両面焼きを作ってみましょう。こちらはまず片面焼きを作り、焼き目がつくくらい熱したら、フライ返しでフライパンにくっついたところを少しずつ剥がして動かしやすいようにします。
そして、クルッとひっくり返す! 綺麗にひっくり返せた!! ゲームで味わったあの気持ち良すぎる瞬間が現実でもできたことに、ついつい興奮してしまいました。フライ返しを使うのもいいですが、筆者としてはフライパンごとひっくり返したほうが一気に裏返せてラクでした。
完成したものがこちら。端はきつね色にこんがり色づき、油の照りとうっすら見える黄身の姿が食欲をそそります。
焼く時間を少なめにすると、中が柔らかく、割ったときに黄身があふれ出るように仕上げられます。これを余った白身部分で拭って食べたり、ご飯の上に乗せて食べるのが最高です!
本作では、頻繁にタバコを焼くことになります。とあるキャラによれば香り付けに良いらしいのですが、確かに「スモーキーな目玉焼き」は美味しそう。ただ、タバコの煙で美味しくなるのかは謎です……。
本物のタバコを使うと流石に食べられないので、オリオンの名駄菓子・ココアシガレットで代用し、目玉焼きのトッピングとして使ってみました。作中には「タバコ13本目玉焼き」を作らせるお姉さんが出てきますが、ちょっとはその気分を味わえるかも……。ただし、砂糖菓子なので別々に食べることを推奨します!!
なお、両面焼きにはほぼ生に近い状態の「サニーサイドダウン」、黄身が半熟の「オーバーミディアム」、両面しっかり焼きながら黄身のとろみも残す「ターンオーバー」、黄身までよく焼きする「オーバーハード」といった種類が存在します。うーん、めちゃめちゃ奥が深い。
実は、片面焼きにも「ベースドエッグ」というちょっとした発展型があります。これは、卵を入れたあとに蓋をして蒸し焼きにする調理方法。卵全体に熱が回るため、黄身は白身に覆われほどよく火を入れることができます。
筆者は普段から水で蒸し焼きにしています。本記事の撮影用にも水でやろう……と思っていたのですが、本作に登場するビール瓶目玉焼きを見て、ふと「瓶はともかく、ビールで蒸したら美味しいんじゃないか……!?」という発想にいたりました。
といっても、入れるのはちょびっとだけ。あとは蓋をして、残りのビールを呑みながら焼き上がりを待ちます。
完成したものがこちら。謎の出っ張りがありますが、焼き具合は完璧です。気になるお味はと言うと……淡白な白身の味に麦の香りがプラスされて、超香ばしくなっています! 黄身とも相性がよく、かなり美味しく仕上がりました。この焼き方、ハマります。
ちなみに、本作にはビールと瓶、グラスと氷を同時に焼くという超変態的なパートも存在します。ただただ水っぽくなるだけのような気もしますが、ビール蒸しのように案外やってみれば美味しくなるかもしれません。……え? いや、筆者は遠慮させていただきます!
こちらは、銃弾を焼く目玉焼き。これまでのものとは違い何をどうしても食べられなさそうです……。しかし、鍋に入れて一緒に茹でる「鉄たまご」という製品があり、なす漬けや黒豆に入れると色が鮮やかになったり、鍋に入れると鉄分が溶け出したりするそう。もしかしたら、鉄分補給目玉焼きとして栄養目的で食べられるかもしれませんね。
基本的に少量の油で焼く目玉焼きですが、贅沢したいときはぜひ「スペイン流目玉焼き」をオススメしたいです。これはたっぷりのオリーブオイルでにんにくを揚げて匂いを付け、揚げ焼きしながらアロゼ(油をすくって食材にかける調理法)するというもの。
油で揚げ焼きにすることによって白身に気泡が生まれるため、ジューシーな食感に仕上がります。たっぷり油を使うためなかなか頻繁にはできないのですが、一度試してほしい食べ方です。
ただ、『Arctic Eggs』の世界ではなかなか作るのは難しそう……。美味しい目玉焼きがいつまでも楽しめる世界であってほしいですね……!
『Arctic Eggs』は、PC(Steam/itch.io)向けに配信中。本記事で紹介した以外にもたくさんのユニークな目玉焼きが登場するので、ぜひ目玉焼きを食べながら遊んでみてくださいね。
¥517
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)