破滅した世界。死に満ちた場所に残された少女。プレイヤーは彼女を救いたいと思ってゲームに関与する。インディーゲームイベント「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025」の中国We Playブースに展示されていた『Alice's World』は、そんなシンプルなモチベーションを発揮させる、ポストアポカリプスのADVです。
あなたに彼女が救えるのか？「黙れ小僧！お前にあの娘の不幸が癒せるのか？」と山犬っぽい誰かに怒られたりすることはないんですが、オーソドックスなADVでありつつも、ややメタなアプローチが気を引く一作ではあります。
プレイヤーが主人公の少女そのものではない。画面を通して見守る役割である
本作は基本的にはマップを探索しながら謎を解き、先へ進んでいく横スクロール構成のADVなんですが、一点不思議な仕掛けが施されています。プレイヤーは少女アリスを演じるかたちじゃなく、なんとモニターの向こうからアリスを見守っているという立場なんです。
というわけで「この少女から目を離さない。僕の魂ごと話してしまうから」とでも言わんばかりにアリスを見つめるかたちになり……世界が別に破滅してなかったらサーヴィランス(監視者)として小娘を見つめ続けるという「ダメ、ゼッタイ」としか言いようないし学校ないし家庭もないしヒマじゃないしカーテンもない展開そのもの。今じゃ言えない秘密になること必至。
しかしここでは世界は崩壊中。少女は明日生きられるかわからない。そんな状況マジでショックです、でも助けられるなら（監視は）OKですというゲームなわけですね。
まあこう説明しているんですが、コントローラーで普通にアリスを操作できるんですね。基本的にはアリスを操作してマップ上のオブジェクトを探索したり、アイテムを見つけてパズルを解いたりするという、海外のポイント＆クリックADVに近い形式ではあります。「プレイヤーがモニターから観察している」というシチュエーションは、チャットやイベントシーンでの選択肢に限られています。
「いや、それならプレイヤーとはなんだ？プレイアブルなキャラとの同一性が若干ずれるならば、プレイヤーは誰になるんだ？」と思った読者！……あなたはゲーム研究の素質がある！立命館大学の映像研究科に行け！ ゲーム研究の分野で著名な方が在籍しており、「プレイヤーとは何か？」みたいな素朴な疑問からビデオゲームとは何かについて考えることができまして……。話がずれました。
日本のADVやツクール製ホラーゲームにも影響された一作
それはともかくとして、作中には『シュタインズ・ゲート』のオマージュと思われるセリフもあるなど日本のビジュアルノベルをしっかりプレイしている雰囲気も。
現在、中国のビデオゲームシーンはスマートフォンのAAAタイトルから少人数開発のタイトルを見ても、かなり欧米や日本のゲームを研究して取り入れていることが多いと思うんですが、おそらく本作もそうした努力が見当たりそうです。開発公式のニュースリリースを読むと「日本のRPGツクール製ホラーゲームからインスピレーション」を受けているなど、かなりいろんな文脈が混ざっている一作じゃないかと思いますね。
『Alice's World』はSTEAMのニュースリリースによれば2025年の第2四半期（7月～9月頃）の発売を予定。本編では「アリスを意図的に死なせることもできる」とか「選択次第でアリスがプレイヤーに抱く印象も変化する」など不穏な要素が満載。プレイヤー！ お前にのあの娘の不幸が癒せるのか？
