3月8日から9日にかけて、吉祥寺という街全体を大胆に使うゲームフェス「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT2025(TIGS2025)」が開催されました。
本稿ではそんなTIGS2025の模様をお届け。今回はAcrobatic Chirimenjako(アクロバティックチリメンジャコ)と集英社ゲームズがタッグを組み手掛ける『シュレディンガーズ・コール』レポをお届けしていきます!
◆「もしもし」…人類最後の“聞き手”という特異な世界観に没入してしまう『シュレディンガーズ・コール』

さて、『シュレディンガーズ・コール』が出展されている集英社ゲームズブースには、本作の他にも先日リリースされ人気を博している『都市伝説解体センター』や『ANTHEM#9』なども出展されており、賑わいを見せていました。『シュレディンガーズ・コール』試遊のための整理券も早々に無くなるという大盛況っぷりです。

集英社ゲームズの肩に話を伺ったところ、基本的には以前行われたデモ版と同一ですが、開発での進捗はローカライズの追加などが挙げられるということを教えてもらいます。『都市伝説解体センター』でも10を超える言語が実装されていましたが、『シュレディンガーズ・コール』でも世界市場での展開も視野に入っていそうですね。

まず、実際にプレイして感じた点を先んじて述べると、「『シュレディンガーズ・コール』は間違いなく特殊なゲーム体験をさせてくれる一作」ということ!

本作の主軸にあるのは電話とネコと、主人公のメアリだけです。『シュレディンガーズ・コール』は主人公のメアリをのぞき人類のすべてが消滅した世界で、電話越しの“話し相手”になるという物語。つまりこの「電話」「ネコ」そして「メアリ」という要素が、本作のベースになるのでしょうか。絵本のようなビジュアルですが、メアリの冷静な面持ちがミステリアスな雰囲気を出してくれます。

そういうわけでメアリ以外の人類が消滅した世界で電話をするという、なんとも奇妙な物語が始まります。なんとこの話し相手、存在自体があやふやなのです。まさしくシュレディンガーの猫のように、通話によって「メアリが相手の状態を観測する」ことで形を成していくわけです。

しかしメアリ自身も記憶などかけている部分が多そうで、電話に出る際の合言葉を思い出すところから始まっていきます。筆者の脳裏に「お疲れ様です」「今お時間大丈夫でしょうか?」とか世俗に満ちた単語が浮かびましたが、「もしもし」が合言葉ですね。

はじめに電話が繋がったのは「ルーシー」という女性。彼女も記憶があいまいですが、様々なワードから記憶を刺激させ、「想い残し」を聴きだしましょう。


そして通話の中でルーシーが語った望みは「彼との想い出を取り戻す」こと。しかし彼女自身、その「彼」が誰かを思い出せません。もちろんメアリもわからない事ですが、ルーシーは会話の中で無意識に「彼」の存在を口走っていましたので、その彼とは息子ではないかと会話していきます。

何度かの電話を繰り返した後、メアリはルーシーとその息子が“人類消滅”の直前に交わした「人生最後の通話」を聞くことになりました。なぜルーシーと息子の通話が“心残り”になったのか、その重い人生が垣間見える切ない内容です。そして“人類消滅”の理由もぼんやり明らかに……!

これによって、ルーシーや後に続くであろう通話相手は"死にきれない心残り"を抱いた魂だと判明します。しかし「なんでメアリだけ生きているのか」といった気になる理由はわからずじまい。

ゲームはまるで霧がかかったかのような、ゆったりとしたトーンで進行します。とはいっても冗長なシーンはなく、ゆっくりとしたテンポそのものが演出の一部として機能していて、実に良い感じです。
こういった丁寧さが功をなしてか、『シュレディンガーズ・コール』は非常に没入感が高いゲームになっています。試遊というのは案外「今何分くらいプレイしているんだろう」と意識してしまいがちなのですが、『シュレディンガーズ・コール』ではそれにも気づかないほど没入してしまいました。

優れたゲーム体験というものは没入感に紐づいています。この点で、試遊段階から筆者の心をぐっと掴んでくれた本作は期待する価値が大いにある一作でしょう。通話相手の記憶の混濁や、人類消滅の理由にメアリの秘密……「なぜ」が多く生まれて、それを確定させていく『シュレディンガーズ・コール』、気になった方はぜひウィッシュリストに入れてみてはどうでしょうか。
『シュレディンガーズ・コール』は2025年リリース予定です。Game*Sparkでは本稿以外にも『シュレディンガーズ・コール』レポや開発者インタビューを行っています。こちらもあわせてご一読ください!