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- 「大人数でRPGが遊べる」革新的なMMORPGというジャンルが誕生して十数年たった現在。日本に上陸後、名作と呼ばれつつもその殆どが撤退していった欧米産MMORPGが、なぜ日本で成功を見ることがなかったのか。本連載では日本上陸の経緯を振り返りつつ、その理由を考えます。
今は無きMythic Entertainmentが開発、2001年に北米でリリースされ、海外では今なおサービスを続けるMMORPG『Dark Age of Camelot(ダーク・エイジ・オブ・キャメロット)』。大規模な対人戦に焦点を当てた本作は、その代名詞ともなった勢力戦「Realm vs Realm(RvR)」という言葉を生み出しました。今回は、MMORPGジャンルの歴史に大きな影響を与えた本作を振り返ります。
■『ダーク・エイジ・オブ・キャメロット』とは
アーサー王伝説をベースにした「アルビオン」、ケルト神話をベースにした「ヒベルニア」、北欧神話をベースにした「ミッドガルド」の国々が三つ巴の戦いを繰り広げている世界。各国家にはそれぞれ異なるクラスと種族が用意されており、特色の違う国家同士の戦いを演出します。また、それぞれの国家間の往来は不可能となっており、遭遇するのは戦場のみという思い切った設計で、RvRという本作の軸である要素を盛り上げていました。
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ゲーム中には、比較的小規模のPvPが繰り広げられるバトルグラウンド、攻城兵器を用いた大規模なRvRが展開される主戦場ゾーンが用意され、初心者から上級者まで受け入れる懐の深い対人システムが大きな特徴です。戦果を挙げることでポイントを獲得でき、それを用いたキャラクターの強化は、まさしくPvPに特化した仕様と言えるでしょう。基本的なシステムは先駆者である『EverQuest』を踏襲したと考えられるもので、各国家の特徴的なストーリーも魅力の1つです。ちなみに、「対人戦」にフォーカスしているだけあって、レベル1から戦場に行くことができ、PvPで経験値を稼いでレベルを上げることも可能でした。
■『ダーク・エイジ・オブ・キャメロット』日本上陸
本作の日本語版サービスが発表されたのは2004年5月。日本に拠点を持たないMythic Entertainmentが直々に、日本語版の開発/運営を担当するという異例の発表がありつつも、サーバーを米国本土に設置し、クローズドベータテスト、オープンベータテストと駒を進めて行き、2005年1月に正式サービスを迎えます。一方、日本でのサービス開始発表前には、カプコンから『ダーク・エイジ・オブ・キャメロット 英語版・日本語マニュアル付き』が販売されていて、本家Merlinサーバーなどを中心に日本人プレイヤーのコミュニティが形成されていました。
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日本版では、海外版で有料だったクライアントプログラムは無料で配信された上、「カタコンブス」を除く、それまでにリリースされていた拡張パックを全て収録していました。当時の他の欧米産MMORPGローカライズと比べると類を見ない対応であり、国内のMMORPG市場を調査した上での思い切った施策といえます。また、開発者とユーザーが直接触れ合うファンイベント「ラウンドテーブル」も正式サービス前から実施、日本展開に対するMythicの本気度もうかがえました。
■遅れるアップデート、EAのMythic買収、そして日本撤退
2005年4月には海外版から4ヶ月遅れて拡張パック「カタコンブス」が無料で配信。日本での展開規模を考えると十分に迅速なローカライズと言え、サービスは順調に進んでいるように思えました。しかし、サービスが進んでいくほどに海外版とのバージョン差が生まれて行き、海外で2005年に配信された拡張パック「Darkness Rising」も、2006年春の国内リリースが発表されながら、待てども配信されずと言う状況に陥っていました。
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そんな状況で迎えた2006年6月、Electronic ArtsがMythic Entertainmentを買収し、社名がEA Mythicへと変わることになります。その僅か3ヶ月後の2006年9月、日本語サービスを終了し、英語サーバーへと移行することが発表。2006年12月に英語サーバーとの統合が完了し、約2年続いた日本語サービスの幕が閉じられます。なお、統合に対するユーザーの反応は日本語サービスの終了は惜しむものの、既にプレイヤー数が減少していた状況から、英語サーバーへの移行で大規模な戦闘が楽しめると歓迎する声も多く上がっていました。
※次ページ:日本国内でPvPにフォーカスする難しさ