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e-Sportsに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからの日本のe-Sportsシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【e-Sportsの裏側】。「前回の連載」では、CyberZの山内隆裕社長に話を聞き、同社が見据えるe-Sportsビジネスの方向性、日本のe-Sportsの未来について、独占インタビューを敢行、スマートフォン広告事業会社であるCyberZがなぜe-Sportsに参入するのかお話を伺いました。
- ■e-Sportsとは?
e-Sports(Eスポーツ)とはElectronic sportsの略で、コンピュータゲームやビデオゲームで行われる競技のことです。高額な賞金のかけられた世界的な規模で行われるプロフェッショナルな大会から、アマチュアまで競技が行われており、ジャンルやゲーム毎にプロチームやプロリーグが多数あります。現在e-Sportsの対象となっているゲームを遊ぶ人の数は、全世界で5500万人を超えています。
(ゲーム大辞典参照:http://game-lexicon.jp/word/e-Sports)
連載第7回目は、日本のみならず世界でその名を轟かせているIT業界のトップリーダーGoogleが提供する動画共有サイト 「YouTube」が今後のゲーム配信文化をどのように感じているのか、同社のゲームパートナーシップアジア代表のチャ・イネス氏にインタビューを実施しました。Googleが見据えるゲーム動画の未来はどのようなものなのでしょうか。「e-Sports」とは少し違う視点で「番外編」という形で今回は探っていきたいと思います。
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―――まずは自己紹介をお願い致します。
イネス氏: チャ・イネスと申します。10年ほど前から日本で仕事をしています。2012年1月末にGoogleに入社し、当初は「YouTube」の韓国マーケットを担当していました。カテゴリジャンルを問わず韓国の「クリエイター」の方の手助けをして、彼らが「フルタイムユーチューバー」になれるための戦略やツールなどを提供していました。1年ほど韓国マーケットを担当したあと、アジア・パシフィックを担当するようになり、企業・個人問わず、さまざまなパートナー様に対し「YouTube」の活用方法をレクチャーしたり、トレーニングプログラムの作成を行っていました。「どうすればチャンネル登録数を増やして、視聴者とのエンゲージメントを上げるのか?」といったことを日々考え、戦略を立て、それをパートナー様にベストプラクティスという形で共有する業務です。
もともと私自身ゲームが好きで、個人でもゲーマーと呼ばれるような立ち位置にいると思います(笑)。実はGoogleに入社する前には、某ゲーム雑誌を出版している会社に2年、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に3年勤務をしていました。ゲーム関係の仕事に長く携っていたため、ちょうど「YouTube」の中で「ゲームカテゴリに注力していく。適任者は誰かいないか」という話になった時に、自分の中で「これだ!」と感じ、手を挙げました。
―――ありがとうございます。読者の方も既にご存知の方が多いかと思いますが、改めて「YouTube」とはなにか、教えてください。
イネス氏: 「誰でも自分を表現できるプラットフォーム」です。世界中の多くのユーザーが「YouTube」を利用しており、どこにいても世界中の人と繋がることができます。また「ゲーム」というカテゴリはコミュニティとの繋がりがかなり重要になってきます。ので、誰かが共有したコンテンツを見ながら意見を交換する活発なコミュニティを形成しているという点では、ゲーム業界に「YouTube」は貢献できているのではないかと考えています。「YouTube」自体はさまざまな動画が共有されるプラットフォームなのですが、中でもゲーム関連のコンテンツは日々たくさんの数がアップロードされています。数億人規模のユーザーが、ゲームコンテンツを見るために「YouTube」に訪れています。一方で「ゲームコンテンツ」が豊富にあるということは「YouTube」全体で見た時にはまだまだ認知度は低い状況です。
―――ワールドワイドで見た時に、日本の「YouTube」の規模はどういった感じでしょうか
イネス氏: 具体的な数は申し上げられないのですが、アジアだけでなくグローバル視点で見てもトップクラスで、非常に重要度が高い国です。
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―――「スポーツ」「音楽」などいろいろカテゴリがあると思いますが、「ゲーム関連」のカテゴリを視聴者の方はどのように楽しんでいますか
イネス氏: ゲーム関連のカテゴリを視聴している方々は、「スポーツを見る感覚」に近い楽しみかたをしていると想定しています。日本はサッカーファンが多いと思うのですが、みなさんサッカーができるわけではないですよね。でもサッカーの試合やプレイを見ることにすごく楽しみを感じていて、集まって、意見を出し合うような場があって、コミュニティもたくさんできています。それと全く一緒だと思っています。もちろん、自分自身がゲーマーだから見る、という方は多いですが、他の人がゲームをプレイしているのを見て楽しんでいる方もかなりの規模でいると考えています。例えば「プロ」と呼ばれているゲームが非常にうまい人々のプレイを見て「ああいう場面はああいう動きをするんだ!」「いまの動きすごくない?」といったように視聴者が盛り上がったり意見を出し合ったりするのは、限りなくスポーツ観戦に近いと感じます。
「e-Sports」の話に通じる部分もあるのですが、北米ほどではないにしろ日本でも「ゲームを見る文化」が盛り上がってきていますよね。そこはやはりスポーツ観戦に近い、「ついでに見る」ではなく「見ることを楽しむ」という風潮が徐々に広がっている感じがします。
―――「プロゲーマー」という話がでました。YouTubeでもさまざまなクリエイターの方々がいるかと思いますが、クリエイターが「YouTube」を利用するメリットはなんでしょうか
イネス氏: まずは「グローバルオーディエンス」といった部分を強みのひとつとしてクリエイターのみなさまにはご案内しています。また視聴者だけでなく、クリエイターもワールドワイドで活躍している方がいます。例えば「海外の著名なクリエイターが今プレイしているゲーム」を素早くチェックすることができますし、「どういったコンテンツが反響があるのか」「他の国のユーザーはどういったコメントをしているのか」を知ることもできます。これらの点は「YouTube」の強みと言えます。
―――人気のあるゲームジャンルはどのあたりになりますか
イネス氏: 一番多いのは「レッツプレイ」ですね。いわゆる「実況」と呼ばれるものです。ゲームのジャンルに関わらず人気のタイトルが出てきた時に動画を制作しやすいですし、視聴者の方も「このクリエイターさんはこのゲームをどうプレイするのだろう?」と楽しみにしていることが多いです。また、メーカーさん自身がチャンネルを運営し、トレイラーやイベント状況のライブ中継を流していたりするのですが、そこにも多くの視聴者がいます。
―――ジャンルではなく「自分の好きなクリエイターやメーカー」のチャンネルを見に行くユーザーが多いのでしょうか
イネス氏: そのパターンは多いです。ただ、「自分の好きなクリエイターさんのチャンネルを見ていたら、このゲームを実況していた」という出会いの形だけでなく、「このゲームが好きでいろいろ検索をしていたら、このクリエイターさんにたどり着いて、そのクリエイターさん自身を好きになった」というパターンも同じように多いです。そういった意味でも「YouTube」は使いやすいプラットフォームだと思います。クリエイターさん自身が好きな人はその人のチャンネルを登録すれば良いですし、「YouTube」を検索エンジンとして使い、 「今流行っているこのゲームをプレイしている動画ないかな?」という逆の入口からコンテンツに出会うこともできます。「クリエイター→ゲーム」「ゲーム→クリエイター」といった両方の側面があります。
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