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The Creative Assemblyが開発し、2016年5月24日にSEGAより発売されたRTS『Total War: WARHAMMER』。Games Workshopのミニチュア・ウォーシミュレーションゲーム「WARHAMMER」をテーマにし、シリーズ初となるファンタジー世界を採用した本作は、リリースから僅か数日で50万本を売り上げ、フランチャイズ最速販売記録を樹立。Steamでも10万人を超える同時プレイヤー数を記録するなど同ジャンルタイトルでは珍しくスマッシュヒットを飛ばしています。本記事ではそんな本作のレビューをお届けします。
■『Total War』シリーズの歴史
『Total War: WARHAMMER』は正規シリーズとしては10作目。ジャンル的にはストラテジーゲームとなりますが、戦略から戦術までを扱っており、RTSの要素まで含んでいる本シリーズを形容するジャンルは見当たりません。その最初の作品は2000年にリリースされた戦国時代を舞台とする『Total War: Shogun(旧名Shogun: Total War)』で、当時2Dが主流であったRTS界隈に衝撃を与えました。その後は、中世ヨーロッパを舞台とした『Total War: Medieval』、古代ローマ時代を舞台にした『Total War: Rome』が登場。その人気を確立していき『Medieval 2』『SHOGUN 2』『ROME 2』といった従来設定の続編がリリースされたほか、『Empire』や『Napoleon』などで銃砲が戦場の主役となる近世の時代を舞台とするなど挑戦的な面も見せるシリーズです。
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ドラゴンに乗る敵将軍とドワーフの戦士
本作シリーズのゲームシステムは勢力間の外交や内政、そして軍団の編成/移動をするターン制の「戦略パート」と、軍団同士の激突時におけるリアルタイム制の「戦闘パート」に分かれており、勢力同士の総力戦(Total War)を余すところなく楽しめるのが売り。特に戦闘パートでは数人から100人ほどで構成される部隊を1ユニットとなるため、多数のユニットが参戦する戦場では数百から数千もの兵士が入り乱れる大規模な戦いが繰り広げられます。また、ユニット同士の相性、側面や背面といった概念、状況によって変化する兵士の士気など細かな戦闘要素が盛り込まれており、美しく迫力満点の3Dグラフィックと共にリアリスティックな戦闘システムは高い評価を得ています。
■ファンタジーと融合した『Total War: WARHAMMER』
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敵を迎え撃つ銃兵
今まで戦国時代や中世など歴史をベースとしていた本シリーズですが、『Total War: WARHAMMER』では初めてファンタジー世界を舞台にしました。本作に用意されているゲームモードは4つで、各勢力を操り勝利条件を達成する「キャンペーン」、「WARHAMMER」のヒストリカルな戦いを楽しめる「クエストバトル」、戦闘部分だけを楽しめる「カスタムバトル」、プレイヤー相手に戦う「マルチプレイヤーバトル」が用意されています。
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敵の射撃を防ぐために盾を構えて前進するオーク
中世的な世界観に魔法やドラゴンなどのモンスターが登場し、戦いを繰り広げる『WARHAMMER』は『Total War』シリーズとの親和性が高いという印象。実際にプレイしてみても、これまでの歴史をテーマにしてきたシリーズの良いところを継承しつつ、上手くファンタジー作品に昇華させており、新たに登場した魔法や飛行ユニットという要素が戦闘パートのスパイスとなって、ゲームの面白さを際立たせていると感じます。
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爆撃に向かうDwarfのジャイロボンバー
現時点で本作に登場する勢力はDLCも含めて5つ。人間の勢力であらゆる兵種が揃ったバランスのいい「Empire」。小さい体躯ながらも卓越した身体能力を持ち、騎兵ユニットはいないもののジャイロコプターなどの優秀な兵器を持つ「Dwarf」。ゴブリンとオークが中心で部族の結束が高く、獰猛な魔獣やジャイアントを使役する「Greenskin」。死者の軍勢を率い戦いでは決して退くことが無い吸血鬼勢力「Vampire Count」。そしてDLCでの追加勢力として登場する、世界に破壊をもたらす凶悪で強力な混沌の勢力「Chaos Warriors」。これら5つの勢力は、それぞれの特徴的なユニットのほか、例えば「Vampire Count」の戦場で死んだユニットを即座に自軍ユニットに加える「Raise Dead」といった、戦略部分でも特徴的なシステムを持っており、勢力ごとに違ったプレイフィールを楽しめます。
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レジェンダリーロード、勢力の指導者であり優れた将軍でもある
また、各勢力には2人ずつ(Chaos Warriorsは3人)伝説的な指導者がおり、選択する指導者によってはまた違ったゲームプレイが味わえます。伝説的な武具を探したり、将軍を育てたりといったRPG的な要素もあるため、ともに戦い抜いてきた将軍に妙な愛着が沸いてきます。
■シリーズが抱える問題と今後の展開
ファンタジーとシリーズの伝統が融合を果たした『Total War: WARHAMMER』。海外では各所で高い評価を得て、Twitchなどのライブ配信も盛り上がりを見せています。またシリーズでは珍しく海外リリース時から国内からも購入可能で国内ファンには喜ばしい出来事なのではないでしょうか。ちなみに10作あるシリーズ作品の中で普通にSteamで購入してプレイ可能なのは『Total War: ROMA2』と本作だけ。『メディーバル2』や『エンパイア』などSEGAや日本のパブリッシャーがローカライズして販売しているタイトル(プレイにはSteamのアクティベーションが必要)もありますが、『ショーグン2』ではDLCが導入できないという事態も発生し、ユーザーを困惑させていました。
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攻城戦の様子、Vampire Countの攻城塔からグールがなだれ込んでくる!
『Total War: WARHAMMER』ではゲーム内の日本語ローカライズこそされていませんが、Steamストアページが何故か日本語化されており、ローカライズにも少なからず期待が寄せられています。今後は2つのスタンドアローン拡張のほか、無料のコンテンツパックなどがリリースされる予定。現時点の『Total War: WARHAMMER』には登場していない種族も多数あり、コンテンツ拡張はゲームの幅を広げてくれることでしょう。
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筆者個人の評価では今のところ名作と名高い『メディーバル2』に匹敵する面白さを感じます。毛色は違いますが、国産の歴史シミュレーションゲームで戦闘部分に物足りなさを感じている人におすすめ。また、ファンタジー世界を舞台にしていることもあり、歴史に興味のない人も楽しめるのではないでしょうか。これまで「Total War」シリーズの歴史的部分に魅力を感じていた人は敬遠してしまうかもしれませんが、「WARHAMMER」は海外で長く親しまれてるゲームで秀逸な世界観を持っていることも特徴の一つ。本作でそうした世界に触れてみるのも良さそうです。