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PC&コンソール、スマートフォンへと躍進を続ける『フォートナイト』。その人気ぶりは目を見張るところがありますが、ゲーム業界の動きを知る上ではSteamやGoogle Playといったプラットフォームに頼らない独自のランチャーを採用している点も注目されています。
2018年に発表された『Fallout 76』『Call of Duty: Black Ops 4』といったAAAタイトルシリーズも、PC版に限ってはSteamを介さずに自社のプラットフォームに移行する動きも見られました。一見、「大手ゲーム会社のSteam離れ」にも見えるこの動きの裏にはどういった要因が隠れているのでしょうか。
これまでのPCゲームプラットフォーム
PCゲーマーなら間違いなく活用しているであろうプラットフォームがSteam。2003年に誕生以来、2005年からスタートしたサードパーティ製タイトルのダウンロード販売から独自ツールの提供など、様々なサービスを提供しているPCゲーム最大のプラットフォームです。PCゲームにおける他の大手プラットフォームとしては、ブリザード・エンターテイメントが1997年から提供している「Battle.net」、EAが2011年からサービスを提供する「Origin」、Ubisoftが2012年から提供している「Uplay」などがあります。
元々、カセットテープやフロッピーの時代からDVDの時代まで、PCゲーム市場はパッケージ販売が一般的でしたが、高速ネットワーク普及に伴うSteamの台頭によって、今ではパッケージに比べダウンロード販売の方が一般的になりました。(米国や英国のゲーム店ではパッケージの新作PCゲームは現在でも販売している。)
PCゲームプラットフォームは、ゲームを購入するだけでなく、パッチなどの各種アップデートからMOD、フレンドやコミュニティの管理を一貫して行うことができるという利便性があります。また、年間数回開催される大型セールで、コンソールゲームよりも大幅に安い価格で購入できるのも魅力の一つとなっています。
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現在のSteamほど大きなプラットフォームとなれば、同プラットフォーム内で大量にゲームタイトルを所有していたり多くのフレンドを抱えるユーザーも少なくありません。ユーザーベースで考えるなら、最も多くのユーザーが登録しているプラットフォームにAAAタイトルを投下するのは自然な流れのように見られます。
オンラインゲームとSteamの純粋なライバル
「人気シリーズのAAAタイトルがSteamで販売されず、独自のプラットフォームに移行した」と書くと、まるで大手各社が何かの思惑でSteamから離れていっているように見えるかもしれません。しかし、話題となっている『フォートナイト』『Fallout 76』『CoD: BO4』は、シングルキャンペーンモードを搭載しない純粋なオンラインゲームであることに注意が必要です。
Steam台頭以前のPCゲームは、タイトルが各自で用意した独自ランチャーがメインストリームでしたが、現在でもPC向けオンラインタイトル『World of Warcraft』『Final Fantasy XIV』『ファンタシースターオンライン2』を始めとした多くのタイトルが、Steamを介さない独自ランチャーを採用しています。
数年前と比較して、インディーデベロッパーでさえ自前のオンラインサーバーの提供が容易になってきている現在、迅速なアップデート対応が求められるオンラインゲームにおいては、作業工数の増える他社プラットフォームで運用するよりは、自社で用意したランチャーのみで運用した方が効率的であるよう思われます。ローンチからある程度体制が整った段階で、顧客拡大という形でSteamでも販売するパターンも見受けられます。(『FFXIV』や『The Elder Scrolls Online』のように海外のみSteam版がある場合も)
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AAAタイトルがSteamで配信されない他の理由としては、EAが提供するプラットフォーム「Origin」のように純粋にSteamの競合である場合もあります。Originをローンチ以降、『バトルフィールド3』をはじめとしたEAのAAAタイトルはOrigin独占配信となりました。これは非常に体力のある企業のEAがSteamのダウンロード型ビジネスに追従し、自プラットフォームの特色を出すために自社製タイトルの供給を他のプラットフォームでは行わないというパターンです。また、UbisoftのUplayのように、Steamで販売したタイトルを自動的に自社プラットフォームに誘導し、共生するパターンもあります。
『フォートナイト』『Call of Duty: Black Ops 4』『Fallout 76』の場合は
『フォートナイト』を提供するEpic Gamesの場合は、母体が世界最大規模のゲーム企業テンセントであり、上記の利点やEAと同じくオンラインサービスを自前で全て用意できること、昨今の中国政府対応も絡んできていることが独自ランチャー(とテンセントのプラットフォームWeGame)での展開につながっていると考えられます。(中国国内のゲーム産業の動きについては本稿では書ききれないので割愛します)
『Fallout 76』のPC版ローンチ時はBethesda.netでの独占配信ですが、『The Elder Scrolls Online』と同じように後にSteamでも配信される可能性は十分にあります。
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シリーズ前作までSteamで販売していた『Call of Duty: Black Ops 4』はブリザード・エンターテイメントのプラットフォームBattle.netへの移行となりますが、本作に関しては他のプラットフォームとは異なる要因もありそうです。
初代『Diablo』と共にローンチしたBattle.netは、現在はブリザード製タイトルが9本、アクティビジョン製タイトルが『CoD:BO4』含め2本、計11本のオンライン専用もしくはオンライン対応タイトルのサービスを行なっています。ここで注目すべきは、Battle.netで扱っているタイトルのどれもが数年にわたってサービスを続けているものだけということです。そういったことから、『Destiny2』と『CoD:BO4』は、共に長期的なオンラインサービスを展開する計画があるために本プラットフォームへ編入されたと考えるのが自然でしょう。
先に述べたEA、Epic Gamesの母体であるテンセント、ブリザード・エンターテイメントの母体であるアクティビジョン・ブリザードはそもそも世界トップ3の規模のゲーム会社ですので、他社のサービスに頼らなくても長期的に自前でサービスを運用できる体力があるのです。
結局「Steam離れ」は起こっているのか
現在の状況だけでいえば、「Steam離れ」は起こっていないと言えそうです。ただ、『フォートナイト』人気の影響でSteamの同時接続ユーザー数低下がささやかられているのも事実。他のプラットフォームでさらに爆発的人気を呼ぶタイトルが生まれれば、Steamから多くのユーザーを引っ張っていくことが起こり得るかもしれませんし、将来はそもそもPCゲームプラットフォームというサービス自体がなくなっていく、みたいなこともあるかもしれません。
しかし、当分の間はそれぞれのプラットフォームとSteamは共存していくのではないでしょうか。