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爆発的なヒットとなった『レッド・デッド・リデンプション2(Red Dead Redemption 2)』の不思議な魅力に心を奪われ続けている皆様、本日も愛馬をなでておられるでしょうか?
最近正式版となった『RimWorld』や、世界を堪能するにふさわしい『スカイリム』といったタイトルではキャラクターの設定を頭の中で作りながら遊ぶことに筆者は強い快感を覚えてしまいます。その意味で、無骨な鉄道と馬車が往く荒野の『RDR2』は、筆者の中に「ロールプレイングゲーム」としての価値が生まれつつあるのです。
没入感という娯楽
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既に多くの方が『RDR2』の魅力として語られているように、本作は「ゲームへの没入」を高いレベルで実現しています。いちいち棚からアイテムを選んで購入したり、馬での移動を飽きもせず続けていられたり、理由を探せばいくらでも挙げられそうな「作りこみ」の集まりが、かえって不便とも取られがちな渋い部分さえ「世界へ入り込める旨み」として引き立たせているのでしょう。
ゲームの目的はクリアすることか
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ゲームには目的があります。得点や技術を競うこと、シナリオをクリアすることなどは最終的な目標ですが、それが全てではありません。特にストーリーを完結するという要素は、物語の雰囲気を味わい、自己に投影して、説得力を持たせるための行動を楽しむ、といった複合的な側面を持ちます。
ストーリーを進めるという目的そのものに対して「プレイヤー自らがどのように働きかけるか」というアクションを、そのゲームの中で実行できるというのが、ゲームの魅力であると筆者は考えます。
そうです!!直接クリアに関係する訳ではない行動も、プレイヤーが自ら楽しむための大切な理由になりえるのです。こうして筆者は、毎朝6時30分に必ずキャンプで薪割りをするというゲームプレイを確立することになったのです。
筆者のアーサーが過ごす、キャンプ生活の流れ
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6時半ごろに目を覚ました筆者のアーサーは、一直線にキャンプの薪割り場へ向かい、黙々と斧を振り下ろします。この破裂音こそが、キャンプにおける彼にとっての目覚めの挨拶として響き渡るのです。
起きてすぐに軽い運動を行うことは、効率的な覚醒を促し、健康にも良いとされています。少しもやの掛かる湖畔を眺めながらの薪割りは、画面越しでさえひんやりとする空気を感じさせるかのようです。
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薪割りが終わるとそのまま目の前の資材置き場へ向かい、地面に置いてあるトウモロコシ粉の袋をピアソンの馬車へ運びます。馬車の裏にはたいていピアソンが座っているので、一言声をかけて挨拶。アイサツこそ生活の基本であり、始まりであり、全ての流れをつなぐ重要な行為と言えるでしょう。
このトウモロコシ粉が一体どこから調達されているのか、なぜ最初からピアソンの馬車に置かれていないのか。そうした疑問は毎朝湧き出てきますが、それは「誰かの仕事がまた別の誰かの仕事へ繋がっている」ことを実感させてくれるのです。
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起き抜けにチカラの必要な作業を行って体を温めていても、無理は禁物。まだ冷える中では体調を崩してしまいかねません。睡眠で失われた水分を補給する意味でも、ピアソンの馬車の前にある焚火でコーヒーを嗜みます。このタイミングでは数名の女性メンバーがコーヒー片手に休んでいるので、アーサーは皆へ挨拶をするのです。
一杯のコーヒーはR2ボタンで4回飲めます。ほんの少しステータスに影響がありますが、おまけのようなものです。連打せず、会話を挟みながら、一杯をゆっくり消費していきます。なぜか筆者も画面の前で「フゥー……」と深呼吸をしてしまう瞬間です。
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女性たちとの歓談を楽しんだ後、もう一つのトウモロコシ粉を馬車へ運ぶと待っているのはバケツでの水汲みです。トウモロコシ粉の置き場所の真横にバケツが配置してあるので導線としても効率が良く、朝の雑務を途切れさせません。
このタイミングになると、ようやく起き始める他のメンバーも現れるので、移動の途中で挨拶をかけていきます。ステータスや進行にほとんど意味をなさない余剰の遊びであるにも関わらず、このキャンプの雑事に効率を追求しはじめてしまっている筆者がいました。
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次にテント横に置かれている干し草を運びます。馬の餌場へ2束持っていく重労働です。この時間はいつも、馬の近くでジャックが一人あそんでいます。ジャックはアーサーに懐いていますし、筆者の中のアーサーは絶対にジャックへの挨拶を欠かしません。
重い干し草を抱えて苦しい表情の中にも、優しく微笑みかけるアーサーの渋い顔が浮かんでくることでしょう。
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キャンプの雑務としてはこれで終了。そのまま自分の愛馬のもとまで走り、丁寧にブラシをかけます。なでます。馬への挨拶が信頼関係の土台となるのです。
本作において馬は大切な相棒です。広いアメリカを走る時間が大半となるゲームプレイにおいて、美しい景観を楽しめるのも、迫力あるシナリオを成り立たせるのも、全ては馬があってこそ。出発前には必ずきれいな身体でいて欲しい……そうした思いが、どうしてもブラッシングをさせてしまうのです。
実際には汚れがひどくなってしまうとスタミナの回復などに悪影響がありますが、これも致命的なものになってしまう訳ではないので、あくまでも「ゲームに没入するための自己流の楽しみ方のひとつ」となります。
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そして焚火に戻って一服。タバコかコーヒーを嗜みつつ、休憩している他のメンバーへ声をかけたりしながら「今日は何をしようか」と思案し、ようやくプレイヤーにとってのメインのゲームプレイを開始していくのです。
体験の意味をどこに見出すか
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食事を摂る、コーヒーを飲む、タバコを吸う、挨拶をする、雑務をこなす……といったことは『RDR2』の中でゲームクリアとしての意味はほとんどありません。
もちろん、クリアを目指すことだけに特化した楽しみ方もあると思います。しかし筆者はこの『RDR2』という豪華な(実に豪華だと思いませんか?)ゲームを、その瞬間として深く味わうための創意工夫はあっていいと考えます。
NPCや小さなイベントが、これほど「没入感」「生活感」を生み出してくれるとは、今更ながらに驚きと喜びを筆者に与えてくれました。筆者にとっては「キャンプで雑務を必ずこなすアーサー」というロールプレイが、その体験の味となったのです。読者の皆様にとっての「ついやってしまう行動」や「一日のルーチン」には、どんなものがあるでしょうか?
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仕事を終え、キャンプに戻った夜。仲間たちが火を囲って語る、しんみりした時間。これは現代においても、友人とのキャンプで焚火を挟んだ時の「良さ」に通じています。思いがけない仲間の独白や、誰もが黙して見つめる静かな空気に、何も操作しないという楽しみが生まれていることに気が付かされたのです。
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自分のベッドに戻って日誌を見返す、本当に一人の瞬間。粗野で無法者のアーサーが持つひとつの趣味として、彼はスケッチをし、文字を残します。寝床で行うこの行為が、筆者にとって最も「アーサーと同一化」した時間の様に感じられます。
購入する前は、筆者もこうしたゲームプレイを期待していた訳ではありませんでした。もちろん、ストーリーを追いかけるというメインミッションがあってこその体験なのですが、読者の皆様はいかがでしょうか。筆者は(マジで)上記の生活ルーチンを繰り返しています。皆様の「楽しみ方」も、ぜひコメント欄にてお聞かせください。