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2019年4月1日に新元号「令和」が発表。平成の時代も、あと少しで終わりを迎えます。連載「平成ゲームメモリアル」では、平成の31年間でビデオゲームがどう変わっていったのかを、ライターたちが振り返っていく企画です。
第5回を迎えた今回は、Steamなどのダウンロード販売を中心としたプラットフォームの登場、そして「インディーゲーム」や「基本無料」が広まった時代がテーマです。ゲームもパッケージではなく、ダウンロードで購入することが当たり前になりました。それからどのような大きな変化が起きたのでしょうか?
“モノ”から“データ”へ買うものが変わった
葛西祝というわけで第5回の司会を務めさせていただく、ジャンル複合ライティング業者の葛西祝です!新元号も発表され、いよいよ平成も終わりますね。
まず皆さん、ビデオゲームを“モノ”であるパッケージではなく、ダウンロードで“データ”を購入した経験はいかがでしょうか? 自分はWiiのバーチャルコンソールで、プレミア化していた『メタルスレイダーグローリー』を簡単に買えたことがすごく思い出深かったです。
SHINJI-coo-Kヒップホップジャンルの作曲業とフリーランスゲームライターの兼業家SHINJI-coo-K(池田伸次)と申します。(※以下:SHINJI-coo-K)Game*Sparkでは主に特集執筆やこういった座談会に出席させて頂いています。
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自分が初めてダウンロード購入したタイトルは、PCアドベンチャーゲームの『人形の傷跡』です。そのときはプロバイダ料金からの引き落としで買えたという、ちょっと特殊な購入方法が思い出深いです。現在ではPCとスマホで無料公開されていて評価も高いんです。
G.Suzukiミリタリー系ゲームが好きなライターのG.Suzukiです。初めてDL版は、2007年末のSteamウインターセールで購入した、『Doom 3』をはじめとしたid Softwareタイトルの全部入りバンドルでしたね。
Arkblade3回目に引き続きゲストとして登板させて頂く、Arkbladeと申します。Game*Sparkにてデイリーや各種特集など多岐にわたって活動しています。インターネット自体は1995年くらいから使っていたため、初めてダウンロードで買ったゲームが何なのか、もう忘れてしまいました。
自分がはっきりとダウンロードでゲームを買ったのは、スペースコンバットシム『X2: The Threat』と『X3: Reunion』ですね。パッケージも持っていますが、DL版が出るという事でこれのためにずっと肥やしになってたSteamを久々に起動しました。
葛西祝ある時期からパッケージでゲームを買うことよりも、ダウンロードでゲームを買うことのほうが多くなっていきました。だんだんと購入する対象がデータに変わっていったんですよね。
SHINJI-coo-K皆さんも、音楽と似たようなもので「やっぱり物理媒体だよな!」って想いはありましたか?
自分はなるべくパッケージを買うタイプだったんですが、いつの間にかその感覚も薄れて、音楽もビデオゲームもダウンロードで買うようになりました。だけどDVDパッケージは、いまだに処分しきれずに所有しています。
葛西祝音楽でもiTunesのようなダウンロード販売から、Spotifyのようなストリーミングサービスなどが台頭しましたよね。「誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち 」(早川書房)って本も話題になりました。自分はCDとかカセットとか、あんまり物理メディアに過剰な思い入れは無くって。「ゲームの箱が重なったりして、部屋が狭くならなくていいや」という考えです。
G.Suzuki物理媒体からデータで配信する時代……となると、00年代ならiTunesやフィーチャーフォン時代の着うたフルとかを思い出しますね。
ゲームがパッケージよりも、付属するダウンロードコードのほうに価値があり、デジタル配信されるというのを意識したのは『バトルフィールド2 』の『Euro Force』と『Armored Fury』セットのブースターパック、『バトルフィールド 2142』の拡張版『Northern Strike』、そして『Half-Life 2』からですね。
Arkblade私はSteam登場以前からPCゲーム主体なので、「やっぱり物理媒体」という気持ちがありました。
コンソールであればダウンロード販売は、それぞれの機種ごとに統一された本体やアカウントと紐づけするという形ですが、PCでは違ったんです。様々な規格・サイトなどが存在したほか、かつてはプロテクトやDRMの仕様が不便であったりと様々な不利益とセットだったからです。私は、販売国によってはそのあたりの規制がゆるい場合が多かったパッケージ版をわざわざ買っていた時期もありました。
そこで当時、最もユーザーフレンドリーだったのがSteamでした。これは機能であったり、緩めのDRMであったり、もちろんセールであったり。それがSteamが躍進した理由の一端でもあったのかなと思います。
SHINJI-coo-Kああー!当時のダウンロード販売は、DRM、プロテクトがわずらわしい印象が強かったです。一方、Steamはスムーズにゲームを遊べるのが魅力的でした。Steam自体がDRMになっていたから、オンライン認証を一括で行うことができたため、手軽だったんですよ。
G.SuzukiPCゲームに限れば、Steam以前には「Direct2Drive」などがゲームを販売していましたよね。ダウンロードソフトはディスクを挿入しない手軽さがあります。でもダウンロード方法の煩雑さも含めて、使うのが難しくて悩みました。
Arkbladeもちろん、Steamは決してユーザーの考えるベストではなかったのですが、間違いなく最もベターでした。
葛西祝なるほど、PCではダウンロード販売を模索していた時代なんですね。コンソールではPS3、Xbox360、そしてWiiがダウンロード販売を始めていました。たとえばWiiではバーチャルコンソールのように、過去のタイトルをメインにしていましたよね。
一方でWiiWareのようにけっこう実験的だったり、渋いオリジナルタイトルをリリースするフィールドという印象もあって。例えば『マッスル行進曲』みたいにパッケージビジネスにするには数字を出しづらいけど、でも捨て置けない、おもしろい企画だよねってゲームが出ていたんですよ。
SHINJI-coo-Kそうですよね、低コストで制作されたため、パッケージ流通に乗せづらいタイトルがダウンロード販売としてリリースされはじめた頃ですね。
G.SuzukiWiiだったら、過去のプラットフォームでリリースされたタイトルをバーチャルコンソールという形でダウンロードで販売していましたね。PCだとGOG.comがそうでした。古くは“Good Old Games(優れた昔のゲーム)”という名称で、運営開始から『Fallout 2』や『MDK』などを筆頭としたPCゲームのクラシックタイトルをリリースしたことが印象に残っています。
ArkbladeGOG.comのローンチでは当時は再販も難しかった『Freespace 2』などのInterPlayのタイトルが含まれていたので、嬉しかったユーザーが多かったのではないでしょうか。
ダウンロード販売による復刻の流れは、過去メディアの再販が難しいコンソールだけでなく、PCでもプロテクトや環境に左右されないプレイが可能となるため、すごく意義があったなと感じています。
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一方、国内ではその流れに乗れなかったせいで、今では00年代の多数の名作PCゲームが楽しめなくなってしまっています。『風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!』とか『鋼鉄の咆哮』とか……『太閤立志伝5』なんてかなり細かいMod機能まで付いていたのに、本当損失だなーと。
イードから発売された『ウィザードリィ外伝 5つの試練』のような国内販売サイトから近年のプラットフォームに移行できてないタイトルもですね。いずれも、仕様は全て当時のままでいいので、ぜひ再販して欲しいところです。
SHINJI-coo-K日本語版『ウィザードリィ8』もえらいプレミアが付いてますよね。Steam海外版は980円とめっちゃ安いのに!(笑)それこそ前述のバーチャルコンソールやPlayStationのゲームアーカイブスで過去のタイトルが救済されたのはとても有意義だと思います。
Arkbladeゲームによってはどうしてもユーザー視点で「当時のあのゲームがやりたいんだ」というのがありますしね。
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自分も『Titans of Steels: Warring Suns』や『winSPWW2:Steel Panthers World War II』、『Jagged Alliance 2』などは今でも度々楽しんでいます。『Titans of Steels: Warring Suns』はParadoxの『BATTLETECH』とゲーム性などが近いのですが、それでもやっぱり「自分が求めているものとは違う」と思いましたね。
G.Suzuki シリーズものの新作が出るというきっかけから、過去作へ簡単にアクセスできる環境は欲しいですよね。特にPS3/Xbox 360時代の00年代後半は、シリーズ誕生から10年以上経つシリーズがぼちぼちと出てきました。
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