■全6回の振り返りを終えて
葛西祝座談会を全6回やってみて参加者の方々やゲストと話して感じたのは、本当にゲーマーごとに見てきた世界観が違うなということですね。
これはいい意味なんですが、座談会をやっていて、昔を懐かしむ感じが全然なかったんですよ。時代の急な変化や、日本と海外、コンソールとPC、アーケードなど多角的な見方ができたからかもしれません。“平成を振り返る”ってテーマなのに、みんなの話から初めて知ることも多かったんです。
G.Suzuki 自分は、ユーザーを含めたゲーム業界は右往左往をしながら歩んできたのだなと思いました。また個人で振り返えってみても、どうしても視野が狭くなりがちで、限界がある事も知りました。メジャーな、もしくはマイナーなプラットフォームで遊んでいると、どうしても他の事情や流行がわからないんです。
平成31年間のゲームの進歩に目を向けて見れば、平成のゲームは「できないことが、できるようになった」部分が大きいと思います。一時期ハードやグラフィックなどの進化について懐疑的な意見がありましたが、グラフィックが高精細になるに従って演出方法も変化し、文字に頼りすぎない直感的でわかりやすい画面へ変貌したと思うのです。簡素なライティングで彩られた空が進化し、透明感のあるダークブルーの空が表現可能となったことで、プレイヤーが自らが透明感のある景色を見て感動出来るようになったということです。
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キーボード打海 正直言って平成だろうと令和だろうと、昔遊んだゲームのことは大好きだと思い続けるでしょうし、これからの新しいゲームが楽しみなのも変わりません。「平成ゲームメモリアル」なのに本末転倒な話になっちゃうんですが、ほとんど自分の半生を丸ごと振り返るようなこの試みで、そういう気持ちがより確固たるものになりました。
平成に産まれて物心ついたころから『グラディウスIII』を遊び、『Rise of Nations』で初めて海外PCゲームに触れ、今では『ボーダーランズ3』がどうローカライズされるのかとにかく楽しみ。実際に触れて遊ぶのはもちろんですけど、ゲームに関わりのある作品やイベント、お仕事には常に興味がありますし、文化としてのゲームがどんどん面白くなっていったのも「平成」の出来事のうちのひとつかと思います。
葛西祝いま「平成の終わり」って、だいたい情緒的に語られていますよね。内田裕也さんや萩原健一さんといった俳優が亡くなったりして時代が幕を閉じていくのを感じるわけです。
だけど新しいメディアのビデオゲームは、ずっと急速な進歩や変化が続いていて、情緒を差しはさむような瞬間はありませんでした。いま平成が終わる間際ですが、僕の中でビデオゲームは時代の終わりの寂しさと無縁なんです。
……すいません、ひとつだけ強い寂しさを覚えた出来事がありました。当時の任天堂の社長だった岩田聡氏が2015年に逝去されたときです。あのときは本当に心に傷を受けました。ぼくにとってビデオゲームの平成は、その時に終わっていたんです。
SHINJI-coo-K平成という時代に、自分がゲームから離れた期間はあったものの、それは数年間だったんですよね。それ以外は絶えずゲームをやっていて、これまでの座談会では言及できなかったタイトルや体験など本当にたくさんあって。
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これからもビデオゲームは変わっていくしシーンも変わっていくでしょう。「できないことができる」に加えて「できるかどうか想像すらしていなかったこと」も起こるでしょう。ゲームボーイの液晶画面を見つめていたときに、誰が実写と見まごう映像を操作できると想像できたでしょうか。
キーボード打海さんが『ライフ イズ ストレンジ』に撃ち抜かれたエピソードなんか人生のできごとと見立てられて最高ですし(笑)色んな方をお招きして様々なお話をして、ゲームという文化の濃密さを振り返って、なんだかゲーマーであることが誇らしく感じられました。
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この座談会をお読み下さる読者の皆さんもゲーマーだと思いますが、堂々と「自分はゲーマーだ」と誇りを持っていい時代になったと思います。お寄せ下さっているコメントにも当てられてその信念が強くなりました。新しい時代と併走して新しいゲームをプレイしていきたいですね。