本記事ではストーリーに関わるネタバレを可能な限り回避して構成していますが、ゲームシステム及び攻略方法、登場するキャラクターや団体に関する言及が含まれています。
なお、本作は「CERO:Z(18才以上のみ対象)」と指定されており、記事内の画像にはグロテスク・暴力的なものが含まれますので、閲覧にはご注意ください。
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破滅的なパンデミックから生き延びた数少ない人々が、崩壊した世界の中で必死に日々を過ごしているという設定そのものはよく見かけるものです。本作『Days Gone』はフリーカーと呼ばれるゾンビ的な存在から身を守る為、生存者達が寄り集まって生活をしているという世界設定であり、ひとことで表せば「ゾンビサバイバルアクション」ものとなります。
本作を誰かに紹介しようとするとき、そのジャンルは一体何にすべきなのかと悩みます。「ゾンビサバイバルアクション」としてみたものの、それは正確ではありません。戦闘ひとつ取ってみても、ステルスによる各個撃破から、数百体を相手にしたパニック的な乱戦までを、同一のシステムで可能とした不思議なバランスを持っているからです。
また、ゲームにおけるサバイバル要素はタイトル毎にその比重が異なり、簡単に線引きできるものではありません。本作はその意味でもプレイしてみなければ掴めない部分があり、購入を様子見されている方も多くいるのではないかと思います。
本記事ではファーストインプレッションとして戦闘とサバイバルに着目し、ゲームプレイを通した比重がどの程度であるのかに迫ります。総合的な批評は、後日「Game*Sparkレビュー」記事としてお届けしますのでお楽しみに!
本作の発売前先行プレイレポートはこちらで掲載しておりますので、併せてお読みください。
少しずつ拡大する戦闘規模
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物語の序盤では、最もありふれたタイプのフリーカーでも一度に2~3体を相手にするのが限界です。後ろから忍びよれば確定でステルスキルできますが、まともに正面からやりあう場合、近接攻撃では少なくとも4~5発殴らないと倒せません。
主人公が扱える銃もしばらくはハンドガン程度しかなく、弾丸もそれほど多くは携行できない状況が続くので、ステルスを主体とした緊張感ある戦闘を強いられます。
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敵対する相手を双眼鏡からマーキングすることで、常に位置を把握できます。クエストの多くは、ひとつの拠点に配置された10~15人ほどの野盗やフリーカーを倒すという内容で構成されており、『ジャストコーズ』『ファークライ』シリーズの拠点攻略をライトにしたものという印象です。
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主人公ディーコン・セントジョンは戦闘やクエストで得た経験値により成長し、様々なスキルを取得します。大幅にゲームシステムが変わるものではないものの、スキルの中にはかなり強力なものが点在しており、少しずつ大胆な戦闘を可能にしていきます。
中でも「敵対反応」というスキルは、ほとんどの敵を常に透視可能とするため(サバイバルビジョンはコストなしでいつでも発動可能)、双眼鏡によるマーキングが不要だと言ってもいい程の強化となります。
物語を進めていくと入手できる銃器も強力になっていくので、フリーカー10体くらいなら引き撃ちしつつ倒してしまおう、といつのまにか強気なプレイになっていく訳です。
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本作のキモであるフリーカーの「大群」は、そんな主人公の戦力では到底無謀とも思える規模を持ちます。数百とも思える対象に誤魔化しは無く、そのあたりをうろついている通常のフリーカーと同様、一体一体にきちんと判定があり、全てを倒しきらねばなりません。
どれだけスキルや強力な銃を揃えても、射撃だけでなんとかしようとするのは無理があります。とは言えこの大群はしっかりと数が管理されているらしく、一部をひっかけては逃げて処理して、ひっかけては処理してを繰り返していくことで確実にせん滅へ近づけていくこともできます。時間は掛かりますが、こうした地道な方法も許されているようです。
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いわゆる大量のゾンビをテーマにしたゲームの場合、主人公達はめちゃめちゃ強い設定にされていることが多いのですが、本作ではそうもいきません。『Left 4 Dead』のように大量の弾丸とスピードで乗り切る訳にもいかず、使えるモノは全部使う必要が出てきます。
携行できる弾薬や爆発物が2倍になるスキルを取得したり、バイクの改造で搭載できる弾薬が増えたりと、少しずつ継戦能力を高めていくことで、結果として大規模の「大群」を打ち倒せるようになるという構造になっています。
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以上のことから『Days Gone』は、複数の戦闘スタイルを同時に可能とするというよりも、ストーリーの進行に合わせて主人公が強化されることによって、ステルスから大規模へ段々と戦闘スタイルが遷移していくゲームだと説明する方が正確ではないでしょうか。
もちろん戦闘システムが変更される訳ではないので、物語後半においてもステルスによる拠点攻略をすることはできますが、装備が整った段階ではさっさと銃で倒してしまった方が早いと感じてしまうのが正直なところです。
サバイバル要素は甘めに設計
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パンデミックにより法治国家としての姿を維持しなくなったアメリカ……生き残った人々はキャンプを構築して、それぞれの方法で社会性を確保しています。食糧や物資は貴重品であり、築いた壁の内側に引きこもるだけでは生きていけません。
そこで必要とされるのが外側へ調達を試みる人々です。主人公はバイクを駆る「ドリフター」として認識されており、各地のキャンプからクエストの形で様々な仕事を依頼されます。
クエスト以外でも、道端で襲われている人を助けたり、動物を狩って肉を届けたりすることで、キャンプ地からの信頼度が上がっていくという要素もあります。信頼度が上がると、キャンプ地にいる人々の発言が少しずつ丸くなっていくのです。
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実際のアメリカにはバイカーギャングという歴史があり、日本の暴走族と比較しても、その無法さはかなりのものであるため、はじめのうちは主人公ディーコンもキャンプの人々も互いを信用していないかのようなピリピリとしたセリフを口にします。
ひとことで現わせるものではありませんが、アメリカの公的なモーターサイクル組織がバイクへのイメージ悪化に対して「99%のライダーは善良である」と発言した時、アウトローを自称する者たちが敢えて「我々がその1%だ」と名乗り始めた過去があります。
本作でもディーコンや相棒であるブーザーが着ているベストに「1%er(ワンパーセンター)」というワッペンが付いており、彼らがそれを自称する背景には様々な意味があるようです。もちろん、現在ではこのワッペンを付けることが犯罪者を自称することに必ずしも繋がる訳ではありません(繋がることもあるでしょう)。
日本においてはファッションとして付ける人もいるかもしれませんが、海外では実際に危険な意味を持つことが今でもあり得るようです。時代によりギャング活動の規模や内容が変化し、アウトローを自称する意味も複雑になっているのではないでしょうか。
ディーコン達が所属していたクラブは「モングルズ」と呼ばれ、鎖を噛みちぎる犬のようなロゴを擁しています。実際のアメリカで極めて危険なバイカーギャングとして知られていた「モンゴルズ」を参考にしているのかもしれません。
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生き延びるためには物資が必要でありながら、その調達をクセの強いバイカーに頼らねばならないというジレンマが描かれます。主人公ディーコンは、そうした偏見の中にはじめは腐ったような態度を取りつつも、自分の生き残る手段としてフリーカーや動物狩りをする生活をしているのです。
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ここまでは主人公に課せられるサバイバル要素の理由を綴ってきましたが、ゲームシステムとしては実際のところ、そこまで大きな比重ではないという印象です。
フリーカーや動物から得られたものをキャンプに届けることで、信頼やお金を獲得できますが、数値としては微々たるものになります。「大群」をせん滅してようやく、意味のある数字となった実感を得られる程度です。
それに対して、クエストクリアによる報酬は、小さなクエスト(NPCに話しかけるだけのイベントなど)でもかなりの量となる為、クエストに集中している方が効率は格段に良いものとなります。
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サバイバルというゲームジャンルは、飲み食いや睡眠といった自己管理を厳しくすることで、リアルな生活感を体験するものが多くなりますが、本作ではそういった制限はそれほどありません。
睡眠の要素はあくまでも昼夜を入れ替える為の機能であり、長時間活動していても特にデメリットは存在しません(ゲーム内で1週間ほど起き続けて検証)。
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移動に必要なバイクの燃料は、この世界設定では貴重なものであるはず。実際に各キャンプで燃料を購入するとそれなりの金額を要求されます。
しかしながら、序盤の主人公達が拠点としている場所や、見捨てられたガソリンスタンドに行けばいくらでもタダで補給できてしまいます。
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しかも様々な野盗の拠点などに落ちている赤いポリタンクさえ見つければ、その場で満タンまで補給できるのです。これらは常に同じ場所へ配置し直されるので、各地のファストトラベル地点を解放していけば、燃料は早々のうちから困ることはありません。
ゲーム開発の段階で、恐らくこのあたりのさじ加減はかなり悩んだのではないだろうかとも思います。ゲームプレイの大半が移動(およびファストトラベル)であることから、仮に燃料の希少性を現在の設定よりも厳しいものにしていた場合、かなりテンポを悪くしていたであろうと感じる為です。
以上のように、本作の舞台設定であるサバイバル要素はお飾り程度のものと言えるでしょう。あくまでもディーコンというキャラクターへのロールプレイの一環であり、その域を超えない強度でサバイバル要素を散りばめていると感じます。
なかなか見えてこないストーリー
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本作はコンテンツ量としては多めである印象を受けます。筆者の感覚としてこれでクライマックスかなと感じたクエストがあり、エンディングへ身構えていたところまだまだ先が続いたという展開でした。
その時点でもかなり時間を掛けてプレイしたと思っていたので、ボリューム感は不足なしと言えます。本作を攻略する場合は、それなりに時間を用意して取り組まれた方がいいでしょう。
クエストも大小含めれば結構な数が存在していますが、さばき切れない数のクエストが同時に現れないよう、複数のクエストラインはそれぞれ段階的に出現するので、クエスト管理に煩雑な思いをすることはありません。
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各キャンプとの関りを通しながら、ディーコンが過去を振り返っていく構成でストーリーが進行します。しかしながら、フリーカーの存在理由や、跋扈しているカルトの正体など、物語の根幹に対しては、中々進展が見られないのです。
中盤まではひたすら、キャンプと無法者達との縄張り争いに付き合い続けているという感覚が拭えません。もちろん劇的な展開はしっかり用意されているのでその点に心配は要りませんが、しばらくは耐えて後半を楽しみにして頂ければと思います。
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筆者の個人的な感想ではありますが、そうしたストーリー進行はクエストの配置によるものではないかと考えます。広めのオープンワールドには、野盗の拠点や、フリーカーの「大群」、観光地点、洞窟などといった特徴ある場所がかなり細かく配置されています。
クエストをこなしているうちに、現時点での筆者のマップはほとんど解放状態となりました。主要なクエストの目的地の途中には、かならず通るような位置にフリーカーの「大群」や「巣」が配置されていて、ひとつひとつきちんと対応していると、広大なマップの様々な地点をいつのまにか攻略していた……という構造になっています。
主要な3つのキャンプを順に巡る構成であること、キャンプに関わるクエストをこなすうちに周辺の土地勘が備わってくることなど、プレイヤーの導線にうまくサブクエストを絡めて、自然にマップ全体を攻略させる狙いがあったのだろうかと推察します。
クエストがそれぞれ小さくまとめられていることもあり、『アサシンクリード』シリーズや『レッド・デッド・リデンプション2』に比べれば、移動時間は少なく感じられることでしょう。
隠れた強力機能「フォトモード」
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本作は2019年の作品としては突出したグラフィックを持つものではないと言えます。筆者の持つPS4では処理落ちも頻繁に起こりますし、キャラクターのモーション等も雑な部分が目に付いてしまう場面があります。
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そんな中で、本作のフォトモードは強力です。ちょっとした写真編集ソフトのような細かい設定で編集できます。その上で、通常は「ベーシックモード」として簡単な編集に絞った機能が表示されています。
こだわった画面に取り組みたければ、上記の画像のようにして詳細項目を展開しましょう。色々と専門用語が並ぶので、筆者も全てを正確には把握していませんが、これまでのフォトモードではあまり見られなかった機能を活用できます。
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これは「奥の色相」という項目の、赤色を強く調整したものです。中央に写っている建物よりも奥側にある森と山、そして空が赤みがかっています。ベーシックな設定では画面全体に大雑把な変更しかできませんが、こうした細かい機能を使えば不思議な画面を作り出すこともできるのではないでしょうか。
ボケの設定に関しても、通常では絞り値と焦点距離を設定するのみとなりますが、詳細な項目では被写界深度の位置や深さも直接変更できるようになっています。
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写真を彩るフレームも色々と用意されています。うまく傾けてみたり、人物の位置を調整してあげれば、同じ場面でも全く異なる印象のある画像を作成できるのではないでしょうか。こんな感じで笑いながら敵をブッ叩くディーコンも作れます。
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どうしても目立ってしまう悪い点
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オープンワールドらしいと言えばそれまでなのですが、情けないバグに遭遇する率は高めです。何かが立っていると思ったら、鹿が頭から地面に突き刺さっていたり……通常なら、主人公が視界に入った時点ですぐに逃げ出すので、余計に目立ちます。
本作のキモである「大群」も、その処理の重さのせいかクリアフラグが立たなくなる場面に出くわします。メインクエストでせん滅する必要のある「大群」をすべて倒した所でゲームが強制終了したり、全てを倒したはずなのに進行しなくなったりと、同じ「大群」を3度もやり直す必要に迫られた時には閉口しました。
ランダムイベントで出現する待ち伏せのスナイパーを攻撃したら、敵の仲間が目の前に突然ポップしたりと、位置関係の処理が雑だと感じる部分もあります。これらのように、バグとしてはインパクトのあるものが続くので余計に目立ってしまうのです。
発売日からプレイする中で、頻繁にアップデートが重ねられていたので(執筆時点でバージョン1.07)、一部のバグについては既に解消されているかもしれません。
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また、同じボタンに複数の機能が割り当てられていて、高頻度で被る場面に遭遇します。倒した鹿の肉を取るボタンと、バイクに乗るボタンが同じ(□)なので、鹿の近くにバイクを止めてしまうと妙にシビアなカメラワークを要求されます。
更に、倒した敵の身体を調べて資材を獲得するのと、敵が足元に落とした武器を拾うのとが同じボタン(□)に割り当てられているので、すぐ近くに重なっている敵と武器とをうまく見極めて調べねばならないのはストレスです(大抵の敵は弱い武器しか落とさないので余計に「そっちじゃない!」とイライラしてしまいます)。
クイックセーブ(バイクの近くで可能)と、武器を素早く切り替える機能も同じボタン(△)であるため、バイクの近くでは武器の切り替えが咄嗟にできなくなったりもします。メニューを開いて対応できますが、道中で襲われた時などのように、バイクから降りて慌てて戦闘する場面もそれなりにあるので、こちらも意外と遭遇率が高くなってしまうのです。
いくつか並べてしまいましたが、本作の悪い点は「悪目立ち」しているものが多いと感じます。全体を通して、主要なゲーム性に関してはネガティブな印象をそれほど持ちません。それだけに、ちょっとした利便性の悪さがずっと続いてしまったり、一部のランダムイベントがひときわ意地悪だったりと、バグと同様に強く印象づけられてしまう部分は特に残念だと言えるでしょう。
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本稿では、プロモーションされている印象では中々見えてこないゲーム性の「度合い」について、ファーストインプレッションとしてお伝えさせて頂きました。読者の皆様にとっての、ご購入の参考となれば幸いです。
後日「Game*Sparkレビュー」として、ストーリーを含めた総合的な批評を採点付きでお届け致します。