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水槽内の環境調節やエサやりなどをして、PCモニタ上で観賞魚を飼うことのできるアクアリウムシミュレータ『Biotope』のプレイレポートをお届けします。
本作はMBL Developmentが開発し、2tainment GmbHによって7月23日に早期アクセス版がSteamで配信されました。MBL Developmentは2010年に設立されたドイツのインディーデベロッパー。開発者たちはUbisoft、Eidos、Southpeakなどの有名企業で働いていた経験があり、『ヒットマン』『スペルフォース』『ベルベットアサシン』などの開発に関わってきたとのことです。本作はそれらとコンセプトが真逆の「癒し」をテーマとした内容になっています(暗殺に癒される人がいるかは知りませんが)。
本作の内容ですが、水槽内の環境を整えて観賞魚を飼うアクアリウムシミュレータです。「水槽シミュ」というと、おっさん世代であれば『アクアゾーン』を思い浮かべることでしょう。『アクアゾーン』は日本のデベロッパーであるシノミクスが開発し、PCやコンシューマー機(セガサターン、Xbox 360、ニンテンドーDS)などで発売されました。一時期、どこの家電量販店のソフトウェアコーナーに行っても見かけるというぐらい置いてあった記憶があります(台湾でもコンビニに普通に置いていました)。ゲームではなく「環境用ソフト」という点で幅広い層に受けたのだと思います。
本作も基本的には『アクアゾーン』と似た内容で、敵を倒したり対戦相手に勝ったりする必要はなく、ただ観賞魚を飼って眺めて(プレイヤー自身が)癒されるというのが目的です。しかし放置しておけばいいというものではなく、ゲーム内とはいえ観賞魚たちは生きています。水質が悪くなったり、水温の調整が適切でなかったり、餌をやらないでいれば死滅することもあるでしょう。「癒しゲーム」なので気合いを入れてプレイする必要はない気はしますが、さっそくプレイしていきましょう。
まずは飼育の基礎を学ぼう
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やけにシンプルな青地のタイトル画面からゲームスタート。名前の入力を求められたので「GameSpa」としておきました。ちなみに水槽で魚を飼い始めると、青地の背景がプレイヤーの水槽に変わります。
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次に水槽(ゲームモード)を選びます。「Tutorial Tank」はチュートリアルで、観賞魚の飼育を学ぶことができます。「Empty Tank」はカラの水槽を使って、自分だけの水槽を一から作っていくモードです。「Amazon Tank」「Malawi Tank」では最初から水槽内環境と観賞魚が用意されているので、「作るのが面倒」という人はここから初めて、とりあえずどういうものか見てみるのもいいかと思います。
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チュートリアルを開始。殺風景な水槽が現れました。観賞魚を入れる前に、まずは水槽の環境を整えてあげなければなりません。いきなりこんなところに放り込まれては、魚の方もたまったものではありませんからね。画面左下のアイコン(アイテムの追加・削除・変更)をクリックします。
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水槽内に設置できるアイテムのアイコンが画面下部に並んでいます。海や川と違い、水槽内の水は移動しませんので、そのままにしておくとどんどん汚れていきます。まずはフィルタを設置しましょう。ちなみに台湾にいる筆者のおじが熱帯魚を飼っていますが、実際はフィルタだけでは汚れを取り切れないので、定期的に水槽の水換えや掃除などといった面倒なことをしなければなりません(当然掃除中は魚を別の場所に移動させないといけない)。このあたりの作業に疲れて飼育をやめてしまう人も多いのですが、ゲームでは面倒なことがありませんので、そういう方は本作で復帰するのもいいかもしれませんね。
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画面下のフィルタを水槽にドラッグ&ドロップすれば設置完了。フィルタをクリックすると、設定をさらに細かくいじることができます。ノズルをどれだけ開くかやその向き、ベンチュリの絞り(流速の変更)が可能です。今は必要なさそうなので、デフォルトのままにしておきます。
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先ほどのウインドウで「Mains」にチェックを入れると、フィルタが起動します。泡がブクブクと出てくる動きがなかなかリアルでいいですね。ちなみに実際のフィルタは水中に置くタイプ以外に、機械部分を外付けにしてパイプだけ水槽に通すものもあります。特に大きい水槽だと、ろ過部分の機械も大きくなってしまうので(あと見栄えの問題で)、外付けにすることが多いです。逆に小さい水槽だと、コストの問題と外部フィルタを置く場所がないということもあるので、水中にそのまま放り込むタイプのフィルタを使います。水槽のヘリに引っ掛けて使うタイプのフィルタなどもありますね。
ショップで必要なものを購入
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フィルタを設置しただけでは殺風景なので、水槽に背景を付けましょう。最初から用意されている背景があるので、これを設置します。これで見栄えがよくなりましたね。ほかの背景が使いたい場合は、ゲーム中のショップから購入することができます。
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石などを置いて水槽内のデコレーションもしたいので、ショップを覗いてみます。大半がアンロックされていない状態なので、利用できるものから購入。一つ7.5ユーロと結構いい値段です。
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次は水草を購入。見た目で選んでしまってもいいのですが、水草には光合成のパフォーマンスや、水温・水質への適性などがあります。一般的に水草は弱酸性で育つので、水のpHには注意しておいたほうがいいでしょう。またこのあとで購入する観賞魚にも水温・水質の耐性があるので、それも考慮しておく必要があります(最初はそこまで考えなくてもいいとは思いますが)。
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次に観賞魚を購入します。これも見た目で選んでしまっていいですが、先ほども述べたように水温・水質の耐性があるので、ほかの種類の観賞魚と同居させるときは、なるべく似た環境で育てられるものを選ぶのがいいでしょう。水草も含めてセットで考えるのがいいですね。
ショップでアンロックされている観賞魚は、初心者でも育てやすいテトラ種のみ。水温・水質ともに耐性の幅が広く、リアルショップでもよく売っている青い熱帯魚「ネオンテトラ」を5匹購入します。ちなみにグッピーもいますが、残念ながらアンロックされていません。
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熱帯魚なので、水温を調整するためにヒータを購入。消費電力によって値段が違ってきます。150Wのものを買うよう指示があるのでこれを選びます。これで必要なものはだいたい揃ったかと思います(水槽のランプはデフォルトで付いています)。あとはこれらを水槽に配置していきます。
水槽を装飾しよう
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ショップから出て、水槽モードに戻ります。先ほど購入した石を、ドラッグ&ドロップで好きなように配置していきましょう。とりあえず適当に置いてみましたが、まだ寂しい感じですね。
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次に水草をおいていきます。フィルタは見苦しいので水槽で隠してしまいましょう。これで少しはそれっぽくなってきました。あと水槽の左側にヒータも設置します。
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次にヒータを起動させます。先ほどのフィルタのときと同じように、「Mains」にチェックを入れます。温度の調節はその下の「Setpoint」のバーで行います。25度にするよう指示があったので変更しておきましょう。
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水槽内の水が温まるまでしばらく時間がかかります。ゲーム中の時間は現実時間と同じ進み方をしますので、待ちきれない人は画面下の早送りボタン(100倍速と1万倍速)を押して時間を進めましょう。
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水温も上昇し、これでいよいよ(というか、やっとというか)ネオンテトラを水槽に入れることができます。緊張の瞬間ですね。ドラッグ&ドロップでどんどん入れていきましょう。
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ネオンテトラを入れましたが……ちっさ!目を凝らさないとどこにいるのかわからない大きさです(クイズ「どこにいるでしょう?」)。まあ、実際のネオンテトラも3センチぐらいしかありませんしね。それにこの大きさだからこそ小型の水槽でも飼うことができるので、人気がある観賞魚とも言えます。
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次はネオンテトラに餌やりをします。下のメニューから餌を水槽にドラッグ&ドロップすると、どれだけ与えるかを決めることができます。「0.2g」との指示があったので従っておきましょう。消費アイテムなので、使った分だけ減ります。
水質管理で観賞魚のストレスを減らそう
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餌やりも済み、チュートリアルはこれで終了になります。ここ先からはクエストをこなしていくことで、経験値とお金を稼ぐことができます。レベルが上がればショップ内のアイテムがアンロックされていきます。
最初のクエストは、時間をしばらく早送りするだけのものです。本作の早送りは便利なのですが、水槽内のコンディションが適切でない場合、早送り中に魚がバタバタ死んでいくということにもなりかねないので注意が必要です。またクエストによっては時間制限もあるので、クリア条件はよく読んでおきましょう。
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夜になると水槽が自動的に暗くなります(ゲーム内時間は画面右上に表示されています)。明るくしたければ、画面右下の電球アイコンからランプメニューを開き、「Time switch」をオフにすればライトが点きます。「Time interval」の項目では、何時から何時までランプを点けるかの設定ができます。
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2日目の朝がやってきました。ネオンテトラたちはまだ健在です。ネオンテトラや水草をクリックすると、健康度やストレスレベルなど各種コンディションが表示されます。これで定期的に健康状態をチェックしておくといいでしょう。またクリックしたときに出てくるメニューから「Camera Focus」をクリックすれば、選択したものをアップで鑑賞することも可能です。
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先ほどのメニューの「Info/control」でネオンテトラのステータスを詳しく見ることもできます。ステータスバーの緑色の部分は適した環境という意味で、白い線は現在の水の環境ですが……水槽内のpHがアルカリ性(pH7.92)になっていますね。ネオンテトラに11%ほどのストレスが発生しています。また水草のストレスは60%を越えています。
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弱酸性(pH6~7)の環境が望ましいのですが、pHの時間経過のグラフを見てみますと、上がり続けています。pHが上がる理由としては、一般的には光合成などにより水中の二酸化炭素濃度が低下することや、岩や貝殻などから石灰や炭酸カルシウムが溶け込むことが挙げられます。pHを下げるには単純に二酸化炭素を供給してやったり、pH降下剤を入れるという方法もありますが、このゲームでそれができるかはわかりません。
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KHの方を見てみると、こちらは順調に下がっています。KHは炭酸水素イオンの量で、これが高いとpHの変化が緩やかに、低いと変化が激しくなります。一般的にKHが低ければ酸性に寄っていきます。
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ストアに何かないか調べてみると、塩酸や硫酸水素ナトリウムが売っていました。どちらもKHを下げる効果がありますが、塩酸の方が強力ですね。試しに塩酸を買ってみましょう。ネオンテトラはいったん水槽から取り出した方がよさそうですね。
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ネオンテトラを取り出してから塩酸を投入。入れる量を自分で計算しないといけないのかと思いましたが、自動的に使用後のpHを算出してくれています。pH6.3ぐらいにまで落としておきましょう。
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時間を経過させて結果を見てみると、いったんpHは6.3まで下がり、そのあとすぐに急上昇。それからゆっくりと低下しています。まだ弱アルカリ性ですが、KHのほうは1.5まで下がっていますし、ネオンテトラのストレスも0になったので、このまましばらく経過を観察しておきましょう。ちょうど「5日間、観賞魚のストレスを20%以下にしろ」のクエストが出てきたので、これにも挑戦。水槽管理の試行錯誤はこれからです。
のんびりとプレイしたいアクアリウムシミュ
本作は水槽内のpHやKH、二酸化炭素など、実際の飼育に必要な各種データやその推移を見ることができるので、観賞魚の飼育経験がある人なら取っ付きやすいかと思います。それに手を汚したり、フィルタ交換や水槽の掃除など面倒なことをしなくていいのも良いですね(お金が掛からないというのも良い点です)。
ゲームにリアリティがある反面、チュートリアルがアイテム設置の説明だけで終わってしまうため、pHやKHなど飼育についての基礎知識がないと、少々厳しい部分もあるかと思います。このあたりは自分で調べるなり、書店で入門書を買って読むなりするといいかと。「これから実際に観賞魚を飼う!」という気持ちでやれば、いろいろな知識がついて楽しくなってくるかと思います。
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「ただ魚を眺めていたい」という方は、完成した水槽が最初から使える「Amazon Tank」「Malawi Tank」でスタートするといいでしょう。「ScreenSaver mode」にすれば時間は経過しませんので、水槽で魚が泳いでいる様子をいつまでも眺めることができます。モニタが2台ある方は、片方で本作を起動させて「水槽用モニタ」にしてしまうのもいいかもしれません。
日本語サポートはありませんが、テキスト自体は少ないので、アイテムとクエストに書かれている内容が理解できれば問題ないかと思います。クエストは時間の掛かるものが多いので、気長にやるのがいいかと。基本的に本作は、水槽内を泳ぐ観賞魚を眺めるのが目的なので、あまりあくせくせずにプレイするのがいいかなと思います。ゲーム時間と実際の時間を一致させてリアルタイムプレイするのもいいかもしれません。
まだ早期アクセスということもあり、ショップのアイテムの種類(フィルタの種類は増やして欲しい)や魚の動きのパターンが少ない(基本一方向に動き続ける)、バグがいくつか見られる(ゲーム終了時にフリーズしてセーブデータが消えたというのにも遭遇しました)などの問題もあります。今後の開発で、魚が障害物をよけて餌を取りに行ったり、群で集団行動を取るようになったり、明るい場所や暗い場所を探しに行ったりなど、動作パターンを増やしていく予定があるとのことです。他にも地形変更やカメラモードを使いやすいものにするなども考慮しているとのことなので、今後のアップデートやModなどに期待したいと思います。
製品情報
『Biotope』
開発・販売:MBL Development、2tainment GmbH
対象OS:Windows、MacOS
通常価格:2,050円
サポート言語:英語、ドイツ語
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/549040/Biotope/
■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国の歴史ものを書いている作家。母は台湾人。人生の大半を中国と台湾で過ごす。中国の国立大学で9年間講師を勤め、現在台湾在住。シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら。