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無限に広がる大宇宙、それは、人類が叡智をかけて挑む無限のフロンティア。地上から見上げる夜空の星が輝く陰でワルの笑いがこだまする。星から星に泣く人の涙背負って宇宙の始末……
今回の特集記事では、これから冬至に向けじっくりと腰を据えて遊びたいゲーマーのため、唐突ながら、そんな情け無用な方向性(ロールプレイ)だって楽しめるオンライン宇宙船フライトシム『Elite Dangerous』の紹介をしていきたいと思います。
どういうゲーム?
本シリーズはDavid BrabenとIan Bell、2人のクリエイターによって手がけられた宇宙船を操作し宇宙を探索していくシミュレーションゲーム。1984年に発売された『Elite』から始まり、その後紆余曲折を経てDavid Braben主導で1993年『Frontier: Elite II』、1995年『Frontier: First Encounters』が登場。初代『Elite』は当時ポリゴン表示すら覚束なかったPCにおいて、自動生成などを応用し広大な宇宙空間を再現したオープンワールドゲームとして、数多くの『Elite』ライクなゲームを生み出し続けることになりました。
シリーズはその後、複数回の『Elite 4』の噂を超え、初代から実に30年の歴史を経て2014年に、本作『Elite Dangerous』、その後の2015年に大型アップデートとして『Elite Dangerous Horizon』が発売されました。歴史を紐解いても古典かつ現役としてフロンティアを走るゲームです。
本作の軸はいくつかありますが、私は「プレイヤーがスペースシップを操り銀河を自由に駆け巡る」という部分に心打たれています。プレイヤーは「Commandar」となって自分の宇宙船(スペースシップ)を持ち、自身の操縦で銀河のあちこちに存在する星系(システム)へ飛んで行く。時にはそのシステム内の軌道ステーションや、惑星地表にある基地にドッキングして翼を休めたり、道中出会った他のCommandarたちと編隊でミッションをこなしたり…最高ですか。最高ですよ。
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各ステーションに用意されている様々なミッションからは、「探索」「配達」「取引」「サルベージ」「旅客輸送」といったものから、ちょっとダーティなお仕事「傭兵」「暗殺」「密輸」というものまで何でも選ぶことができます。
また明確な敵として過去シリーズにも登場した 「Thargoids(サルゴイド)」と呼ばれる宇宙生命体に関連するミッションも存在。これらのミッションはクリアすることで報酬が支払われ、その資金を用いてさらに装備を整えてアップグレードしたり、より大型のスペースシップを購入したりできます。
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本作唯一のギャルゲー要素といっても過言ではないはず
またミッションの発注者はそれぞれ勢力に所属しており(帝国、同盟、連邦)、ミッションクリア時には報酬以外にその勢力内での「評判」が高まる見返りもあり、それによってアンロックされる限定ミッションとシップも存在します。
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マップの広さは銀河のバックスクリーンまで
ここでは『Elite Dangerous』のなかでも特に大事なマップについて紹介しましょう。本作は「天の川銀河」を1/1スケールで再現しており、天文学的な規模のゲームプレイが楽しめます。もちろん人類が現時点で発見しきれていない星々については架空のものを割り当てていますが、それ以外は現実に即しています。とは言え、いきなり「天の川銀河のサイズ」なんて言われてもピンとこない方も多いことでしょう。なにはともあれまずは下の画像を御照覧あれ。
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どうです、長距離でしょう。これは画面右下から中央上部までの移動ルート図です。だいたい画面いっぱいこれだけで数百光年分の距離があります。光の速さで突き進んでもなお年単位で時間のかかる距離、もしスペースシップのジャンプ機能(ワープ、詳しくは後述)を使用しなければプレイヤーのリアルな寿命を引き換えにしても目的地にはたどり着けません。むかしPS3ソフト『GT5』でルマン24時間耐久レースがありましたが、これはその比ではないレベル。いずれにせよ、目的地はとんでもなく遠いということが伝わりましたでしょうか。
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では続いてこちらの画像をご覧ください。宇宙を螺旋に渦巻く「天の川銀河」です。やっぱり大きいですね。ところで右下にある青色のアイコンは何なんでしょうか?小さいですね。
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ええ、先のルート図を天の川銀河のなかで見た場合のサイズ比です。意味が分かりませんね。もう一度見てみましょうか。
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…意味が分かりませんね。ちなみにここに写っているいる光点はすべてCommandarがアクセスできる星です。 フレドリック・ブラウン氏の小説から言葉を借りるならまさに「天の光はすべて星」なのです。
一部ではシップをアップグレードして遠くまで足を伸ばせるよう装備を整えて、銀河の端から端まで探検に繰り出すCommandarたちもいます。発売からそろそろ5年が経ちますが、それでも探索されたシステムは銀河全体の0.04%程度という恐るべき進捗。あらためてこのゲームの天文学的な規模の大きさが伝わったことと思います。
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宇宙の相棒スペースシップ
本作もう一つの大事なポイントである「スペースシップ」について触れていきましょう。この醍醐味は操縦にこそあります。ドイツのEGOSOFTが手掛けた宇宙シム『X3: Terran Conflict』をかつて遊んだ際にもそのスケール感に心打たれましたが、本作はそれとは別の方向性で「俺はいま巨大な船体を操って、宇宙を飛び、ステーションにドッキングを行っているんだ……!」という感動がひとしおです。
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プレイヤーはこの世界に生まれ落ちた直後は「Sidewinder」というはんぺんのような形をした宇宙船を貰います。(余談ながら、はんぺん型宇宙船は初代からの伝統。当時は使えるポリゴン数が少なかったですからね)これは今後乗り換えても、撃墜された際には無料で再度乗り込める機体でもあります。
細かい性能などについてはともかく、さっそく宇宙に飛び出してみましょう。ステーション待機中、目の前に表示されるコマンドを選択することで、機体がハンガーからステーション表面の発着パッドへ自動で運ばれロックが解除されます。
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この間視点をあちこち見回してディテールを観察すると「あーここはまだ工事中なんだ」とか「この広告に出てるシップはカッコ良いな」と世界の雰囲気にぐいぐい引き込まれます。筆者はこの時点でネズミの国の今や懐かし「ス〇ー・ツアーズ」を思い出して悶絶してました。
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さあ発進で……す?……ッツ…!!…ちょっと見てくださいチェックリストですよ!!!
「チェックリスト」とは実際の航空機の運航においても操縦士が一項目ずつ確認作業を行うリスト。私は初プレイ時にこれを見た時はすっかりこの『Elite Dangerous』世界にのめりこんで大興奮したものです。とはいえ毎回離陸のたびにこのリストをこなすのはゲーム上では大変…ご安心ください設定によって後からOFFにもできます。
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鼻息荒くしつつも発進シークエンスは無事こなしたので、ステーション圏内から漕ぎ出しましょう。宇宙空間では上下左右自由に機体を操作できます。ブーストを焚いて加速をつけるもよし、フリーカメラモードに入って機体周囲の星々を眺めてクルーズするのも良いでしょう。
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しかし目的地までこの速度で飛び続けるにはいささか遠い。なんてったって光速で一年かかりますからね…先に紹介したマップ規模から考えるとまさに命がけの距離です。ではどうするか?そう、FSDです。フレームシフトドライブ、俗にいうジャンプ機能(ワープ)でありますがこれを使用することで目的の星系までひとっとび。現地への着陸およびドッキングまで含めて実時間数分でこなせる関心な機能です。
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ただし、機体によってこのFSD「どれくらいの距離ジャンプできるか」という性能が異なります。もっと言うと装備自体のランクによって性能は千差万別です。しょっぱいランクで超長距離ルートを進もうとすると、ちまちま短距離ワープを繰り返すハメになるのでとても大変です。これでは目的地のステーションにたどり着くころにはヘトヘトになっていることでしょう。装備は可能な限り高ランクのものを揃えていきたいですね。
ところでステーション周りにはだいたい他の機体も飛んでいます。NPCだったり他のCommandarだったりしますが、とりあえず挨拶チャットを飛ばしてみると良いでしょう。なおそこでうっかり射撃ボタンを押すと事故の元です。
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以前ステーション内で誤射した筆者はセキュリティシステムの自動防衛によってハチの巣になり撃墜されました。
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Welcome back, Commandar.
ともあれもっとジャンプ距離のある装備と機体を買うべく、ミッションを受注して資金を稼いでいきましょう。
でも「稼げるミッション」って何でしょうか?これは個人の好みや、その時のゲームバージョンなど色々な要素が絡むため一概には言えないのですが…私は「輸送」ミッションが良いかなと感じます。ここからは自分の経験を例に書いていきますが…最初は情報データのみの受け渡しから初めて小銭を稼ぎ、ある程度貯金出来たら足の長い機体へ乗り換えてみるというのも良いでしょう。
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というわけで乗り換えました。こいつは「Cobra MkIII」といい、ジャンプ機能と貨物室の積載量の面でコスパ良しの機体です。ここからデータだけでなく「貨物」の輸送も始めると、報酬金額も徐々に上がってくるので貯金の勢いもついてきます。
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さらに乗り換えました。この娘は「Asp Explorer」、移動は小回りが利いてジャンプ機能の伸びしろが高く、さらに燃費性能も素晴らしいことから遠方星系への探索にはこの娘を使うベテランCommandarも多いです。積載量も上2つの機体に比べて大幅に増えて、ミッションはさらに報酬の高いものへシフトしていきます。
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稼ぎが安定して、資金も大台に乗り始めたころ乗り換えたのがこの「Type-9 Heavy」。単体だとわかりづらいのですが、機体サイズが戦艦と同等の最大クラスです。そのため積載量は「Asp Explorer」のおおよそ7倍!本来であれば複数人でこなす前提の大型輸送ミッションも、この娘にかかれば届け先との往復数回で済んでしまうことがあります。おかげでひとりで複数人分の報酬を受け取りがっぽり大儲け!なんてことだってできてしまいます。
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ところが、機体が大きいぶん当然足回りは鈍重そのもので、旋回するのも一苦労。筆者はジョイスティック捻りながら首も捻り、そのうち身体もつられてもっていかれて全身がねじ巻き鳥になりました……。
まあ、もちろんそんなカメのような動きを見せていれば、貨物を狙ったNPCや略奪ロールプレイを楽しむ他Commandarたちにとって格好の餌食になります。彼らが仕掛けてくるタイミングはFSD中です。ジャンプ中のシップに干渉して通常空間に引きずりおろすFSD Interdictorという装備があり、これを当てられた場合、逃げるためには下の画像のように右へ左へと機体をふりまわして振り切る必要があります。
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この左右の青と赤のパラメータのうち青い方に振り切れると脱出成功
このとき重要になってくるのはやっぱり足回りの機敏さであり、「Type-9 Heavy」だと最高級のブースターを整えていたとしてもなかなか苦労する部分です。いやあ装備が整っていなかった最初の頃何度撃墜されたことか…!しかしそんな艱難辛苦を乗り越え性能を上げていき、機体を手足のように操り動かせていると実感できた時の感動たるや。特に筆者はフライトシム用のジョイスティックでプレイしていたので、それはそれは筆舌に尽くしがたいものがありました。
なお、今後のアップデートでは上記機体達を搭載できる「宇宙空母」クラスの機体がプレイアブルになるということもアナウンスされました。これは今から期待に胸が高鳴りますね。
今後も宇宙での冒険は広がっていく
上記のように私はシップの操縦を楽しむことを主としてプレイしていますが、装備のアップグレードや探索、輸送ミッションを行う際に外部サイトと連携して情報を調べてFSDのジャンプルートを定め、フライトプランをコツコツ作る作業も大いに楽しんでいます。自分がこの『Elite Dangerous』の世界で生きているような、そんな感覚が楽しくて仕方ありません。
もしできることなら、このままシステムについて微に入り細に入り掘り下げて、さらにはロールプレイの視点から勢力図各代表の人間(具体的にはアシュリンデュバル様)の半生にも触れつつこの『Elite Dangerous』世界を書きたいところですが…語りつくすにはそれこそ天文学的な時間を使っても足りるかどうか…そういう理由でここから先は、この記事を読まれている方々ご自身でどうか遊んでいただけたら幸いです。
最後に、Commandarたちのちょっとした面白くも興味深いニュースを紹介してこの記事を締めくくりたいと思います。私はこのニュースは、この世界を心から楽しんでいる人々が織り成した最高の物語のひとつだと感じます。
参考記事:
宇宙MMO『Elite Dangerous』銀河の果てで遭難していたプレイヤーが無事救助される