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2020年3月26日に発売予定の『DOOM Eternal』は、2016年版『DOOM』の正当続編です。『DOOM』シリーズはFPSジャンルの代名詞とも言える歴史を持ち、原点とも評される人気を獲得してきました。
基本的にはシングルプレイであり、ストーリーラインも一本道、ゲームプレイのほとんどが敵(悪魔)との撃ち合いに終始するという、純粋なFPSと表現しても過言ではないシステムを採用しています。
FPSというジャンルはこれまで、リアル指向、チーム戦、サバイバル、バトルロワイアル……と様々な新機軸が登場し、その度に新たな工夫を貪欲に取り入れ合い進化させてきました。そんな中で、ナンバリングを廃して登場したのが2016年版『DOOM』です。
プレイの快適さという意味では、もちろん最新作に相応しい調整がされているものの、あえて原点に立ち返るかのようなタイトルが生き残れるのか……というファンの心配を一蹴するかのように高い評価を獲得し、まさに原点にして頂点!!最強は俺だ!!立ちはだかる奴は全部倒す!!弾をよこせ!!殴らせろ!!次はどいつだ!!ウワー!!面白いィィィ!!!
『DOOM』は単なる脳筋ゲームじゃない
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ここで冷静になりましょう。血沸き肉躍る一人用FPS、それもPCタイトルが中心となっている作品は、正直なところ「他のジャンルと比較すると日本人プレイヤーは少ない」傾向にあります。『DOOM』はゴア表現も強烈ですし、多くの敵の中に飛び込みつつダメージを食らいながら駆け抜けることを前提としたアクションでもあるので、人を選ぶことは間違いありません。
『Overwatch』や『Apex Legends』といったチームによる戦略性の高いFPSの方が、全体としてはメジャーと言えるかもしれません。今回はそんなプレイヤーの方々に向けて、丁寧に『DOOM』の面白さを分析しながら、新作『DOOM Eternal』の魅力もお伝えします。
『DOOM』は名作だ!!間違いない!!と思えているアナタには先に申し上げます。ならば『DOOM Eternal』もそれ以上に間違いない、と。単なるひとりのライターに過ぎない筆者が、ゼニマックス・アジアさんの本拠地で数名に後ろから見られつつも構わず黙々と遊び続けたくらいには。
興奮と沈着の間で
上記の動画は、取材先のゼニマックス・アジアさんで実際に筆者がプレイしたものです。荒々しい戦闘が続く映像となっていますが、こうしたジャンルのFPSを遊んだことのない方にとっては、ひたすらバーサーカーのような戦い方に見えることでしょう。
しかしながら、『DOOM』はただアドレナリンの分泌に任せて勢いだけで戦えるほど甘くはありません。そこには、敵の弱点の把握、自分や敵の立ち位置、装備品の状態、落ちているアイテムの位置、利用できそうな地形……といったものを総合的に分析して次の行動を判断するという冷静な思考が必要となります。
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悪魔にも恐れられる無敵の主人公……と作中では描かれているのですが、実際のところは油断しているとすぐに倒されてしまいます。かといって貧弱な設定ではなく、確かに「強力な主人公」を操作する実感も得られるのです。
その一見矛盾しているかのようなゲーム体験を可能としているのが、様々なアクションと、それに付随するリターンの繰り返しです。どういうことなのか、これからひとつひとつ紹介していきます。ほとんどは2016年版『DOOM』と重なる内容となりますが、これらを把握した後に上記の動画を改めて視て頂ければ、プレイヤーの動きの意図がハッキリしてくるはずです。
チェーンソーで弾を取れ!!!
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『Escape from Tarkov』のような、リアルさを主軸にしたタイトルでもない限りは、弾の数に悩まされるFPSは少数派です。『DOOM』は勢いのあるゲームプレイを体験できますが、その印象に反して弾の数はシビアなものとなっています。
「ということは、アイテム探しが必要?」と思われるかもしれませんが、それではせっかくのゲームテンポが損なわれてしまいます。『DOOM』では、戦闘が発生する地帯に都合よく弾薬が落ちているので、戦いながら補充できます。
しかし、作中に登場する敵キャラは何と言っても「悪魔」です。ちょっと攻撃したくらいでは倒れてくれません。初期状態では16発しか所持できないショットガンの弾薬にも関わらず、最も弱いゾンビのような敵に対しても、少し離れてしまえば1発では仕留められません。つまり、落ちている弾薬だけでは不足する場合があるのです。
そこで用意されているシステムが「チェーンソー」です。燃料がある場合に、近くのザコ敵に向かってチェーンソーを使うと敵の身体が弾け飛ぶのと共に大量の弾薬がドロップします。何故そうなるのかは分かりませんが、そうなっているんです。
銃で敵を確実に倒しつつ、しっかりと残弾数も把握して、タイミングを見計らってチェーンソーを使うというひとつの判断がここで生まれます。動画を見返してみてください、時々チェーンソーを使っていますね?これはグロいシーンを求めてわざわざ選んだのではなく、戦略的なリソース管理だったのです。
痛い時は歯を食いしばって殴れ!!
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弾薬以上に見つからないのが回復アイテムです。四方八方から登場する悪魔たちがひたすら攻撃を重ねてきますので、一切ダメージを食らわないという訳にはいきません。欲しい時に限って落ちていないのが回復アイテムというもの。どうしたらいいのでしょうか?
そんな時は弱った敵を思い切りぶん殴りましょう。体力が弱った敵は青い光で点滅しますので、近づいて「グローリーキル」キーを押すと、専用のモーションが発生して確実に敵を仕留めてくれます。すると、なんと回復アイテムが周囲に散らばるのでピンチを脱却できます!グローリーキルの発動範囲に入った敵は、オレンジ色に光るので確実に狙えるというわけです。
グローリーキルの間はダメージを食らわないので安心です。攻撃を食らいすぎてしまったと思ったら、手近な敵を弱らせて体力を繋いでいきましょう。これにより、大型の敵と戦いつつ、ザコ敵をあえて生かしておくなどといった戦略が生まれてきます。またまた動画を見返しましょう。ボコボコと敵をちぎっては投げしていますが、これもストレス発散ではなくして、あくまでも体力管理の為の行動だったのです。
悪魔を燃やすと防御力が増えるよ
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『DOOM』や『Quake』といったシリーズには「アーマー」という要素があります。体力とは別の数値で、ダメージを軽減してくれます。アーマーはダメージによって消費してしまうのですが、ステージに落ちているのでこちらも補充可能です。
アーマーがあるのとないのとでは、生存率が大きく変わります。大胆な戦略も取りやすくなるので、できれば常に補充しておきたいところです。しかしながらその性質上、最も先に消費されてしまうものでもあります。
有効なものであるだけに、弾薬や回復アイテム以上に見つかりません。一気に最大値まで補充されるアイテムが配置されていたりもするのですが、そう都合よくはいかないものです。
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そんな時は悪魔を燃やしましょう!!「フレイムベルチ」を起動すれば、左肩からしめやかに出てくるランチャーが火炎を放射してくれます。炎にまみれた敵を倒すと大量のアーマーをドロップするので、これで形勢逆転!!獲得した防御力で一気に攻撃へ転じましょう。
フレイムベルチは時間経過で回復するタイプなので連射はできません。やはりアーマーは貴重なリソースですので、ここぞという場面で活用します。戦闘に集中しすぎていると、その存在を忘れてしまいがちになるので、努めて冷静さを保つことが大切です。
これら「弾薬」「回復」「アーマー」のどれを獲得する為に敵を倒すのか。この判断を見誤れば、目の前に落ちていたはずの挽回のチャンスが離れていってしまうのです。
弱点を正確に狙って活路を開け!
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この丸くてカワイイ悪魔は「カコ・デーモン」と呼ばれ、シリーズの初代から登場する伝統的なモンスターです。コイツの弱点は爆発物を飲み込ませることであり、成功すれば一発でグローリーキルが可能な状況まで持っていけます。
『DOOM Eternal』の初期武器であるショットガンには「スティッキーボム」というアタッチメントが存在します。これらは「武器MOD」と呼ばれ、MODボタン(マウスでは右ボタン)を押しながら発射すると、身体にくっつく爆発性の弾薬を投射できるのですが、コイツをカコ・デーモンの口の中に放り込んでやればいいのです。
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弱点は赤くハイライトされる場合がある。
このようにして、悪魔にはそれぞれ弱点が設定されています。強力なロケットを背中に背負っている悪魔なら、そのロケット砲台自体を破壊して攻撃力を削ぐこともできます。カコ・デーモンはタフな悪魔なので、ただひたすら弾薬を撃ち込むだけでは戦いが長期化してしまうでしょう。
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『DOOM』シリーズはステージを進めていく中で、複数の武器を入手していく構成となっています。ショットガン、アサルトライフル、ロケットランチャー、プラズマライフル、スーパーショットガン……と強力なものばかり。『DOOM Eternal』では、更にそれぞれの武器に複数の武器MODが存在し、戦闘中でも素早く切り替えられます。
これらの武器は入手次第、全て常に携帯して攻略できます。いわゆるロードアウト設定のような概念はなく、手に入れたものは全て活用せよというスタイルなのです。これまでに紹介した要素だけでも、瞬間的な判断力を要求され続けることが分かるかと思いますが、敵の特徴に合わせた武器の切り替えも戦略の内に入ってきます。
今回用意した動画では筆者の技量が未熟だった為、適切に武器を切り替えながら戦うところまでは実現できませんでした。弾切れになったら次の武器を使う……といった程度となってしまっています。ですが、戦いを繰り返していくうちに「プレイヤーの実力」として培われ、少しずつ適切な戦闘をこなせるようになるでしょう。それこそが『DOOM』をプレイする上での喜びと言えるのかもしれません。
「何を楽しむか」を多層的に選択する構造
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ここまでは、興奮冷めやらぬ戦闘の魅力を分析してお伝えしました。もちろんそれこそが『DOOM』の醍醐味なのですが、それだけではありません。初代から伝統的に探索要素も大きな魅力として評価されているのです。
実際のところストーリーやバックグラウンドについては、プレイヤーの間であまり語られることのない作品と言えるかもしれません。とはいえ前作『DOOM』では、しっかりと探索すればそれなりの数のテキストや演出を発見できるのです。
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「悪魔から恐れられる存在」である主人公は、なぜ悪魔に対してこれほどまでに怒りを持っているのか。戦闘狂として描かれているはずの彼が、時として最先端の装置を冷静に操作するような表現がなされている理由とは何か(前作2016年版『DOOM』に登場するAI、「VEGA」を主人公がどのように扱ったのかは必見でしょう)。
明確な部分までハッキリと描かれている訳ではないにせよ、探索によって人類や悪魔たちの歴史を読み取れる資料が登場します。かつての主人公と思われる人物がいかに恐ろしい存在だったかを綴った、悪魔による文章などは笑えてしまうほどです(悪魔には全く笑えないでしょうが)。
もちろん、ひたすらエンディングに向かって戦闘まっしぐらでも十分楽しめます。何らかのバックグラウンドに気付けなかったからといって、エッセンスを損なったり、真の意味で楽しめないなどといったことはありません。
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「とにかくアクションを楽しむ層」の部分だけを見ても、十分に楽しめるようになっています。それでいて「設定資料を読み込んで楽しむ層」に目を向けてみると、また味のある体験を得られます。
広大なマップから「隠し要素を探索して楽しむ層」に注目すれば、より高い難度の場所へ挑めたり、主人公を更に強化できたりと、箸休めと呼ぶには手応えの大きい達成感に到達できるでしょう。
これらは常にゲームプレイの中に存在しており、モード選択のような形で提供される訳ではありません。戦闘の中で瞬間的な判断を要するのと同様に、今は戦闘・ストーリーを進めようと考えるのか、このマップはしっかり探索しておこうと考えるのかさえも、選択はプレイヤーへ委ねられているのです。
様々な強化はシナジーを生む
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それでは、探索によって得られる「強化」を紹介しましょう。前作『DOOM』と似ている部分もありますが、『DOOM Eternal』のそれは、よりバリエーション豊かなものとなっています。
まずは「武器MOD」関係です。ほとんどの武器にはアタッチメントが用意されており、ステージ内で入手することで整っていきます。初期装備のショットガンならば、粘着爆弾のような弾を発射できる「スティッキーボム」と、素早く連射できる強力な「フルオート」が用意されています。
ステージの攻略を進めていると「武器ポイント」を入手することがあります。武器ポイントは、消費して武器MODそのものをアップグレードできるというものです。基本的には、敵の集団が発生する地帯をクリアするといった方法で獲得できます。
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同様にステージの中で見つかる「センチネルクリスタル」は、プレイヤーの体力・アーマー・弾薬の最大値を上昇させてくれます。強化画面ではその強化項目のひとつを選択することになりますが、連結した2つの項目を解放すると副次的な能力も解放されます。
フレイムベルチの回復が早くなる能力など、どれも魅力的なものばかりです。集中的に基本能力を上げていくのか、更なる能力を優先するのかは悩みどころですね。
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まだまだあります。主人公が全身に装着している「プラエトルスーツ」の強化によって、様々なPERKを獲得できます。崖などをよじ登る速度が上昇したり、マップの探索力が広がったり、爆発性のドラムのダメージを無効化したりと、こちらもかなり強力なものが揃っています。
しかも、プラエトルスーツPERKは獲得しただけ全て発動される能力で、排他的に選択するようなものではありません。どんどん探索して、どんどん強化していきましょう!
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強化は更に続きます。やはりステージ上で発見できる「ルーン」を獲得すると、9種類のうちひとつをアンロックできます。グローリーキルのモーションを早めるもの、瀕死の状態になるとスローモーションになるもの、空中操作の自由度を拡張するものなどが揃っており、やっぱりこちらもなかなか選べません。
ルーンに関しては仮に全てを取得していたとしても、最大で3つまで有効化可能というシステムなので、残念ながら全てを我が物とする訳にはいきませんが、メニュー画面で入れ替えてプレイスタイルやステージに応じて作戦を変更するといった楽しみが生まれることでしょう。
軽快でテンポのよい造りに更なる期待
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ステージギミックに頭を悩ませてみたり、敵の猛攻にやられてしまうことがあったり、時としてつまずく場面はありますが、それらは『DOOM Eternal』におけるメインのゲームプレイとして深く楽しめるように作られた結果でもあります。
それ以外の部分に関してはとても軽快に作られていて、ダルさを感じさせません。主人公の移動は高速ですし、アスレチックな動きでステージを攻略する場面も、いわゆる「死にゲー」のようなシビアな操作を要求されることはありませんでした。数時間の体験会に没頭できたのも、このあたりの詰め方が上手なお陰なのだろうと感じます。
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取材の中でゼニマックス・アジアの担当者からは「ライターの思うように書いて構わない!」と言われましたので、体験会で感じた懸念についても触れたいと思います。
ステージの中にはプラットフォームゲームのような攻略が必要な場所があり、このあたりは好みが分かれてしまうのではないかと感じます。あくまでも戦闘に集中したいプレイヤーにとっては、探索要素を強要されていると感じるかもしれません。
前作2016年版『DOOM』は、ルーンなどの強化要素を取得するために特定の戦闘エリアを攻略する必要があったり、規定の回数のアクションを積み重ねたりといった条件が設定されていました。
しかし『DOOM Eternal』の強化要素は、探し出して取得すれば素直に獲得できるものとなっていました。チャレンジングな要素はスポイルされたのかもしれませんが、目の前のルーンをなんとか取得しようとするが為に、全体の進行が止まってしまう……といった事態を避けたのかもしれません。
3時間ほどの体験会ではチャプター3の半ばあたりまで進行しました。探索は控えめにして、戦闘と進行に集中してプレイしたつもりでしたが、『DOOM Eternal』が前作と同様のチャプター数(13ほど)だと仮定するとかなりのボリュームが期待できそうですね。
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メタルなサウンドを背景に悪魔たちを駆逐するべく大暴れできる『DOOM Eternal』は、2020年3月26日にPlayStation 4/Xbox One版、2020年3月20日にPC(Steam)版が発売予定です。