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最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。
今回は2020年3月7日にNo More RobotsよりPC(Steam)向けにリリースされた『Yes, Your Grace』について生の内容をお届けしたいと思います。
『Yes, Your Grace』とは
Brave At Nightが手掛ける本作は、中世の王国を運営するマネジメントRPGです。プレイヤーは国王となり、農民から領主、自分の家族といった登場人物の訴えに耳を傾け、すべての人を幸せにすることができない状況の中で難しい決断を下していきます。
ゲームシステムはいたってシンプル。本作は基本的に、人物同士の短い会話を読んで選択肢を選んでいくだけです。しかしながら、利用できるリソースは非常に限られており、誰かを助けるためには必ず他の誰かを犠牲にしなければなりません。政治的な判断が求められることもあり、国王として決断を下す責任の重さを実感できるゲームとなっています。
舞台となるのはスラブの民間伝承からインスパイアされた架空の世界で、想像力を刺激するピクセルアートによって描写されます。ストーリー性が強く、会話を通じて展開される物語はあたかも歴史小説を読んでいるかのようです。会話以外のメッセージは最小限に抑えられており、それが物語への没入感をいっそう高めています。
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『Yes, Your Grace』の実内容に迫る!
ゲームは玉座の間から始まります。国王はここで様々な訴えを聞いて決断を下すのです。玉座の前にある絨毯には請願者が並び、そこから任意の順番で謁見する者を選んでいきます。ゲームは玉座の間で完結するわけではありません。国王は部屋の中を自由に歩くことができ、部屋の端から城内の別の場所に移動することもできます。
最初の重要な決断は捕らえた脱走兵の処遇でした。脱走兵の言葉に耳を傾けると、どうやら王国は勝ち目のない戦争をしている様子。兵士は一人でも多く欲しい状況ですが、ここで脱走兵を許せばそれに続く者が出るかもしれません。どちらの選択肢を選んでもメリットとデメリットがあり、さっそくジレンマに陥りました。
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しかし、国王たるもの兵士たちの前で迷いを見せるわけにはいきません。ここは「我が軍に臆病者の居場所はない」を選択。国王自ら脱走兵を処刑しました。将軍は、陛下はなすべきことをしましたと理解を示してくれますが、やはり迷いは残ったままです。
城壁に上ると現在置かれている状況がはっきりしました。城は夜の闇に包まれ、押し寄せる敵軍の灯りであたり一面が埋め尽くされています。絶望的な戦闘の火蓋が切って落とされたところで画面が暗転。タイトルが表示され、物語は一年前に遡りました。どうやら一年間で状況を好転させなければこの王国は滅びる運命にあるようです。
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王国に忍び寄る影
一年前の国王は城内の庭園で娘三人と平和な時を過ごしています。しかし、王家の内部にも問題があるようです。長女はどういうわけか国王を避けており、やがて長女と次女の間で口論が始まってしまいました。
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ここで再び場面は玉座の間に移り、いよいよゲーム本番が開始されます。ゲームは一週間単位で進行し、その週の請願者をすべて謁見すると次の週に進むことができます。物語が進行するのは玉座の間だけではありません。城内では様々なイベントが発生し、決断を求められます。次の週に進む前には収支を確認する画面が表示され、そのタイミングで城のアップグレードやセーブを行うことができます。
ゲームに登場する主要なリソースは金、補給物資、軍隊、幸福度の4種類です。序盤ではこの他に将軍と伝書鳩といったリソースも登場します。各リソースの役割は玉座の横にいる顧問が説明してくれます。また、これまでの出来事や決断は自動的に記録され、好きな時に確認することが可能です。
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最初の週の訴えは長女と次女の喧嘩の仲裁や、城の雨漏りの修繕、農民からの資金援助要請などでした。王国のリソースは限られているので、すべての訴えを聞くことはできません。どんなに嫌な顔をされようとも請願者を門前払いにしなければならないこともあるのです。
実際、訴えを断られた請願者は捨て台詞を吐いて立ち去るなど露骨に嫌な反応を示します。若干心が痛みますが、王国を運営するためには八方美人ではいられません。しかし、訴えを断ってばかりいると幸福度が減ってしまうので注意が必要です。
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農民の訴えの中にひとつ奇妙なものがありました。怪物が村を襲うので退治して欲しいと言うのです。半信半疑で将軍を派遣したところ、次の週に一人の男を連れて帰ってきました。村に怪物の気配がなかったので、代わりに略奪を働いていた賊を討伐したとのこと。連行された男は捕らえた賊でした。
ラドヴィア人の男を尋問すると、我々は君主を持たない自由の民だと答えました。ラドヴィア人は山脈を越えた土地に住んでいる民で、この王国では蛮族扱いされています。ここで決断を求められました。処刑する、投獄する、慈悲を示すの三択です。悩んだ末、地下牢に放り込むことを決断すると、男は「処刑する勇気もない臆病者め」と悪態をつきました。
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守られぬ約束
国王はラドヴィアから来た男のことを王妃に話しました。二人には思い当たる節があったのです。二人は13年前、まだ生まれていない我が子をラドヴィア人の悪党ベイランに与える約束をしていました。長女はちょうど13歳で、まもなく大人になります。この土地では大人になった女性は夫に嫁ぐ習慣があります。ベイランが約束通り長女との結婚を求め、もしそれを断れば、ラドヴィア人が王国に攻め込む口実になりかねません。
王妃は娘を蛮族に嫁がせるくらいなら自害するとまで言い出します。なんとか王妃をなだめると、国王は地下牢に足を向け、投獄した男を問い詰めました。男は村の略奪がベイランの差し金だったことを認めると、ベイランが王を名乗り軍隊を動かしていると明かします。悪い予感は的中しました。
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お忍びで城下を遊び回っていた次女をたしなめると、長女がよそよそしかった理由がわかりました。彼女は13歳になってからずっと政略結婚させられることを心配していたのです。国王は城壁の上でたそがれる長女に声を掛け、見ず知らずの者と結婚させることはないと約束しました。もちろん、この約束自体もプレイヤーが決断した結果です。
そしてついにベイランから手紙が届きます。そこにはラドヴィアの王ベイランの名で、約束は果たしてもらうと記されていました。側にひかえる顧問がいったいどんな約束をしたのかと尋ねます。ここでも決断が求められます。約束など知らないとはぐらかすか、正直に答えるかです。正直に答えると顧問は一瞬うろたえますが、すぐに盟友を探すよう国王に進言しました。今の王国の兵力だけでは、戦争に勝ち目はないのです。
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求めに応じ、大国を治めるタリス王が王国にやって来ました。玉座の間で挨拶を交わしていると、長女が乱入して次女の告げ口を始めます。大事な国賓に失礼のないよう長女をきつく叱りつけました。これも決断の結果です。長女はしぶしぶ引き下がります。
別室に場所を移して外交交渉が始まりました。タリス王は王国の30倍の兵を貸すことを提案します。ただし、それには条件がありました。タリス王の息子に長女を嫁がせることです。またもや難しい決断です。選択肢は即座に了承するか、別の条件を出すかの二択。交渉を引き伸ばしてタリス王の機嫌を損ねては大変だと考え、二つ返事で政略結婚を承諾しました。
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城壁にたたずむ長女のもとを訪れ、結婚のことを切り出すと、彼女から鋭い非難を浴びることになります。
私は戦争から国を守るための犠牲になるの?
娘を差し出す以外の方法は考えなかったの?
わかってたわ。
私が大人になったから一番高値をつけた人に売り飛ばすのよ!
この時が来るのを待ってたんだわ!
村娘に生まれたかった。
一度も会ったことのない人じゃなく愛した人と結婚したかった。
お父様の馬鹿!
泣きながら去っていく長女。一人呆然と城壁に取り残される国王。政略結婚を決めたせいで娘からここまでなじられるゲームもなかなかありません。しかも、娘との約束をあっさり破り、他の方法を考えずに即答したのは他ならぬ自分なのです。最善の選択だと思って決断した結果でしたが、国王の決断には常に犠牲が伴います。犠牲にしたものを目の前に突きつけられるのは、かなりこたえる経験でした。
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国王としての責任の重さを実感できる作品
本作は国王としての厳しい決断が求められる中世王国マネジメントRPGです。短い会話を読んで選択肢を選んでいくだけのシンプルなシステムながら、リソース管理の難しさと国王としての責任の重さ、権力者の孤独を実感することができます。
本作は記事執筆時点で日本語に対応しておらず、プレイにはある程度の英語力が要求されます。会話が中心なので長い文章を読む必要はなく、辞書を引きながらでも十分プレイできますが、重要な選択が迫られる場面では選択肢をよく読み比べることが重要です。
限られたリソースをやりくりするのが好きな方、中世の王国を舞台にした物語が好きな方にお勧めしたい作品です。
タイトル:Yes, Your Grace
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2020年3月7日
記事執筆時の著者プレイ時間:6時間
価格:2,050円