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『Maneater』はそのタイトル通り、人喰いザメとなって人間や海洋生物を食いまくるオープンワールドアクションRPGです。聡明な読者の皆様はご存知でしょうが、我々人類とサメは有史以来最大のライバルとして激しい生存競争を繰り広げてきました。
人類の歴史とは、サメとの戦いの歴史です。我々が科学を発展させたのは、元を辿ればサメと戦うための重火器や、武装した船舶を開発するためでした。そういう目線で見れば、我々が高性能なゲーミングPC/家庭用ゲーム機で日々ビデオゲームを遊べているのも、サメのおかげといって過言ではありません。そして本作の発売によって、「サメVS人類」の戦いは新たなフェーズに突入したということが言えるでしょう。すなわち「相手の目線に立ってみる」というフェーズです。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
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「サメの目線に立つことができるゲーム」は実は真新しいものではなく、非対称対戦FPSやカジュアルゲームなどにいくつかの前例を見られます。なので、本作の新規性はリアルなグラフィックスのオープンワールドRPG的なアプローチをとっているという点に尽きるでしょう。ちなみに、本作の開発・販売元であるTripwire InteractiveはCo-opシューター『Killing Floor』シリーズやWWIIものFPS『Red Orchestra』シリーズなどで知られています。
ストーリーを通じてサメの立場に感情移入することになるので、既存のサメゲーよりも「実際のサメになった状態に近い」ゲームと言えます。実際にサメになったことはないので推測なんですが……。
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本作のストーリーは、サメ漁師「スカリー・ピート」に母親(チュートリアルの操作ザメでもあります)を殺された主人公の子ザメが復讐を目指すという、非常にシンプルかつ力強いものです。とはいえサメなので、「ようし、お母さんの復讐を果たしてやるぞ~!」なんて喋りだすということはなく、彼女(字幕では「彼女」と表現されていたのできっとメスです)が本当のところ何を考えているのかは、わかりません。
本作のバックグラウンドには、「“サメの復讐劇”なんてものは人間側が勝手に思い描いたストーリーに過ぎず、彼女は単に目の前にあるものを本能に従って食べているだけなのかもしれない」というドライな雰囲気が常にあり、ベタベタなストーリーに向けた自己批評にもなっています。
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しかし悲しいかな、そんなコミュニケーション困難な存在にさえ感情移入してしまうのが我々人間というものです。本作では、幼少期のサメがメガシャークとなるまでのプロセスを体験することになるので、最終部では「あの小さかった子がこんなに立派に」という、親戚のおばさん的な感傷に浸ることもできます。
前述の通りサメの内面は描かれませんが、やがては我々プレイヤー自身が、サメとして思考するようになっていきます。「人類のサメ理解」という意味では、エポックメイキングな領域にまで踏み込んだアプローチであると言えるでしょう。サメの内面を理解することができれば、今後の人生でサメと対決するときに役立つこと請け合いです(感情移入しちゃって倒せないかもしれません)。
目のサメるようなユーモア(サメだけに)
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何を考えているのかもわからない無口な存在が主人公であるため、本作は大枠として「架空のサメ漁師ドキュメンタリー番組」というフォーマットの上で物語が進行していくことになります。俳優/コメディアンであるクリス・パーネルによる皮肉っぽくも淡々としたナレーションは本作の大きな魅力の一つで、狂言回しとして、食べてばかりで単調になりがちなサメの人生……もといサメ生に彩りを添えてくれます。
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本作は人間を喰いまくる血みどろの残虐極まりないゲームですが、皮肉っぽいユーモアが満載。どこかのんびりとしていて、牧歌的な雰囲気すら醸し出しています。サメだって、「人間に暴力を振るってやるぞ」と考えているわけでなく、本人(本魚?)の生存のために捕食しているだけです。と、いうわけで残虐行為に対する倫理観や葛藤が全く存在しないために、スクリーンショットやプレイ中の画面から想像するより、遥かにプレイ感が軽快なのも本作の大きな特徴です。
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残念ながら日本語訳には問題が多く、意図されたユーモアが理解できない場面も目立ちます。しかし、作品が持つ独特のテンションのおかげでストレスを感じませんし、むしろユーモアを補強してる点すらあります。翻訳品質の低さが必ずしも欠点とは言えないところも、本作の不思議な部分と言えるでしょう。急に敬語になるスカリー・ピートや、唐突に現れる「オクラ(orca、つまりシャチの誤訳)」や「密閉(アザラシを意味するsealという語の誤訳)」などの敵モブは笑えますし、なによりサメにとってはそんなんどうでもいいことですよね。
サメの触り心地
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さて、ここからはサメの触り心地の話をします。サメの触り心地、といっても「湿ってる」とか「うろこが細かくてザラザラしている」とかそういうことじゃなくて、ゲームプレイの話です。
本作は前述の通り(筆者の言葉で表現するなら)オープンワールドアクションRPGで、一発ネタと受け取られかねないテーマにもかかわらず、なかなかどうして丁寧に作られています。コレクタブルやサイドミッションなどもそこそこのボリュームがありますし、小ネタまみれの「ランドマーク」の存在のおかげで楽しくマップを探索できます。
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サメの操作感の新鮮さ、そして残虐表現の爽快さもあって、プレイ序盤では無類の楽しさを味わえます。他の捕食者やハンターたちとの戦闘も気持ち良いのですが、敵を正面に捉え続けないとロックオンが維持されないため、操作にはそこそこの習熟が必要になります。
捕食や探索で獲得したポイントを使って「進化」することで、サメをどんどん強化するのも楽しみのうちの一つで、最終進化ではぎょっとするような見た目に変化します。一方、キャラクタービルドにはあまり幅がないので、「進化」に期待するとちょっとした肩透かしを食らうかもしれません。
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序盤は文句なく楽しい『Maneater』ですが、ゲームとしては中盤から若干の失速が見られるように感じました。「○○を○○匹食べる」というようなコピペ気味のミッションが増え、作業感が目に見えて増大していくのです。
ゲームプレイはバリエーションに欠け、行けるマップが広がっても体験できることに大した差はありません。中ボスである「頂点捕食者」との戦闘も、「相手の突進技を避けて攻撃する」というパターンに集約されます。しかし、幸いなことに本作のメインストーリーは十時間程度しかないので、おそらく多くのプレイヤーが飽きを感じる前にエンディングが訪れます。
総評
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本作の評価は、「価格やコンセプトのバカっぽさのわりにはよく出来ている佳作」とするのが適当かも知れません。人によっては、戦闘のマンネリ感、興味がわかないストーリーライン、作業的なコンテンツなど、気に入らない部分は多いかと思います。筆者としても、「単にオープンワールドアクションRPGが好きなゲーマー」に本作をおすすめするかどうかと聞かれると、自信を持って「イエス」と答えづらいところです。
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しかし、本作には「サメが主人公である」という重大かつ唯一無二の美点が存在しています。主人公がサメであるおかげで、ゲームプレイには間違いなく新鮮さが備わっていますし、日常生活には存在しない「人類の隣人について考える」ための貴重な時間を設けてくれることでしょう。季節はこれから夏に差し掛かりますが、時節柄海に出向くこともはばかられる昨今。サメの気持ちになってみることで、ストレス解消をしたり、海水浴気分を味わう、なんてのも乙なものだと思いますよ!
総合評価:★★★
良い点
・サメが主人公である
・プレイ感覚が新鮮で、序盤はとても楽しい
・抜けの良い残虐表現とユーモア
悪い点
・バリエーション不足のゲームプレイ
・日本語翻訳品質の低さ(ただし、かえって面白い場合もある)