「デジボで遊ぼ!」ではボードゲーム要素やカードゲーム要素、テーブルトークRPG(TRPG)要素のある魅力のデジタルボードゲームを特集。今回はアニメスタイルのビジュアルノベルと、ローグライク要素のあるデッキビルディングカードゲームを融合させた『Quantum Protocol』のプレイレポートをお届けします。
本作はアメリカのデベロッパーKaio Merisによって、2020年11月5日にSteamで配信されました。開発者のJkong氏にチャットでインタビューしたところ、氏は「遊戯王」のファンでしたが、シングルプレイで「遊戯王」のように楽しめるゲームが無かったことから、本作の開発を始めたそうです。イラスト以外の開発はすべて一人で行い(BGMやUI、カードのピクセルアートも含む)、およそ2年半の時間を掛けて完成させました。日本語化や、翻訳に対する思いについては記事の最後に掲載しています。
本作の内容ですが、「遊戯王」を感じさせるローグライクカードゲーム要素と、ストーリーを楽しむビジュアルノベル要素を合わせ持った作品となっています。カードバトルに関しては、オリジナリティのあるシステムが使われているとのこと。いったいどんなゲームなのか、さっそくプレイしてみましょう。
ハッキングを仕掛けろ!
ゲームをスタートすると、クイーンとビショップという2人の人物が登場します。2人の関係や背景は不明ですが、どうやらこれからハッキングを行うようです。「ハッキング=カードバトル」になっていますね。
ハッキング開始。ここでデッキ選択ですが、まだ始まったばかりなので、選べるデッキは「クイーン」しかありません。本作は、ベースとなるデッキを編集することはできず、バトル中にカードを集めてデッキ強化するという「ローグライクカードゲーム形式」になっています。
カードの見方ですが、カード左上がカードレベル、左下の黄色いラインの部分が攻撃力、右下の赤いラインの部分がHPを表します。HPが0になったカードは破壊され、捨て札(「遊戯王」で言うところの「墓地」)に送られます。
自分のカード「ナイフ.hck」(攻撃3、HP5)をクリックすることで、同列にある敵カードに攻撃可能。ここでは「ファイアウォール.scx」(攻撃0、HP6)に攻撃を仕掛けましょう。攻撃したカードは非アクティブ状態になります。
右下の山札をクリックすることで、次のターンになります。カードが一枚配られ、ボード上のカードはアクティブ状態に戻ります。ボード上のカードで攻撃した後、手札の「ナイフ.hck」カードを出してさらに攻撃を仕掛けましょう。
本作は場にある敵カードを殲滅させることが目的です。ウェーブ形式になっており、殲滅させると次のウェーブの敵カードが出てきます。最後のウェーブまで突破すればクリアです。
敵の「ファイアウォール.scx」を撃破!次のウェーブでは、また「ファイアウォール.scx」が出てきました。前述したように、同じ列の敵カードしか攻撃できないので、「ナイフ.hck」を2枚ともドラッグで左に移動させます。
移動した後に攻撃し、「ファイアウォール.scx」を撃破しました。すると、次のウェーブでは新しい敵カード「セントリー.sc」(攻撃1、HP2)が登場。ちなみに画面上部にある点線がウェーブの進行を示しています。
3体の「セントリー.sc」を撃破すると、最終ウェーブでは「ファイアウォール.scx」と「セントリー.sc」が混合で現れました。「セントリー.sc」の右上にある数字は<b>敵が攻撃するまでのプレイヤーの行動数</b>を表しています(カードを配置・攻撃・移動など、すべて行動数にカウントされます)。
攻撃してくる敵と同じ列に味方カードが無かった場合、ダメージは本体である自分が受けます。自分のHPが0になったら敗北。敵に攻撃される前に破壊してしまいましょう。
敵をすべて破壊したところ、問題が発生しました。クイーンのプログラムがすべて破壊されてしまったとのことです。修復を試みるクイーンですが、ビショップは「すぐに撤退するよう」指示します。何でもオメガという人物がログインしてきたとのこと。
クイーンはハッキングの続行を諦め、ログアウトしました。さらにビショップは、「ハッキングは今回で最後にする。家族が出来たんだ」と言います。リアルの方で忙しくなったので、引退宣言をしたようですね。
カードコンボを決めろ!
ハッキングから3ヶ月が経ちました。ここでゲームの難度選択が出てきます。先程のはチュートリアルのようですね。「簡単・普通・難しい」の3段階あるので、「普通」を選んでおきましょう。
本作のメイン画面。ここでストーリーを進めたり、カードを閲覧したり、「研究」で新しいカードをアンロックしたりできます。ストーリーは途中で分岐したりもします。
最初のストーリーを進めましょう。図書館でリアとエスパーという2人の少女がいました。リアの方はアンドロイドのようですね。これからクイーンシステムにログインするとのことです。
クイーンシステムに接続し、カードバトル開始。今回はエスパーのデッキを使うことになります。まず手元に「アップル.fruit」(攻撃2、HP2)というカードがありますが、このカードを場に出すと、「同名のカードをデッキから手札に1枚取り寄せる」ことができます。「遊戯王」っぽくなってきましたね。「アップル.fruit」は全部で3枚あるので、3枚とも場に並べて一斉攻撃します。
攻撃したことで、3枚の「アップル.fruit」は非アクティブ状態になりました。普通はここでターンエンドなのですが、自分の場の左側にある「>」マークをクリックすることで、その行のカードをすべて捨て札にする代わりに、一斉攻撃します(「エグゼキュート」と言うシステムで、非アクティブになったカードも攻撃可能)。場に空間を作りたい場合にも使えるでしょう。
次のカードドローでは「生長」カードを引きました。これは「捨て札にある「.fruit」カードをすべてデッキに戻し、それと同数のカードをドローする」という効果です。先程3枚捨て札にしたので、それらをデッキに戻してから3枚ドロー。ますます「遊戯王」的になってきました。
手札にある「イニシャライズ」カードは、「すべてのカードをデッキに戻し、1枚ドローする」の効果。これで「アップル.fruit」のカードを引き、先程と同じようにまた残りの2枚も場に並べて一斉攻撃、さらにエグゼキュートで追加の一斉攻撃。6枚の敵のカードを1ターンで葬りました。
そしてまた手札に「生長」カード。これでまた捨て札の「アップル.fruit」3枚をデッキに戻して3枚ドローし……と連続コンボを決めてのステージクリア!マスタリーを1獲得しました。このポイントは、「研究」でカードをアンロックするのに使うことができます。
戦いながらデッキ強化!
次のストーリーで登場するのはアリッサという少女。和風の家に住んでいますね。新モデルのアンドロイドにバグが発生したので、その修復を依頼されました。以前にも修復してあげたのですが、また発生したようです。
アリッサのデッキでデバグ(と言う名のカードバトル)スタート。エスパーの時に使っていたカードは場に出したときに発動するものでしたが、アリッサのカード「残り火」は手動で起動させなければならないタイプのものです(カード下のマークをクリック。効果は「カードを1枚ドローする」)。1度しか発動できないので、発動タイミングには注意。
他の登場キャラ(デッキ)やカード効果、ゲームモードも簡単に説明していきます。アイドルは、カードレベル(カード左上の白い四角の数)を使ったコンボデッキになっています。「ミキ.muse」カードは、「デッキにあるレベル1の「.muse」カードを選び、それを場に配置する」効果があります。
カードによっては、エグゼキュートされることによって効果を発揮するものもあります。これらのカードは「ミキ.muse」の攻撃力を上げるなどのバフ効果を持っていますので、上手く使って強化していきましょう。
バトル中にドロップアイテムでカードを入手することもあります。その場合、「再プログラム」カードを使うとデッキ編集画面となり、入手したカードをデッキに加えることができます。またカードには物理攻撃が効かないものもありますので、その場合は「ファイアボール」などの魔法攻撃カードを使いましょう。
同じ種類のカードが3枚あった場合、合成することでアップグレードされたカードを1枚作ることができます。画像では「ファイアボール」カード3枚で、攻撃力が高い「ファイアボール+」を作りました。このように、バトル中にカードデッキを強化・編集し、ウェーブを戦い抜いていきます。
「研究」ではマスタリーポイントを使って新カードのアンロックができます。難易度「普通」でも結構難しく、マスタリーポイント6までたどり着くのが一つの関門と言えるでしょう(筆者は何度も負けました)。
「コレクション」では、アンロックしたカードやキャラクーの閲覧、ボードスキンの変更ができます。
ゲームが進むとストーリーが分岐します(一部アンロックにマスタリーポイントが必要)。一度クリアしたステージを再度プレイすることも可能。ステージによっては、複数の使用キャラから1人を選んで挑戦することになります。同じステージでもキャラによって難度やプレイ感覚が変わりますので、ぜひとも全キャラクリアを狙ってみてください。
「遊戯王」のようなコンボを主軸にした、手ごたえのあるデッキビルディングカードゲーム
本作は「遊戯王」のようなコンボを主軸としながらも、事前にデッキを編集することはできず、バトル中に得たカードを使ってデッキを強化し、全ウェーブを乗り切っていくローグライク形式になっています(途中で負けたらそのステージの最初から)。難度は高めで、カードの特徴を理解していないとクリアは厳しいでしょう。
本作は現在、日本語サポートはされていません。開発者のJkong氏にお聞きしたところ、以下の回答を頂きました。
一つのアイディアとして、翻訳MOD用のツールを追加して、ユーザーが自由に翻訳を行えるようにすることも考えていました。しかし技術的な問題や、そもそもユーザーにとって必要性があるかということも問題になります。
それと翻訳において、特にカードゲームに関してですが、翻訳者がゲームに精通することが必要になります。カードゲームの記述は、正確でなければなりません。そうでなければ、ゲームをあまりプレイしないユーザーは、大きなフラストレーションを感じることになるでしょう。
私はこれまで日本や中国のカードゲームをプレイしてきました。しかしそれらは翻訳があまり良くなく、カード効果が明確でないため、プレイするのに困難を極めました。
翻訳に対しては、まずは本作のブラッシュアップが先とのことでした。またこれまでのゲーム経験から、翻訳するにしても質の高い物を提供したいという思いがあるようですね。
日本で有志翻訳者の活動があることを話したところ、「興味深い話です。カード効果のような重要な部分だけでも、プレイヤーが簡単に翻訳編集できるようにした方がいいかもしれません」と話していました。今後、機能追加の可能性もあるようです。
現時点でも、短い英文で書かれたカード効果が読めれば、プレイするのに大きな問題はないかと思います。ローグライクカードゲームや「遊戯王」が好きな方は、ぜひ本作をプレイしてみてください。
製品情報
開発・販売:Kaio Meris
対象OS:Windows
通常価格:1,320円
サポート言語:英語
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/1328530/Quantum_Protocol/