最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。私もプレイするまで正体が掴み切れず泣いています。そこで“なるべく早く”をモットーに、ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」。
今回はBeethoven and Dinosaurが開発を、Annapurna Interactiveがパブリッシャーを担い、2021年09月10日にSteamにてPC(Windows)向け、またXbox One/Xbox Series X|S/Xbox Game Pass向けにリリースしたアーティスティックギターアドベンチャー『The Artful Escape』について生の内容をお届けしたいと思います。
『The Artful Escape』とは?
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本作は、周囲の期待に苦しむフォークミュージシャンの若者が、ひょんなことから型破りなギターで銀河ツアーをしながら本当の自分を勝ち得るアドベンチャーゲーム。
本作のジャンルを一つに絞るのが少々難しいのですが……構成要素を抽出して大別するなら、アドベンチャーという括りで間違いないでしょう。
私は最初、往年の傑作『スペースチャンネル5』シリーズのようなリズムゲームを想像していました(おそらくプリンとのギターバトルの影響によるもの)。
しかし実際遊んでみると、リズムゲーの要素はありながらも、SFの文法によってまとめられたアドベンチャーゲーム、という印象に変わります。
サイケデリックで独特なグラフィック、人によって好き嫌いが激しく分かれるタイトルかもしれませんが、私は夢中になってクリアまで駆け抜けました!ともあれさっそく紹介してまいりましょう。
操作方法&設定
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本作はキーボードとコントローラーに対応。ゲーム内ではボタン操作によるギター演奏があり、その際表示されるアイコンの見易さ的に、私はコントローラーの方がプレイしやすかった。
そのため今回はXbox Oneコントローラーを使用しています。映像に対して直感的な操作が行えるため、演奏がベストタイミングで決まった時の気持ち良さは素晴らしいものがあります。
設定については、グラフィックレベルなど細かく調整可能。また言語についてもご安心ください。たまに口調が怪しくなりますが、音声を除き日本語にも対応済みです。
本編開始
シナリオの掴みはバッチリ
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アメリカの中でも特に様々な自然がぎゅっと詰まった土地コロラド。このギターを構えたメガネが本作の主人公Francis。チュートリアルも兼ねていくつかフォークソングを弾きますが、どうにも心ここにあらず、腑抜けた音の響きにため息をついてしまいます。
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しかしニヤりと顔を上げ、
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ギターを持ち直すと……
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痺れるサウンドを空よりも高く轟かせました。全身を使ってかき鳴らすその様は、後の伝説となる黄金の輝きを感じさせます。
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そんな彼に声をかける女性、名前はVioletta。彼女はどこか達観した言い回しでFrancisを形容しつつ、「LIGHTMAN」という場所(?)を教えます。
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物語はこうして始まっていく……。
若者の苦悩がよく表現されている
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LIGHTMANを探して、街を歩きまわる主人公。この探索は重要なパートで、穏やかな閉塞感をいやというほど感じさせます。
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Francisはこの街で明日、人生初のライブを行いますが、街のお祭り騒ぎぶりは彼自身のプレイというよりも、彼の背景に理由があったり。
というのもFrancisは伝説のフォークシンガーを叔父に持つため、地元では誰もが彼に叔父のようなプレイを求められているからです。
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また冒頭のギターシーンのように彼自身、周囲の期待による型に自分を押し込みつつも、本心との板挟みで苦しんでいました。このギャップが非常に丁寧に描写されていると感じますね。
転機
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結局街では何も手掛かりを得られなかったその日の晩、Francisのもとに奇妙な来客が。
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宇宙からやってきたミュージシャン……どうやらLIGHTMANとは彼の事だったようです。そんな彼にミュージシャンとしての才を見込まれるFrancis。
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あれよあれよと言う間にセッションが始まります。ギターを鳴らすごとに街のイルミネーションがハジけるように応えていくその様子に、まだ序盤だとは理解しつつも、私はプレイしていて最高に楽しいな!となっていました。
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ここから若者が、これまでの自分を見つめなおし、新しい自分を形作りながら、多次元宇宙の銀河ツアーへ繰り出すことになります。
全体的な構成
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本作は「起承転結」に則り、28からなるチャプターで構成されています。上記シナリオ冒頭は、そのうちチャプター6くらいまで使用するため、もしかしたらやや冗長に感じるかもしれません。
とはいえ延々とムービーが続くという訳ではなく、会話選択肢、マップ内探索、アクション移動そしてセッションといった、基本的なプレイ要素を世界観に絡めつつ、丁寧に体験させてくれるチュートリアルパートといった色合いが強いです。
全クリしてから改めて最初からプレイしましたが、個人的には、後の展開におけるカタルシスのために必要なパートだと感じました。
各チャプターの流れ
各チャプターも、基本的にそれぞれが「起承転結」に則り、会話パートから移動パート、そしてジャムセッションパートの順に進行していきます。途中でロード画面が挟まれる箇所もありますが、全体的にシームレスに進行していく印象ですね。
ちなみに、もしあのセッションをもう一度プレイしたい……!という時でも大丈夫。メニュー画面からクリア済みチャプターに戻り再プレイが可能です。
会話パート
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サイケデリックでパンチの効いた映像に対して、本作のセリフ回しは意外なことにわかりやすいです。
特に序盤は、コロラド州から突然宇宙に連れて行かれるため、主人公Francisがプレイヤーと同じ目線で、話のスケールに困惑し、徐々に慣れていく過程が描写されているので、導入として非常に親切な設計がなされていると言えましょう。
話の軸も「Francisの成長」を中心に据えているため、SF作品でありがちな専門用語がこれでもかと詰めてくる……といった言葉回しも比較的控えめです。
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移動パート
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一部を除き、会話パートでタメてから、移動パートで爽快感抜群のアクション!というのが基本的な流れ。横スクロール型のマップを移動し、ギターをかき鳴らしつつ、障害物を避けながら目標地点を目指します。
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マップ構造について、一部は足場が移動したり、ギミックによる開錠が必要だったりと、細部は異なりますが、たいていは左上から右下に移動するような形になっています。
斜面で加速をつけて滑り降りて思いっきりジャンプ、身体を大きくのけぞらせながらギターサウンドを放っていく、そんな感じ。
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その際、背景含めて画面内のオブジェクトが色鮮やかに反応、巧みなカメラワークによりスケールを感じさせる演出は、まるでアトラクションのようでした。
ジャムセッションパート
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移動でもだいぶハジけたプレイ体験でしたが、このジャムセッションパートはチャプター内における最大の見せ場、曲で言うならサビにあたる部分。用意されたステージで、それはもう目と耳を殴りつける勢いで大いに盛り上がります。
ここでの操作は、セッション相手が表示するアイコンを、対応したボタンでタイミングよく押していきます。そのリズム判定が少しシビアだったりすることもありますが、『スペースチャンネル5』でアップダウンアップダウンチュウヘイチュウで鍛えられていた筆者は割とついていけましたね。
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成功すると、ステージはどんどん派手に展開してこちらを圧倒します。個人的には、セッション相手が身体を揺らして音にノッてくれる様子が非常にグッときました。
衣装チェンジ
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とあるチャプターでは主人公Francisの衣装をショップで自由に変更することができます。Steamストアでの紹介文とスクショを見ると、いつでもどこでも自由に設定可能なように考えてしまうかもしれませんが、実際のところひとつのチャプターでしか変更できません。
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つまり衣装を変えたい場合は、現行チャプターを中断して、その都度、当該チャプターへ切り替える必要があるのです。シナリオ上仕方のない部分ですが個人的には、衣装変更は気軽にやりづらかった部分です。家で映画を観ているとき、早戻しをしてしまい、それまでの没入感が一気に霧散……的なアレに近いものがありました。
終わりに
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とんでもねぇゲームをプレイしちまった……自分好みの音と映像が情報の洪水となり、脳を殴りつける勢いで圧倒してきた本作。それでいて若者の成長物語、特にラストシーンの爽やかさには筆舌に尽くしがたい満足感を覚えました。
クリア後、心地よい疲労を覚えた身体に、スタッフクレジットは温かく染み込み、その余韻はどこまでも優しく心を撫で、私はただただ涙を流していました。そんな大げさなと思われるかもしれませんが、いつもの冗談ではなく、本当にプレイしながら涙が自然と零れました。
なんとか冷静に、心をフラットにして記事を書こうと努めましたが、ちょっと抑えきれてないかもしれません。いやもう深く突き刺さりましたね……それ程までに良いゲームでした。
対応機種:PC(Windows)/Xbox One/Xbox Series X|S/Xbox Game Pass(Xboxについて、記事執筆時点ではストアページはあるものの購入不可)
記事におけるプレイ機種:PC(Windows)
発売日:2021年09月10日
記事執筆時の著者プレイ時間:4時間
価格:通常価格:2,150円、セール価格:1,935円(21年09月17日まで)