気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Patrick Traynor氏開発、PC/Mac/Linux向けに3月30日にリリースされた倉庫番パズル『Patrick's Parabox』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、倉庫番系パズルに、入れ子構造のような仕組みを導入したパズルゲーム。「箱の中で箱を動かすために、その箱の中でさらに箱を動かす」というルールをうまく利用して、350ものパズルに挑戦します。日本語にも対応済み。
『Patrick's Parabox』は、2,050円で配信中。
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――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Patrick Traynor氏(以下Patrick)こんにちは。アメリカ・カリフォルニア州に住むプログラマー兼デザイナーのPatrick Traynorです。高校生の時以来、趣味として10年以上ゲーム開発を行なっています。今私はパズルゲームをプレイするのにも作るのにもとても興味を持っているのですが、実はこれまで『I Wanna Be The Guy』のファンゲームコミュニティで2Dアクションゲームばかり作ってきました。私が一番好きなゲームは『The Witness』です。そのエレガントさとそのコンセプトを完全に表現しているのが大好きですね。
――本作の開発はなぜ始まったのですか?
Patrick本作は2014年、趣味で作った小さなプロトタイプが発端です。そして2018年、学生主導のゲーム開発クラブで友達に見せるため、このプロトタイプを復活させました。その時、これがより大規模なゲームにすることができるポテンシャルを持っていることに気がついたのです。その年の開発作業は、このようなユニークなブロックシステムのプログラミングをするという楽しさによって、モチベーションを保つことができました。今でも、プログラムしていて一番楽しいものですね!
開発中、本作のゲームシステムを使ってどんなことができるか追求していくにつれ(想像以上に多かったです!)、徐々に規模が大きくなっていきました。本作は私の初めての商業作品になります。また、Priscilla Snowが本プロジェクトで音楽とサウンドデザインを担当するために参加しました!本作はもちろん、ユニークなパズルシステムをプレイする楽しさ、作る楽しさを発端に開発が始まりましたが、本作を遊び、このワクワクが皆さんに伝わると嬉しいですね。
――本作の特徴を教えてください。
Patrick本作一番の特徴は、「倉庫番パズル」というプレイヤーがマス目のあるマップ上で箱を押すゲームジャンルに、ひねりを加えているという点です。本作では、それぞれの箱の中に小さなマップがあり、プレイヤーはその中に入ったり出たりできるのです。このアイデアを拡張し、本作ではその箱の中のマップの中にも同じ箱が再帰的に存在するのです!言葉で説明するのは難しいですが、画像や動画を見ていただければすぐに理解できると思います。
本作のコンセプトは、パズルを解く際に今までになかったように頭を使わなければならず、この複雑な再帰的な箱をどのように動かすのか、しっかりと理解しなくてはいけないということなのです。また、ゲームが先に進むにつれ、より複雑なシステムも出てきますよ!
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――本作はどんな人にプレイしてもらいたいですか?
Patrickパズルゲームが好きなものの、パズルゲームのエキスパートではない人たちに遊んでもらいたいと思い、私は本作と本作に出てくるパズルをデザインしました。メインとなるパズルはフレンドリーで徐々に慣れていくことができ、プレイヤーを困らせるのではなく、面白いと思ってもらえることを第一にしています。しかし、本作にはメイン以外のチャレンジパズルも多く用意されています。これらはかなり難しく、より複雑なものとなっています。そのため、カジュアルパズルプレイヤーもエキスパートパズルプレイヤーのどちらも本作のターゲットとなっているのです。これまでも、どちらのタイプのプレイヤーの方にも楽しんでいただいており、嬉しく思っています!
とはいえ、本作がすごくカジュアルなパズルゲームではないのは明らかです。しっかりと考える必要がありますし、再帰的な箱のコンセプトは、かなり新しい考え方を要求します。しかし、パズルは可能な限り簡単にしてありますし、それでいてしっかりと本作のコンセプトを理解できるように作っています。個人的にも、このような新しく、それでいてそれほど難しくないパズルゲームというのは大好きです!
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Patrickたくさんのパズルゲームから影響を受けました!まず始めに、junerの『Sokosoko』からは直接的に一番大きな影響を受けています。箱の中にマップがあるというアイデアはjunerとは別に思いついたものですが、箱の中にその箱自体があるという再帰的なアイデアは『Sokosoko』からのもので、これが本作にも取り入れられています。『Sokosoko』自体もPortponkyによる『Recursed』に影響を受けており、これもそれぞれの宝箱の中に別の空間があるという素晴らしいパズルゲームです。
『Stephen's Sausage Roll』はソーセージを転がす奥深くエレガントなパズルゲームで、本作を純粋なパズルゲームにする上で大変参考になりました。当初は制限時間やステルス要素なんかも追加したほうがいいかと思ってもいたのです。あと、『Stephen's Sausage Roll』からは、本作のタイトルに自分の名前であるPatrickを入れるというアイデアももらいましたね!
『The Witness』は大きな意味で私に多大な影響を与えてくれました。しかし特に、パズルが小さなものから始まり、徐々にコンセプトを形作っていく点は、本作を作る上で大変参考にさせていただきました。
他にも、『The Talos Principle』『Portal』『Snakebird』『Baba Is You』などといった、たくさんのパズルゲームをプレイしてきました。遊びながらこれらの作品をよく観察することで、パズルゲームの知識やデザインセンスを磨くことができたと思っています。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Patrickはい、もちろんです!
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Patrick偶然にも、日本のVtuberである冬ノ宮雪華が本作の開発中の動画をツイートし、このツイートがバズり、たくさんの人に本作のことを知ってもらうことができました!これは面白いサプライズでしたね(笑)。本作もついにリリースされ、世界中の人たちの感想を聞くのが楽しいです。日本語を含め、多くの言語に対応するため、企業と一緒に作業を行ったのも良かったですね。
――ありがとうございました。
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本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に500を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。