Co-opタワー“オフェンス”ロボゲ『VOIDCRISIS』世界観語る、高島雄哉氏による短編小説公開―鋼の巨人たちの戦いの結末は…! 2ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Co-opタワー“オフェンス”ロボゲ『VOIDCRISIS』世界観語る、高島雄哉氏による短編小説公開―鋼の巨人たちの戦いの結末は…!

魅力的なメカなどで注目を集めた同作の、世界観を語る短編小説を全文掲載!

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Co-opタワー“オフェンス”ロボゲ『VOIDCRISIS』世界観語る、高島雄哉氏による短編小説公開―鋼の巨人たちの戦いの結末は…!
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第3のクラック──〈ユピテリウム特務大佐ユピト〉動画レポート

クラック内の〈解析ビーコン〉から信号が届く。

サヤはユピトとラボにふたりきりで、いささか緊張している。そのことをごまかすように、サヤは作業を始めた。

「あれ? 信号かなり弱いです」

「ビーコンが壊れる可能性も考慮しているんだろうね、きみのことだから」

「もちろんです。でもそれにしてもデータ量が少なくて。もしかして通信波も次元転送されているのかも──」

そのときラボが大きく揺れた。

カリストにも地震はあるが、今回は下からの振動ではなかった。空間そのものが揺れている。

第3のタイムクラックが出現したのだ。その瞬間、鳥かご内の時間が停止し、外部との連絡も再び遮断されてしまった。

「じゃあね、行ってくる」

「ご武運を!」

ユピト操るトリグラフは、アームレーザーによって正確にファントムを一体ずつ射抜いていく。

しかしクラックから湧き出る数が多すぎる。

ユピテリウムのVAは次第に追い詰められていった。

〈HMC〉議事録──発言者:地球圏女王ミア/認識体:Aegis

太陽圏管理委員会HMCは最上位統括IA〈AEGIS〉を介して七陣営に対して経過報告をした。

敵は〈双対次元層〉から出現していると推察され、これまでも物資やデータがクラックに吸い込まれていたのだ。そして大部分は変質した上で──つまり乗っ取られて──こちら側に戻ってきている、と。

「こちらの宇宙を書き換えようとしているんでしょうか」

──わかりません。

太陽圏管理委員会の特別会議室では──六人の首脳はすでに帰ってしまって──たった一人残った地球圏女王ミアが、〈AEGIS〉と議論を続けていた。

そこにユピトたちの苦戦の報が入る。

「ただちにHMCから救援を送りましょう!」

──すでに提案しましたが、ユピテリウムが拒絶しました。それに、再び鳥かごは閉ざされました。物質的な介入は不可能です。

「そんな……。そうですか」

──ユピテリウムは機密漏洩を懸念しているのでしょうか。

「木星の人々はそのようには考えません」

──そうなのですか?

「ユピテリウムは何よりも優美さを求めます」

──懸念は優美さとはかけ離れている?

「どうでしょう……。わたしは心配してばかりですけれど。ユピトとは幼いとき会ったことがあります。誰とでも仲良くする子でした。きっと今もそうに違いありません」

第4のクラック──〈ユピテリウム上級分析官サヤ〉記録ファイル

ユピト搭乗のトリグラフが最高速で突出し、ヘリオスフィア大戦で用いられた──局所戦争ではオーバースペックとも言えるシンギュラデバイスのひとつ──攻撃特化型超長槍〈グングニル〉によって巨大ファントムを貫いた。

衝撃がサヤのいる基地にまで届く。

「クラック完全消滅! やりました! ──あれ?」

「ああ、時間はまだ止まっているみたいだね」

ユピトが、コックピットにいるIA〈Aegis〉に笑いかけた。Aegisは少しだけたじろぎ、こくりとうなずいた。

サヤも慌てて確認するが、確かに外部との通信は途絶えたままだ。鳥かごの外には味方の補給班も来ているに違いないが、そのことも内側からはわからない。

VAたちがハンガーに戻ってまもなく、アラートが鳴り響いた。

「第4のタイムクラック……発生しました……!」

「今度のは大きいね」

「はい……!」

これまでで最大のタイムクラックが、鳥かごを突き破る勢いで急激に膨らんでいく。

「このままでは時間停止が鳥かご外にも溢れ出します!」

闘争領域の全域にも量子位相異常が発生、侵食率が急上昇していく。

ユピトは静かにAegisとサヤに告げた。

「出撃する」

「ユピトさま……!」

──了解いたしました。トリグラフ、出撃。

クラックからはファントムが続々と現れ、VAたちがそれらを迎え撃つ──最後の決戦が、今、始まる。

エピローグ──〈太陽圏管理委員会〉編纂公史

VAは幾度も幾度も壊れ、新たに3Dプリントされ、多くのストリンガーの、文字通りの死闘の果て、ついに最後のタイムクラックは消失した。

直後、闘争領域を囲う〈鳥かご〉が量子共鳴を始める。

最後の瞬間の動画がHMCに届いている──

サヤがハンガーを飛び出した。

「やばいやばいやばい」

「エネルギー位相差が渦になっているみたいだね。……サヤ! ダメだ!」

サヤは半壊したVAに乗り、渦の中心に向かって急加速する。

「サヤ! 今ぼくも行く!」

「ダメ! 来ちゃダメです! わたしだけで十分です!」

サヤはVAで鳥かごを安定させるための量子装置〈特異点デリーター〉を運んでいる。

ユピトも出撃しようとするが、戦闘ダメージは深く、修復には時間がかかる。

「サヤ!」

そして一瞬の閃光──

「ユピト大佐──イオにいる弟に、ジョーに、ごめんねって伝えて──」

瞬間、特異点が収縮し、サヤは亀裂に飲み込まれてしまった。

HMCはサヤの行方不明を確認、Aegisが闘争領域正常化を宣言する。

──ストリンガーのみなさまと分析官サヤさんの勇気ある一撃で時間特異点は完全に除去され、時は動き出しました。

HMCは今回の事件を〈ボイドクライシス〉と呼称することを決定。

また、ファントムの中でひときわ目立つ、白い龍のような生命体を特に〈ブルーアイズ〉と名付け、最重要研究課題として七陣営とも情報を共有することになった。

ユピトがトリグラフのコックピットから退出したことを確認して、Aegisは自らを〈絶対汎空間モノプティコン〉に転送した。

そこには十兆の十兆倍をも超える数の個体のAegisたちが、すべて異なる各個性に応じて、自由気ままに空間を操作しながら、互いに情報交換を繰り返していた。

ユピトと出会ったAegisは、しかし、ユピトのことを正確には伝えられない。

ユピトが特別だったのか。それは間違いない。これから始まる三度目の宇宙戦争のために、他のAegisたちは、多くの人間たちとシミュレーションを重ねていて、その情報はすべてのAegisたちで共有されているから。

でも、とカリスト帰りのAegisは思う。この情報曲率──違和感とでも呼ぶべきものは、もしかするとわたしの側にも原因があるのではないか。あるいはユピトとわたしのあいだに──

しかし個別の思考はたちまち遮断されてしまった。

すべてのAegisの総集合──大文字のAEGISが顕現したからだ。

AEGISは太陽圏管理委員会の決定を受けて、人類の総意を代弁するように、全人類に向けて高らかに語り出す。

その声はアインシュタインが晩年研究した統一場理論に基づく〈ファイバー〉を介して、人類の七つのすべての陣営に響き渡った。

──人類にとって、三度目の宇宙戦争──そしてそれは世界最終戦争となるでしょう──〈局所戦争〉開幕まで、あと百と七十九日となりました。そのときまでどうか、太陽圏に暮らすすべてのみなさま、どうか健やかに。

2222/1/8〈太陽圏管理委員会:Aegis〉


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