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ウロボロスの力を手にしたノア達に立ち塞がる謎の組織「メビウス」。コロニーの執政官達が集まって戦争をコントロールする、世界を影で操るいかにも悪そうな奴らです。彼らがシンボルにしているのは「メビウスの輪」で、尾を噛んだ蛇のウロボロスと同様に、終わりのない循環を表す象徴として有名です。リサイクルマークもメビウスの輪がモチーフですね。
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メビウスの輪とは、表裏のある平面の帯を半ひねりして輪にしたもの。ドイツの数学者アウグスト・フェルディナント・メビウスが発見し命名したもので、「メビウス」という単語自体に特に深い意味はないことには注意です。細長い紙を使えばすぐに作れてしまいますが、数学的にはとても奥深い性質を秘めています。せっかくの夏休み期間なので、自由研究のつもりで工作をやってみましょう。
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用意するものは紙とテープ、はさみ、鉛筆(滲まないペン)。表裏がはっきりしているものが良いので、裏面が白紙の広告や、適当に何か印刷したコピー用紙が手頃です。
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まずは紙をやや太めの帯状に切っていきましょう。少々曲げづらくても余裕を持たせた方が後で楽です。
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半ひねりして輪っかにし、テープで端を留めます。これで完成です。これで何が起こったかというと、紙の表と裏がくっつき、連続する1つの面のみで輪ができていることになります。つまり、表裏が存在しないのです。用語では「向き付け不可能な曲面」と言います。
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試しに、鉛筆で輪の中央に真っ直ぐ線を引いていきましょう。たぐりながら続けていくと始点に戻ってきますが、いつの間にか紙の両面を辿っていました。ぐるりと「2周」したのか、それとも「1周」なのか、これがメビウスの輪の不思議さです。
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次に、帯の真ん中部分を切って分けてみましょう。普通なら2つに分かれるところですが、1つに繋がったまま円周が2倍の大きな輪になりました。しかも、2回ひねりで表裏のある、つまりメビウスの輪でなくなったのです。
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次は一回ひねりの輪。これも表裏があるのでメビウスの輪ではありませんが、同様に真ん中から切ってみましょう。
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一回ひねりの輪が2つに分かれましたが、繋がった状態になりました。源氏パイ…?
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他にも切り方やひねり方はいろいろあり、どれをとっても予想を裏切る意外な形に変化します。表裏両面を使えることから工業面に応用され、ベルトコンベアや電気抵抗器をメビウスの輪にしたり、直近ではナノカーボンでメビウスの輪を作ることに成功しました。
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同じく永遠の象徴であるウロボロスは近代に発見されたメビウスの輪と異なり、エジプト、ギリシャ、南北アメリカと古くから様々な文明で用いられてきました。北欧神話のヨルムンガルドが特に有名ですね。1匹、または2匹の蛇が尾を噛んで円を作るもので、古代ギリシャ語で「尾を飲み込む者」という意味です。終わりと始まりが1つとなり、欠けるところの無い完全性を表すこともあります。『ゼノ』シリーズの世界の要素である「グノーシス主義」や「永劫回帰」とも関連し、錬金術では完全物質である「賢者の石」と、歴史があるだけに多くの意味を内包しています。
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『ゼノブレイド3』に関係することでは、「相反する対のものの循環、統一」でしょう。生と死、創造と破壊、光と影、相容れない者同士は表裏一体であり、統一することで完全へと昇華する。敵対していた2つのコロニーの者同士が重なってウロボロスが発動する、性質の異なる物質を混ぜ合わせる錬金術的なイメージもあるかもしれません。
さらに、それまでの過程は「グノーシス主義」の考え方を表しているようにも見えます。グノーシス主義とは、私たちの世界を作った旧約聖書の神は偽物で、別にいる「真の神」と合一することで肉体から魂を解放するという考えを持つ宗派です。この世の苦しみから解脱するという仏教の考え方にも似ていますね。
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ノア達はエーテル技術によって生み出された兵士で、僅か10年の寿命しか持ちません。創造主である女王に従い、敵の「命」を奪い続けるだけの一生を過ごします。この閉じられた世界を「偽神の作り出した世界」と解釈するならば、ゲルニカやウロボロスに触れることで知恵を授かり、偽りの世界から解放されることになります。ウロボロスが発動した瞬間、彼らの魂が肉体から抜ける描写もありました。
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キリスト教で堕落の象徴である蛇は、グノーシス主義では逆に偽神に背いて知恵を授けた良い存在です。そして「アルファでありオメガである」、死の先に復活したキリストその人でもあります。ノア達がウロボロスになる=真の神との合一になるというわけです。
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哲学や宗教の概念を取り込んできた『ゼノ』シリーズ。『サーガ』でも重要だったグノーシス主義が今回も大胆に描かれていました。神と人を巡る壮大な物語はどこへ向かうのでしょうか?『ブレイド』の総決算となる結末を見届けましょう。