ミニトークイベント
翌日20日に行われたミニトークイベントでは、制作のnakajimaさんと作曲の椎葉さんお二人による、配信中の『From_.』の裏話から、新たに発売が決定したニンテンドースイッチ版と、今回初展示となるそのプレイアブル版についての新情報が盛りだくさんでした。
nakajimaさんと椎葉さんが登場し、来場者の皆さんへの感謝からイベントが始まると、お互いへ質問し合う形式でトークイベントが始まります。
今回の初個展のために、新たにたくさんのアクリル画を描いてきたnakajimaさん。なんと、アクリル絵の具を使用したアートを作成するのも初めてだそう。以前個人的に訪れた個展で、アクリル絵の具で表現力豊かに描かれたアートを見て感銘を受け、今回の挑戦に至ったそうです。また、準備は大変でしたが楽しさのほうが勝った、と個展開催までを振り返りました。普段はデジタルデバイスでアート制作をしているnakajimaさんは「キャンバスを2本指でタップしてもUndoできない」と、簡単に描き直しが効かず、また色の配合で色彩が変わっていく絵の具の様子を「刻んだものは戻らない」と表現し、そんなところも「アナログの良さ」と語りました。
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展示中の作品の中には椎葉さんの手書きの楽譜も。その中でも「前奏曲 -Prelude-」の楽譜は途中までデジタルで、その後は全て手書きで書かれています。この経緯について聞かれると、椎葉さんは普段の作曲の際、譜面に音符を書いて作曲をし、ピアノの曲を書くときはグランドピアノを使用して書くことがあるのだそう。実際にグランドピアノの音色を感じながら作曲することが、作品にも影響するのだそうです。この「前奏曲 -Prelude-」は、途中まで自宅のMacで冒頭部を作曲し、途中からグランドピアノがあるスタジオに出掛けるためにそれをプリントアウトし、残りをスタジオで手書きで書き上げたとのことでした。
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そして話題は同じく今回初展示となる、ニンテンドースイッチ版『From_.』がリリースに先駆けて体験できるプレイアブル版へ。体験できるのは、スマートフォン版と同じ内容ではなく新たなシナリオで、水の国にも銭湯や集合住宅などの新たなスポットが登場し、マップも広がっています。
椎葉さんから「こちらは製品版と同じ内容なんでしょうか?」と聞かれると、「いえ、実は今回の個展のために特別に用意されたシナリオをプレイしていただけます」とnakajimaさん。なんと、展示用に新しく10分ほどで遊び終えられるシナリオを用意してきたとのこと。これは貴重ですね。
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新たに用意されたシナリオは、本編には登場しなかった「想送祭(そうそうさい)」という、大切な人への思いを天灯(てんとう)に込めて飛ばすという水の国のお祭りが舞台。毎年恒例のこのお祭りで、プレイヤーは主人公の郵便屋さんとなり、水の国で暮らす人への天灯配りをお手伝いします。人々と触れ合うことで歴史や登場人物の心の機微に触れられる『From_.』らしいシナリオになっています。
そしてさらに、スマートフォン版では水の国だけでストーリーが完結し、大地の国、風の国は登場人物同士で語られるのみでしたが、ニンテンドースイッチ版では大地の国、風の国までストーリーが広がり、実際に訪れることができるとの発表が。また、水の国のマップも、今回のプレイアブル版と同じく拡張され、ストーリーも増えるということでした。
青と黒のみで描かれていた『From_.』のグラフィックですが、大地の国、風の国が広がるにあたり、色数も増えるとのこと。とはいえ、青の代わりに大地の国はオレンジ、風の国は緑と、単色2色のみの表現はそのままで青の代わりにそれぞれの国を表す色に置き換わるのだそう。
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さらに時間の概念も追加されるとのことで、nakajimaさんいわく「ずっと実装したかったことを後悔がないように全て入れ込みたい」。大幅なアップデートとなるスイッチ版『From_.』のストーリーはエンディングまで完成していて、あとは実装するのみの段階とのことでした。内容としては、大地の国は都会で人口も多く栄えているが、光もあれば闇もあり、郵便屋さんの心情を垣間見るようなストーリーになるそう。
なお、今まで同作は、nakajimaさんと椎葉さんのお二人での制作でしたが、今回からプログラマーがもう1人チームに加入しました。音楽面にも変化があるとのことで、水の国を含め、時間の概念に対応した曲も増加。昼のシーンはピアノ独奏曲、夜のシーンは新たにアコースティックギターを使用した楽曲が使用される予定とのことです。「どんな曲になるかご期待ください」と椎葉さん。これは楽しみにせざるをえませんね。そして、ここでなんと新曲「風の国の曲(仮)」を、作曲者の椎葉さんご本人による生演奏でご紹介するうれしいサプライズが!本来はトークの前日に行われたミニコンサートで撮影された動画が紹介される予定だったところ、せっかくなのでと急遽演奏を決めたとのこと。大盤振る舞いに参加者は大喜び。大きな拍手が巻き起こりました。
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演奏後、めったに人前でピアノを弾かないと少し照れた様子の椎葉さん。来場者の中にはミニコンサートでの演奏を行った、椎葉さんの高校からのクラスメイトのピアニスト・四條さんもいらっしゃったのですが、それを聞いてとても頷いていたので、来場者のかたはとても貴重な瞬間を目撃したことになりますね。また、この場を借りて四條さんに「また今作のための新たなピアノ曲を弾いていただきたい」という公開オファーもあり、四條さんは快諾。スイッチ版がさらに楽しみになりますね。
その他にも、トークでは『From_.』を制作するきっかけとして、nakajimaさんのお父さんがファミコン版『カラテカ』のプログラミングを担当したゲーム制作者で、ご自身の周りにプログラミングを勉強して制作をする環境があったこと、そして、ゲーム実況動画を見てストーリーに感動した経験から「自分も作ったもので感動を与えたい」と思い『From_.』の開発に至ったバックストーリーや、椎葉さんに楽曲制作を依頼するきっかけになった東京ゲームショウ出展時の思い出などが語られました。青と黒のみの世界にするきっかけになったのも、お父さんから「昔のゲームは色の制限があって大変だった」という話を聞き「昔の人はすごい。自分もどこまで表現できるか挑戦しよう」と決めたことも明かしてくれました。ちなみに、水の国でも活かされていた、ヴェネツィアのような水に囲まれた世界が好きになったきっかけは『劇場版ポケットモンスター 水の都の護神 ラティアスとラティオス』で観た街の雰囲気へのときめきが忘れられなかったから、というエピソードも明かされました。
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また、制作者自選のお気に入りとして、椎葉さんは「円舞曲 -Waltz -」の退廃的な感じがエピソード3に合っていて、曲が活きる使い方ができてよかったと語りました。ゲーム音楽は、曲そのものも大事ですが、音楽をかけて止めるタイミングも大事だと語る椎葉さん。曲をかけるタイミングや、シーンに合わせてどの曲を使用するかは椎葉さんが決定されているそうです。ちなみに、普段の場面で流れる曲を切り替えることで作品の雰囲気を変える効果に関しては『オホーツクに消ゆ』(ファミコン版)から影響を受けたとのこと。
nakajimaさんは、エピソード1で小春が「私を、彼の元に届けて」と郵便屋さんにお願いをするシーンをセレクト。制作時にも「感情がこもり、グッとくるものがあった」と語るnakajimaさん。ちなみにこのシーンでは日常の音楽が消え、「エピローグ -Epilogue-」が流れるタイミングも神がかっていて涙を誘います。そんな小春の想いを歌詞に書き、「エピローグ -Epilogue-」の曲に載せてAIきりたんに歌わせた動画が椎葉さんのYouTubeチャンネルに掲載されているので、こちらも必聴です。
来場者からの質問コーナーでは、イベントシーンの一枚絵スチル演出は他のゲームで一枚絵を入れる演出を見て感動したのがきっかけだったことや、使用楽器にそれぞれピアノとギターを選んだ理由として、2色で表現しているグラフィックのように一つの楽器で楽曲が完結するようなものを選んだことと、ギターの音色が好きだったから、という理由が明かされました。
また、お客さんからの「楽曲がかかるタイミングが好き」というラブコールに対して、「椎葉さんあっての『From_.』です」と語るnakajimaさんに、「nakajimaさんの絵がなかったら僕音符一個も書いてないですからね」と、オードリーの漫才のようなコンビ愛を見せるお二人。そこに心強いプログラマーさんも加わり、さらにパワーアップした『From_.』制作チーム。編集部ではそんな制作チームに特別インタビューの機会もいただきましたので、新要素を数々盛り込んだニンテンドースイッチ版『From_.』とともにそちらもお楽しみに!
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開催概要
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イベント名:From_. 展 - From To -
日程:2022年11月18日(金)~11月21日(月)
時間:14:00~20:00
場所:ギャラリア赤い鳥(目白駅から徒歩4分)
住所:東京都豊島区目白3-18-7
専用Webページ:https://www.nakajimanoma.com/from-exhibition-fromto
主催者:nakajima / 椎葉大翼
ハッシュタグ:#From展
特別協賛:株式会社room6 / ヨカゼ
「From_. 展 - From To -」について
「From_. 展 - From To -」は、2017年にリリースされたアドベンチャーゲーム『From_.』をテーマとした展示です。『From_.』開発者・nakajimaにとっては初の個展であり、作中における「水の国」を主題とした作品が並びます。『From_.』にまつわるアートのほか、作曲のスケッチのために書かれた手書き楽譜なども公開。開発中のNintendo Switch版『From_.』の特別試遊版も展示されます。会期中、11月19日(土)はピアニスト四條智恵(しじょう・ちえ)氏と作曲家・椎葉大翼(しいば・だいすけ)によるミニコンサートを開催するほか、11月20日(日)にはnakajimaと椎葉大翼によるトークイベントも実施いたします(有料・要予約)。それぞれのミニイベント内では、とっておきの新情報を発表する予定です。
『From_.』について
『From_.』は、手紙を届けて「想い」を繋げるアドベンチャーゲームです。舞台は、水に囲まれた世界「水の国」。その国で働く郵便屋さんは、今日も人々に手紙を届けます。ある日を境に、自分についてくる「とんでもないもの」。そして、人々の間で流れる不穏なうわさ。手紙を届けることで繋がるそれぞれの「想い」によって、彼はある事実を知っていくのです。2017年にリリースされた本作は、今年11月11日に5周年を迎えました。
nakajimaプロフィール
関西を中心に活動するゲームクリエイター。2017年11月11日にスマートフォンアプリとして『From_.』をリリース。現在はNintendo Switch向けに、水の国からさらに舞台を広げた完全版『From_.』を鋭意開発中。
Webサイト:https://www.nakajimanoma.com/
Twitter:https://twitter.com/dev_nakajima
椎葉大翼プロフィール
任天堂株式会社を経て現在は東京でフリーランスの作曲家として活動中。作風はピアノ独奏や室内楽のためのアコースティックなものからシンセサイザーを用いたアンビエント風なものまで幅広く、音楽を担当した『にゃんばーカードWARS』『World for Two』『From_.』『ネコの絵描きさん』の4作品がGoogle Indie Games Festival にて上位入賞。近作に、2022年のBitSummit X-Roadsにてポピュラーセレクション賞を受賞した『OU』や、アレンジャーのひとりとして管弦楽編曲を手がけた『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』(共にスクウェア・エニックス)がある。好きなものは辞書、ボードゲーム。
Twitter : https://twitter.com/shiibadaisuke
ヨカゼについて
「ヨカゼ」は、情緒のある体験を持つゲームをリリースするために立ち上げられました。グラフィック、音楽、テキストの端々やゲーム性という様々な要素が折り合わさり、思わず世界に浸ってしまうような作品をラインナップしています。「ヨカゼ」はパブリッシャーの枠を超えた新しいインディーゲーム共同体として活動をしています。インディーゲームパブリッシャーroom6を運営母体としていますが、個人開発者や他社のパブリッシングのゲームであっても参画出来るレーベルとして運営していきます。『アンリアルライフ』作者であるhako 生活が「ヨカゼ」のブランドマネージャーとして、レーベルのブランディングやマネジメントを行っています。
room6について
株式会社room6は、京都の出町柳で活動するインディーゲーム開発会社・パブリッシャーです。スマートフォン向けやNintendo Switch等コンソール機向けのゲーム開発/移植/パブリッシュ事業を中心としており、受託開発やデザイン業務も行っております。主なリリース作に『ARTIFACT ADVENTURE外伝DX』『アンリアルライフ』『World for Two』『7年後で待ってる』『幻影AP-空っぽの心臓-』、リリース予定作品として『ghostpia』『From_.』『狐ト蛙ノ旅 アダシノ島のコトロ鬼』『Recolit』『果てのマキナ』『Horizon』などがあります。
関連Webサイト
From_. 展 - From To -:https://www.nakajimanoma.com/from-exhibition-fromto
ヨカゼ:https://www.yokazegames.com/
room6:https://www.room6.net/